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東京都・福祉局が目指す介護職の施策《外国人材》をどう活かすのか「インドネシア視察で感じた危惧」【想いよ届け!~挑戦者たちの声~Vol.7・後編】

 東京都の後期高齢者(75才以上)の人口は181万5000人で過去最高を記録(令和7年9月15日時点)。全国の中でも少子高齢化が加速する東京において、介護業界の働き手の不足は喫緊の課題だ。外国人の登用も進む今、東京都が挑む人材確保の取り組みとは。【全2回の後編】

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挑戦者たち/プロフィール

東京都・福祉局 高齢者施策推進部・介護保険課長 向山倫子(むこうやま・ともこ)さん

2003年、東京都庁に入庁。高齢者や介護に関する施策のほか、インフラ、観光、文化、生活困窮者の支援など幅広い施策を担当。二児の母。趣味は器集めと料理。

東京都が直面している介護人材不足

「インドネシアの就職フェアで出会った学生さんが、日本で働いてみたいと熱心にお話されるのが印象的でした。みなさん熱量がとても高くて…」

 東京都の福祉局で介護人材確保に関する施策を担当する向山倫子さんは、インドネシアを視察したときのことを振り返る。

 日本国内の働き手不足から、一定の専門性や特定の技能を有する外国人就労のための在留資格「特定技能制度」※がスタートしたのが2019年のこと。介護分野でも外国人材を受け入れる動きが広がっている。

 介護分野の特定技能在留外国人は約5万4960人で過去最多を記録(令和7年6月末時点)。国別では、最も多いのがベトナム、継いでインドネシア、ミャンマー、フィリピンと続く。

※外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組
https://www.moj.go.jp/isa/content/001335263.pdf

 介護に従事する外国人材を日本に呼び、育てる取り組みはすでに全国の自治体で始まっているが、東京都もここ数年で本格的に動き出している。主な施策を向山さんに解説いただいた。

「外国人材の確保を目指した支援事業として、2024年度からスタートしたのが『かいごパスポートTokyo』(通称、KaiTo)です。

 日本の介護に関心を持つ外国人に向け、東京の介護現場で仕事をする魅力をウェブサイトで発信。外国人の求職情報も掲載し、都内の介護事業所とのマッチング促進も行っています」

「昨夏には、インドネシアで開催された日本留学・就職フェアに東京都としてブースを出展しました。東京で働くメリットをアピールして、特定技能を取得した介護人材をインドネシアから受け入れる体制の整備に力を入れ始めています。

 実際、インドネシアの就職フェアや現地の人材育成・送り出し機関なども視察したのですが、現地のかたたちの日本の介護職に対する熱意はとても高く、大きな期待を抱きました」

 一方で、外国人材を受け入れる施設側の課題もあるという。

「現在、都内の介護事業所では、施設系サービス事業所の約半数が外国人材を受け入れています。残りの半数や在宅サービス事業所について、最初の一歩をどう踏み出してもらうかが課題です。まず1人採用すれば、次に2人、4人とスムーズに拡大していくと思うのですが…。

 やはり言語の壁はあるかもしれません。介護現場で使う言葉は専門的なものもありますし、敬語を話さなければならないため、そうした高い技能をもつ外国人は、世界的にも、日本各地でも確保したい。人材の奪い合いともいえますね」

 介護人材が圧倒的に不足する東京の将来、外国人材は貴重な戦力になり得る。ゆえに、「事業者側も利用する側も、多様な国の人材に対する壁をなくしていかなければならない」と強調する。

「インドネシアの就職フェアでは、日本で働くことについて明るい希望を語る人が多くいましたが、『今、日本に行って大丈夫ですか?』と、不安の声も聞かれました。現地の人たちはSNSで日本の情報をよく知っているんです。

 現地を視察し、一人ひとりの顔や家族の姿も見えてきました。諸外国の都市のほうが給料は高いけど、日本の文化が好きだから、東京で働いてみたいという声も多く聞かれました。選ばれる都市であり続けなければ、と強く思いましたね」

 2026年度からは留学生を事業所に受け入れてもらうための体験メニューも開始予定とのこと。

「留学生が介護事業所を実際に見て、東京で働くイメージを持ってもらうことが一番の目的ですが、事業所側にもメリットは大きいと考えています。

 留学生とはいえ、外国人が自分たちの事業所にいる状況を経験すれば、その後の採用にもつながるのではないか。外国人採用の最初の一歩を踏み出すきっかけになるのではないかと考えています」

「社会をより良くしたい」想いの原点

 介護・福祉に関わる仕事に携わってきた向山さんを突き動かす想い、その原点は中学時代に遡る。

「中学2年のとき、自治体が企画する“子ども親善大使”に選ばれ、タイに派遣されたんです。各地を巡る中で、ある村で貧しいバラック暮らしの子供たちと出会い、その光景を目の当たりにして強い衝撃を受けました。

 自分はいつでも電気やガスを使い、衣食住に何ひとつ困らず生きてきた。それなのに、この子たちはどうして…。当時の私はその現実がうまく処理できず、長らく自分が恵まれた環境に生まれ育ったことに負い目を感じていました。自分のこの人生は何かのために生かさなければ、そんな思いを抱き続けてきました」

 タイでの経験から生まれた問題意識が現在の仕事の道につながっている。向山さんの挑戦には常に「社会をより良くしたい」という使命感がある。

介護保険制度の運用に想うこと

 介護人材確保やステータス向上に向けた取り組みに加えて、向山さんが日々尽力しているのが、介護保険制度の維持、運用にまつわる仕事だ。

 都内62の保険者(公的保険制度の運営主体)が介護保険制度を適切に運営・実施できるよう、日々助言や支援、指導を行い、時には制度に照らして厳しい目も光らせなければならない。

「介護保険は介護が必要になった人を支えるとても大切な制度です。様々な施策を進めるうえで、法の制度をどのように維持し、運用していくのか…。時に厳しい指摘や意見をいただくことはありますが、ひとつひとつ丁寧に対応し、ご理解いただくことも我々の仕事です」

 制度の根幹を揺るがしかねない事態に対応し、根気強く説明を続ける。時にそのやり取りは“戦い”でもあるという。

 いくつもの施策を進めるチームのリーダーとして、「明確なビジョンを掲げ、目標に向かって突き進む人」と、インドネシア視察に同行した同部署の工藤聖代さんは、向山さんのことを評する。

「介護される状態になっても、必要なサービスを受けながら、住み慣れた地域で暮らし続けることが理想だと思っています。それを下支えする施策を広く実現し、誰もが住みやすい東京につなげていきたいですね」

 残業は極力しない。家に帰れば小学3年生の男の子と保育園年長さんの女の子、ふたりのお子さんの育児が待っている。「子育ても、ある意味“戦い”ではありますね」と向山さんは笑顔を浮かべる。

 東京の介護をより良いものに――向山さんの挑戦は、これからも続いていく。

→前編を読む

撮影/柴田和衣子 取材・文/斉藤俊明

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