「問題行動に疲弊、心が折れそう…」【排泄ケアにまつわる精神的不安】気持ちを和らげ、切り替える介護のコツとヒントを専門家がQ&Aでアドバイス
介護の負のイメージとして「排泄ケア」が真っ先に思い浮かぶ人が多いかもしれない。「『排泄』は人が生活する上で自然に生じることなので、工夫次第で介護する人、介護を受ける人の双方が心地よく、快適にすることもできます」と、皮膚・排泄ケア特定認定看護師・浦田克美さんは語る。排泄ケアにまつわる声のかけ方やメンタル面について、具体的にアドバイスいただいた。
教えてくれた人
皮膚・排泄ケア特定認定看護師・浦田克美さん
皮膚・排泄ケア特定認定看護師として介護する人・される人に寄り添った活動を続けている。YouTube「チャンネルはぴなぴ」などSNSで情報を発信するほか、講演・セミナーに登壇し、健康や排泄についてやおむつの正しい使い方など介護に役立つ情報を伝える活動を続けている。NHK『クローズアップ現代』への出演ほか、各メディアで活躍中。https://www.youtube.com/channel/UCgonTHiL8Tfnq0M46wcGv5A
介護で直面する「排泄ケア」の不安にお答えします!
「事前に知識を蓄えておくことで、いざというときにパニックにならずに済むと思います」と、皮膚・排泄ケア特定認定看護師・浦田克美さん。
読者から寄せられた介護・排泄ケアにまつわる悩みには、「声のかけかた」「メンタル面」の不安が数多く寄せられた。その対処法についてピックアップしてご紹介する。
Q1.紙パンツを嫌がるときの対処法を教えてください
A.なぜ嫌なのか?理由を探してみましょう
まず「なぜ嫌なのか」を聞いてみましょう。下着に近いデザインのもの・薄いもの・本人が気に入った色や柄のものを選んでもらうなど、本人が「自分で選んだ」という感覚を大切にして欲しいと思います。
最近の紙パンツは薄型もあるので、アウターに響きにくいタイプも多いので、「意外とみんな紙パンツ使っているみたいだよ」と、声かけをしてみてください。紙パンツをはいていても周囲にわからないなら、自分も履いてみようと思うかたが多いようです。
Q2.排泄ケアも大変ですし、介護で心が折れそう…
A.物事の捉え方を変えてみませんか?
心が折れそうになる時、私が大切にしているのは「コップの水の見方を変えること」です。コップに水が半分あるとき、「半分しかない」ではなく「半分もある」と考えみる。物事をひとつの軸だけで見ずに、複数の軸で捉えることが大事です。「何もできなかった」ではなく「これだけやった」と自分を認めてあげてくださいね。
また、自分なりのストレス発散法(好きな音楽・散歩・誰かに話すなど)を意識的に持っておくことも心を守るります。
Q3.ケアにおける声かけの工夫を知りたいです
A.命令型ではなく「提案型」に
【1】「トイレに行ってきて!」(命令型)ではなく、「トイレに行こうか?」(提案型)に
【2】目を合わせて・正面から・ゆっくり話す
【3】「どうしたい?」と本人に選ばせる
【4】否定語(「ダメ」「違う」「また?」)を極力使わない
【5】なるべく笑顔で接すること
言葉の内容よりも「声のトーン・表情・態度」が相手に与える影響の方が大きいです。
Q4.排泄の問題行動で疲弊しています
認知症で要介護3の母は、便をトイレットペーパーでくるんで別の場所に置く、トイレに行ってもしないで戻ってくる。便器内に手を入れてしまうなど、排泄の問題行動が増えています。介護拒否も強く、トイレの誘導やパッドの交換に大変時間がかかります。
大容量のパッドや紙おむつを使っても毎晩尿漏れがひどく、洗濯も大変です…。疲れ切ってしまい、ロングステイを利用しました。
A.ケアから離れることも大切
それは大変でしたね。ロングステイをお願いされたご判断は正しいと思います。緊急ショートステイなども利用して、介護から離れる時間も確保していただきたいと思います。
「ケアから離れること=逃げること」ではありません。自分を守ることが、お母さんを守ることにもつながります。
Q5.ケアするときに言ってはいけないNGな言葉はありますか
A.NGフレーズとして、以下の4つは避けましょう
【1】「また?」(責める言葉)
【2】「早く!」(急かす言葉)
【3】「なんでできないの?」(否定する言葉)
【4】「前はできたのに」(比較する言葉)
言葉の内容よりも「声のトーン」や「表情」が相手の感情に届きやすいとされています。排泄ケアは慌てたり、感情的になったりしがちですが、なるべく心穏やかに明るい表情を心がけたいですね。「ありがとう」「上手にできたね」「あなたがいてくれて嬉しい」など肯定する言葉がけが有効です。
Q6.娘が父親など異性を介護するときに注意することはありますか?
