100均で買える介護に役立つグッズ|福祉用具専門相談員が教えるモノ選びのコツと活用法
福祉用具専門相談員・山上智史さんは「一般品として発売されている物の中にも介護に役立つものがたくさんある」と話す。休日には100円均一の店やホームセンターへ行き、便利なグッズを探し、ときには客にアドバイスしているという。
福祉用具に精通したモノ選びとモノ活用のコツ、山上さんが100円均一の店で見つけた介護に役立つグッズを聞いた。
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便利な物を賢く使うと介護は変わる
福祉用具は、介護が必要になった人の生活の質を上げ、介護する人の負担軽減に役立つ、便利なものがたくさん開発されています。
お料理が大好きで、料理上手なことが誇りだった方が、調理器具を使えなくなって料理をすることがなくなり、元気がないとうかがったときに、障害のある方用の調理器具をご提案して「こんな商品があったなんて!」と驚き、喜ばれたことがありました。
食事介助をされていた方の食器をユニバーサルデザイン(※註)のすくいやすいタイプに変えたら、ご自分で食べることができるようになったり、時間感覚が鈍っていた方が、時計をデジタル表示の物から鳩時計に変えたら、比較的改善が見られたりした例もありました。
福祉用具だけでなく、一般品にも、できなくなったことを補う機能を発揮する物があります。それを「知っている」か「知らない」か、で生活や介護が変わるのです。ぜひ、身近な福祉用具専門相談員が持っている物情報を上手に利用していただきたいと思います。
一方、どんな便利な物にもメリットの反面、デメリットもあります。
例えば、車いすは利用する人の活動範囲を広げますが、下肢の筋力低下を招く可能性があります。福祉用具を選ぶときは、デメリットも聞いて選択することが大切です。
ローテク、ロープライスも効果あり!
ホームセンターや100円均一ショップには安価で役立つ物がたくさんあります。
福祉用具を利用する人の体の状態は刻々変化するので、必要なときに“過不足なく”必要な物を使うのがいい。お金をかけないで間に合えばそれに越したことはありません。
100円均一ショップの物は惜しみなく試せるという利点もあるので、時間が許せば“ケアに役立つ物”という視点で物探しをしていますが見飽きません。
ご高齢の方の生活環境改善に役立つグッズをいくつかご紹介しましょう。
100円均一ショップの商品は、入れ替わりも激しく、同じ物がいつも手に入るわけではないですが、改良品や類似品が出ていることもあるので、お店の人に聞いてみるとよいでしょう。
これらに関しては福祉用具専門相談員に相談するのではなく、ご自身で手配してください。
安全対策グッズ
・クッションテープ
家具にぶつかってケガをしないよう、家具につけるクッション剤が各種ある。幼児の安全対策用と書いてあることが多いが、高齢者のケガ予防にも使える。
・ビニールカラーテープ
わずかな段差など意識を促したい部分に貼る。背景と同調しない色を選ぼう(慣れると注意が向かなくなるので、定期的に色を変えて)。
・滑り止めマット
カーペットやラグ、キッチンマット、お風呂マットの下、ソファーのクッションの下などに。
・ケーブルホルダー
家電のケーブルなどをまとめる、壁に沿わせるなどしてつまずき防止を。
・蛍光テープ、蛍光プレート、蛍光つまみ
凸起している場所や段差に貼り、夜間の事故防止を。電灯のひものつまみにつけるタイプもある。
・自転車用反射シール、ライト
杖やバッグ、車いすにつけて交通事故を防ごう。
・「トイレ」「立入禁止」プレート
認知機能が低下している人にも分かりやすい。
生活をラクにするグッズ
・レバー式ドアノブ、蛇口レバー
取り付けるだけで握力の弱い人も扱いやすくなる。
・大きなスイッチ(簡単に取り換えられるタイプ)
電気のスイッチが押しやすくなる。
・ペットボトル利用のおしり洗浄装置
ペットボトルに取り付けるノズル。外出先でのケアなどに便利。
・引き出しの滑りをよくするテープ
力が弱い人でも引き出しやすくする、引き出しの内側に貼るテープ。
・S字フック
さまざまな用途あり。腕が上がりづらい方が、洗濯物を干す位置を低くするときに使用した例も。
※註:米国ノースカロライナ州立大学ロン・メイス博士らが「さまざまな人たちが、いつでも、どこでも、わけへだてなく安心して使える製品を生み出すこと、これが未来をめざす製品作りの基本になる」と提唱したデザインの考え方。使う人の年齢、性別、能力、経験などの違いに関係なく、同じように使いこなすことができる製品で、見た目にも美しい、親しみあるデザインに仕上げること。
山上智史さん:株式会社K-WORKER福祉用具貸与事業所(東京、新宿区)部長。区の福祉用具専門相談員の職能団体の代表も務めるほか、地域で連携している医療・介護の専門職など有志と共に福祉用具開発にもチャレンジしている。ホームセンター勤務時に福祉用具を取り扱ったことがきっかけで、福祉用具専門相談員となるときには「利用する人がいる現場を知りたい」と介護ヘルパーとして1年半働いた。「物好きで、販売の仕事も好き。物が人を笑顔にし、はつらつとさせる可能性は福祉用具を扱うことで知ることができた」と話す。2016年5月には一般社団法人地域医療フォーラム主催「MEDプレゼン2016 在宅医療」に登壇し、不良環境でのケアの問題と環境づくりの必要性を訴えた。
取材・文/下平貴子