認知症患者の過剰服薬対策に! 話題の「偽薬」正しい使い方
認知症の人の家族の多くの悩みに、直近の出来事を忘れてしまうために起きるトラブルがある。「今朝、ご飯を食べたかい?」と何度も聞かれて困ってしまうというのは代表的な例だ。食事よりも深刻なのは薬の服用を忘れてしまうこと。すでに服用した薬をもう一度飲んでしまうことは避けなければならないし、飲んだ飲まないを、その都度説得するのは介護者の負担にもなる。
この過剰服薬対策に、薬そっくりの「偽薬(ぎやく)」を利用する手があるという。
潜在的ニーズを感じて「偽薬」を一般の人にも
「偽薬」を販売しているのは、その名も「プラセボ製薬」という会社。
プラセボとは、有効成分が入っていない偽薬のこと。製薬会社などの治験では、本物の薬を飲んだグループと偽薬を飲ませるグループ「プラセボ群」の比較試験を行ったりする。また、偽薬を飲んだ暗示で体調が良くなったと感じることを「プラセボ効果」という。
『プラセプラス』というこの偽薬の発売元、プラセボ製薬社長の水口直樹さんに開発のいきさつをを聞いてみた。
「web上の投稿やSNSなどで、認知症の人が薬を飲みすぎて困っているといった悩みをいつくも見ました。これは切実な悩みだと感じ、介護用の偽薬の販売を決めました。
社名がプラセボ製薬なので、薬を作っている会社と思われますが、実は、医薬品は扱っておりません。当社の製品は、全て食品です。しかし、ニセモノだからできることもあるんです。」
以前より、企業や医大の薬剤のヒト試験では、カプセルに乳糖を入れた専用の偽薬が使われているが、市販はされていない。
『プラセプラス』は、還元麦芽糖をタブレット型に固めたもので、Amazonなどから、誰でも買って使うことができるようになり、評判は一気に広がった。
パッケージは薬っぽく見えるように、茶色のビンやPTPシートが採用されている。黙って渡されたら、普通の人でも薬と思ってしまうだろう。商品には「栄養補助商品」という但し書きが記されている。
服薬トラブルは介護施設の現場でも悩みの種だったという。千葉県で介護老人保健施設や認知症グループホームを運営する「社会福祉法人ユーカリ優都会」の介護士、鈴木直人さんはこう話す。