A.異性の排泄ケアで気をつけることは3つ
【1】「失礼します」「終わりました」など丁寧な声かけで心理的配慮をする
【2】必要最小限の露出にとどめ、素早く行う
【3】タオルやブランケットでプライバシーを守る
こうしたポイントはありますが、患者さんのケアでは性別よりも対人間としてケアの質が問われるものです。男性であれ女性であれ、相手に心地よいと感じてもらえるケアを提供するという心がけが大切かと思います。
Q7.父親はオムツを替える時、かなり機嫌が悪いです
A.羞恥心の裏返しかも?
機嫌が悪いのは、ご本人が「恥ずかしい」「情けない」という気持ちが大きいのかもしれません。
上記【1】~【3】に加えて、「協力してくれてありがとう」「お父さんのおかげで助かっている」といった感謝を伝える声がけができると、ご本人の尊厳を守ることにつながります。
排泄ケアは、訪問介護など、家族以外の人にお願いした方がお互いに心の安定が保てる場合もあります。人の手を借りることも視野に入れてみてください。
Q8.難聴、認知機能の低下した親との会話に困っています
A.いつも大声で話かけるので怒っていると思われています
話しかけるポイントがいくつかあります。
「大声で話すと怒っているように聞こえてしまう」のはツラいですね。対策としては、
【1】正面から目を合わせてゆっくり話す
【2】補聴器の調整を専門家に依頼する
【3】筆談や文字ボードを活用する
【4】口の動きをはっきりさせる
もしかすると、ご自身の「イラだち」が声に出てしまっていることもあるかもしれません。深呼吸して、穏やかな表情を意識することも大切です。
Q9.笑顔で介護をするコツはありますか?
A「自分が機嫌よくいられる環境」を整えることが大前提です
「完璧を求めない」「人の手を借りる」「自分のストレス発散法を持つ」。この3つが大切です。
また、「介護してあげている」ではなく「一緒に生きている」という視点の転換も大切です。気持ちにゆとりを持てると表情や言葉のトーンが変わります。あなたが笑顔でいることが、相手にとっても最高のケアになります。
Q10.排泄ケアでくじけそうなときどうすればいいですか?
A.挫けそうになるのは一生懸命やっている証拠です
介護も排泄ケアも「自分を責めないこと」が最優先です。「もっとうまくできたはず」「なんで私だけ」と自分を責めず、「今度はそう来たか!」「新たな課題が見つかった」など考え方を変えて、マイナスの感情に飲み込まれないようにしたいものです。
また、「信頼できる人に話す」「同じ思いをしている介護者の集まりに参加してみる」「思い切って誰かに頼む」など、挫ける前の対策を見つけて欲しいと思います。
Q11.排泄ケア、夜中のトイレ誘導、排泄物の掃除…ギリギリでやっています
A.限界を迎える前に対策を
心身ともに限界を超えた時は、「休んでもいい」「逃げてもいい」と自分に許可を出してください。ショートステイや入院を活用して一時的に離れること、地域包括支援センターや介護の専門家に相談することを強くおすすめします。
「私がいないとダメ」という考え方は、親子とはいえ「共依存」の関係になってしまいます。専門職に委ねることは「手抜き」ではなく「賢い選択」です。あなた自身が元気でいることが、最大の介護です。
Q12.介護疲れを防ぐ方法や心持ちを教えてください
A.先に休む日を決めておきましょう
疲れが蓄積してある日ドーンと気持ち落ちてしまう、そんな事態を防ぐ方法として、早めの対策をおすすめします。
【1】「今日できたこと」を毎日少しでもいいので声に出す、または記録する(自分を肯定する)
【2】「相手からの感謝」を期待しすぎない(認知症の方は忘れることもある)
【3】「時間ができたら休む」ではなくで「休む時間を先にスケジュールに入れ込む」
疲れる前にこうした対策を実践してみてくださいね。
Q13.無理をせずに介護を続けるコツはありますか?
