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【介護ポストセブン10周年特別企画】ヤングケアラーの認知度は10年で変化|流行語大賞にノミネート、法律にも明記されたが果たして現在は?

 家族やきょうだいのケアを担う子供や若者を「ヤングケアラー」と呼び、過去10年で認知・拡大が進んでいる。幼い頃から高次脳機能障害の母のケアを続けてきたたろべえさんこと、高橋唯さん。介護ポストセブン10周年に際し、ご自身の10年を振り返り「ヤングケアラーを取り巻く10年」について寄稿いただいた。自分がヤングケアラーだと気づいたのはいつのことだったのか――。

執筆/たろべえ(高橋唯)さん

「たろべえ」の名で、ケアラーとしての体験をもとにブログやSNSなどで情報を発信。本名は高橋唯(高ははしごだか)。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。ヤングケアラーに関する講演や活動も積極的に行うほか、『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。 https://ameblo.jp/tarobee1515/

筆者自身と「ヤングケアラー」を取り巻く10年

 介護ポストセブンさんが介護にまつわる話題を届けて10周年を迎えた。この10年、介護やケアを身近に考えるきっかけを届け続けてくださったこと、ケアに関わるひとりとして本当にありがたいと思う。

 10年前の筆者といえば、自分の日常が介護やケアと関わるものだとはまったく思っておらず、こうして介護ポストセブンさんでエッセイを書かせていただくご縁に恵まれるとは、想像もしていなかった。この節目に、筆者自身とヤングケアラーを取り巻くこの10年を振り返ってみたい。

2016年「まだヤングケアラーの認知度は低かった」

 10年前、2016年の筆者は大学生だった。進学をきっかけに実家から離れてはいたが、1、2か月に一度は母の様子を見に帰っていた。当時の筆者は「似たような経験をした人に出会ってみたい」と思ってはいたものの、なかなかうまく出会えずにいた。

 障害のある子どもの親の立場の人はいても、子どもの立場の人はなかなか見つからない。高次脳機能障害者の家族会に行ってみても、参加しているのは高次脳機能障害のある子どもの親、もしくは配偶者の立場の方がほとんどだった。

 この頃、筆者はある言葉が気になっていた。“CODA(コーダ)”。Children Of Deaf Adultの頭文字を取った言葉で「きこえない(きこえにくい)親をもつ、きこえる子ども」のことだ。

 2021年公開の映画『コーダ あいのうた』は第94回アカデミー賞作品賞を受賞している。この言葉を知ったのは2015年だったが、「自分と似たような、障害のある親の子どもの立場に名前がついているのか!」と衝撃を受け、それ以降、CODAについて本を読んだり、当事者にインタビューさせていただいたりと関心を寄せ続けていた。

 CODAについて調べる中で、この頃からヤングケアラーという言葉も少しずつ目に入るようにはなっていたと思うが、当時は自分のしていることがケアだという認識はまったくなく、自分に関係のある言葉だと思っていなかったので全然気に留めていなかった。

2018年「ヤングケアラーの仲間に出会う」

 2018年に転機が訪れた。たまたまSNSを見ていたところ、東京・世田谷区でヤングケアラーシンポジウムが開催されるという情報が流れてきた。CODAについて研究されている先生が登壇すると知り、聴講に行ってみることにした。

 ここではじめて、ヤングケアラーの行う“ケア”とは、食事介助や入浴介助などの身体的なものだけではなく、見守りや気遣い、通訳、家事、家計を支えることなど多岐にわたるのだと理解することができた。

 それから筆者はヤングケアラー経験者が集まる場にも参加するようになった。そこでは、たくさんの「似たような経験をしてきた子どもの立場の人たち」とつながることができた。これまでどれだけ探しても見つからなかったのに、「ヤングケアラー」という言葉を手がかりにしたら、同志のような存在に次々と出会えた。それは筆者にとって非常に画期的なできごとだった。

2020年「ヤングケアラーを取り巻く社会の動きが加速」

 2020年から2024年は、国内のヤングケアラーを取り巻く動きは一気に加速した。

 2020年、厚生労働省と文部科学省が連携し、全国の中学生・高校生を対象とした初の実態調査が行われ、中学生の約17人に1人、高校生の約24人に1人が家族の世話をしていることが明らかになった。

