秋川リサ 7年に及んだ母親介護振り返り「後悔してない」
女優・秋川リサさん(64才)は7年間、母の介護と真摯に向き合ってきた。母の認知症が発覚し、問題行動や徘徊に悩まされたこともあったが、今年6月、その介護生活は終わりを迎えた。母と向き合った日々を秋川さんが振り返る。
「もうちょっと早く逝ってくれてもよかった、それぐらいの気持ちです。介護ってきれいごとじゃないですから」
秋川さんは、サバサバとした表情で母親の介護を終えた気持ちを語り始めた。7年間の介護をへて、母の千代子さん(享年89)が亡くなったのは今年6月20日のことだった。病院には秋川さんのほか、長女と長男、長男の妻が駆けつけた。秋川さんがその時の様子を振り返る。
「病室に入った時、母はハッハッハッと短い呼吸を繰り返していました。私はついに来る時がきたかと覚悟を決めて“おばあちゃん! 最期ぐらいありがとうって言いなさいよ”と声をかけました。
娘は先に到着していて、そのうち息子やそのお嫁さんも駆けつけて。母は次第に苦しそうな息使いになり、やがて心臓が止まりました。“いずれ私たちも行くから、あちらでお会いしましょう。行ってらっしゃい”って送り出しました」(秋川さん・以下「」内同)
病室には、家族の最期を看取る湿っぽさはなかった。むしろ、看護師が驚くほど、和やかな雰囲気に包まれていたという。
千代子さんに認知症の症状が出始めたのは2009年。近所の飲食店から「食事をしたのにお金を払ってくれない」と苦情の電話があったのが発覚のきっかけだった。秋川さんが千代子さんの行きつけの店を回ると、ほかでも無銭飲食を繰り返していたことがわかった。
千代子さんは要介護1と認定され、自宅での介護が始まった。それは想像以上に過酷な日々だった。
「食事の支度をしようとキッチンに行くと異様な熱気と煙が充満していました。ガスコンロを見ると、ヤカンが火を噴きそうな勢いでガタガタと揺れているんです。母はヤカンを火にかけたことを忘れて、散歩に出かけてしまったんです」
その日以来、用心のためにガスの元栓を締め、お湯はポットに用意した。しかし、千代子さんはどうしても火でお湯が沸かしたかったのか、ガスコンロの上で新聞紙の束に火をつけたこともあった。その痕跡を見つけて、秋川さんは血の気が引いたという。毎日、目が離せなかった。