メインで介護を担っている人への声のかけかたも知りたいです。
A.家族や親族、複数の人でサポートしましょう
【1】「できないこと・限界」を関係者で共有しましょう
【2】役割分担を明確にする
【3】主に介護を担う人への感謝を言葉にして伝える(「ありがとう」の一言が大きい)
【4】定期的にチームで状況を確認し合う機会を作る
介護のキーパーソンが崩れたら介護全体が崩れ兼ねません。介護はチーム戦であることをみなさんの共通認識にしていただきたいですね。
Q14.要介護者(親)との心理的な距離の取り方や割り切り方はありますか?
A.「家族だから当然」という考え方を手放して
家族だとどうしても心の距離が近く、感情的になってしまいますよね。まず「家族だから当然」という期待を手放すことが大切です。
「親の介護」ではなく「ひとりの高齢者のサポート」と捉えることで、少し距離が取りやすくなると思います。「好き・嫌いの感情」と「ケアをする行動は別物」と割り切ることも、継続的な介護を支える考え方です。
Q15.要介護者に「寄り添う」とは?どう考えればよいのでしょうか。
A.側にいるだけでも意味がある
長年看護の仕事をしていて感じるのは、「何をしてあげるか」より「どんな風に側にいるか」が大切だということです。
【1】本人の気持ち・ペースを尊重する
【2】「どうしたい?」と本人の意向を聞く習慣をつける
【3】沈黙を怖がらない(一緒にいるだけでも力になる)
【4】否定せず受け入れる
【5】「今日も一日、ありがとう」という感謝の言葉を伝える
相手を尊重しながら側にいることが大切であり、「寄り添い」の基本となります。
Q16.老々介護中、いずれ介護が終わると思うと寂しいです
A.「よくやっている」自分を褒めましょう
これまで一生懸命に寄り添ってきたこと、それ自体が素晴らしいことです。自分を褒めることを習慣にしてみてくださいね。
介護を続けるのは本当に大変なことなので、「完璧な介護」を目指さないで欲しいと思います。「ひとりでやらない」という原則を持つことも大切です。
定期的に息抜きできる時間を確保し、感謝されなかったとしても「自分を認める」習慣をつけること。メモや日記などで「できたこと」「良かったこと」を記録しておくのがおすすめです。また、介護の仲間や専門家とつながっておくことも大切です。上手にできることよりも「続けられること」が「良い介護」といえると思います。
Q17.自宅で介護できるかどうかの判断基準はありますか?
A.夜間のケアなどどこまで対応できるか考えてみましょう
在宅介護を続けるかどうかの目安はいくつかあります。
【1】介護者(家族)が心身ともに健康で続けられるか
【2】被介護者の安全が在宅で確保できるか(転倒・事故リスクの管理)
【3】夜間の対応が可能か(認知症・夜間排泄など)
【4】経済的に持続可能か
【5】本人が自宅での生活を望んでいるか
これらを総合的に判断します。在宅から施設へ切り替えるきっかけは「排泄ケア」というケースもあります。無理して続けることが一番よくないこと。ご本人もお子さんに無理をさせたいとは思っていないはずです。
本人とケアをするご家族双方のQOLが何よりも大事。介護のゴールは誰にもわからないので、長距離走を無理なく走り続けられるか?という視点で考えてみるといいでしょう。
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多くの読者さんのお悩みを拝見し、メンタル面の不安を抱えているかたがかなり多いと感じました。介護の中でも「排泄ケア」は「これさえやっておけばいい」という正解があるわけではありません。失敗してもどうかご自分を責めずに、同じ思いを抱えている人はたくさんいらっしゃいます。この記事で少しでも心が軽くなるヒントをひとつでも見つけていただければと願っています。
撮影/横田紋子 構成/介護ポストセブン編集部