 翌2021年には、厚生労働省及び文部科学省が連携し「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」が発足。国内においてヤングケアラー支援の動きが広まっていく。

 また、同年、ヤングケアラーが新語・流行語大賞にノミネートされた。

 国は2022年度から2024年度までの3年間を、「ヤングケアラー認知度向上の集中取組期間」と位置づけ、中高生の5割がヤングケアラーを認知することを目指した取組が進められ、地方自治体でも支援条例を制定する動きが続いた。

2024年「法律にヤングケアラーが明記された」

 2024年、筆者にとって驚くことが起きた。「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」において、子ども・若者育成支援推進法が改正され、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」として、国・地方公共団体等が各種支援に努めるべき対象としてヤングケアラーが明記された。

 支援の対象年齢は、こども期(18才未満)に加え、おおむね30才未満を中心とし、状況に応じ40才未満の者も対象となり得ることが明記された。

「仲間と出会うためのツール」だと思っていた言葉が、「支援に努めるべき対象」として法律に明記されたことに対して、正直なところ、びっくりする気持ちもあった。

 しかしながら、正しい理解が進めば、自分の状況をわかってもらいやすくなったり、適切なサポートにつながりやすくなったりするのはありがたいことだと感じた。

学年・課程別のヤングケアラーの割合

通信制高校生…11.0% (約9人に1人)
定時制高校2年生相当…8.5% (約12人に1人)
小学6年生…6.5% (約15人に1人)
大学3年生…6.2% (約16人に1人)
中学2年生…5.7% (約18人に1人)
全日制高校2年生…4.1% (約24人に1人)
※厚生労働省「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」(令和3年3月、令和4年3月)」より。

2026年「講演会」の数が減りつつある懸念も

 筆者の母が施設に入所したのが昨年のこと。生活の中で母のケアは一段落したといえるが、この先も「ヤングケアラー」の啓蒙活動を続けていくつもりだ。

 先日も、とある中学校に出前授業に行った際、ヤングケアラーについて知っている生徒さんは多くいたが、実際に地域の中で誰に相談したらよいのかについては、まだまだ知ってもらう余地があると感じた。

 そして2026年現在、講演活動をする中で耳にするのが、ヤングケアラー関連の講演や研修の数は全国的に数年前より少なくなっているということ。新語・流行語大賞にノミネートされた際に「流行にしてはいけない」という意見もあった通り、関心が薄れていくのは望ましいことではない。

 でも、もし「ヤングケアラー」が講演会で学ばなくてはいけない特別なテーマから、日常の中で自然に受け入れられる段階へと変わり始めているのだとしたら、それは歓迎すべき変化なのかもしれない。

次の10年への思い

 10年後は、2036年。団塊ジュニア世代が65才以上となり、高齢者数がピークに達する2040年問題を控え、日常生活の中で誰かのケアをすることはますますあたりまえになっていくだろう。

 もちろん、ケアとは高齢者の介護に限った話ではないが、それでもケアが誰にとってもより自分事になるはずだ。正直なところ、今はまだ「介護は自分には関係ない」という前提で語られる言葉に出会うことはかなり多い。だけど10年前の筆者自身もまた、自分の日常を「ケア」と結びつけて考えてはいなかった。

 今後は、まだケアを身近に感じていない人たちとも一緒にケアについて考えられるきっかけをつくっていきたいと思う。

ヤングケアラーに関する基本情報

言葉の意味や相談窓口はこちら!

■ヤングケアラーとは

 ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている子どものこと。近年は子どもから大人になってもケアが続くこともあるため、18才~おおむね30才までをヤングケアラーと呼んでいる。

■ヤングケアラーの定義

『ヤングケアラープロジェクト』(日本ケアラー連盟)では、以下のような人をヤングケアラーとしている。

・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
・障がいや病気のきょうだいの世話や見守りをしている
・目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている
・日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
・アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している
・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
・障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
・障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている

■相談窓口

・こども家庭庁「ヤングケアラー相談窓口検索」
https://kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/consultation/

・児童相談所の無料電話:0120-189-783
https://www.mhlw.go.jp/young-carer/

・文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」:0120-0-78310
https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm

・法務省「子供の人権110番」:0120-007-110
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html

・東京都ヤングアラー相談支援等補助事業 LINEで相談ができる「けあバナ」
運営:一般社団法人ケアラーワークス
https://lin.ee/C5zlydz

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