精神科医・和田秀樹さんが指南する「いい手抜き」と「悪い手抜き」の違い 体力が落ち、働くのがつらい人のための働き方4ステップ
加齢にともなって体力が落ち、若いときのように働くのがつらいと感じる人は多い。そうし「体力がない人」に向けて、『体力がない人の仕事の戦略』(クロスメディア・パブリッシング)を上梓した、心と体のつながりに詳しい精神科医の和田秀樹さんは「少しでも楽なやり方を探すのが大切」と話す。精神科医の視点から考える、体力がない人の上手な働き方について詳しく教えてもらった。
教えてくれた人
和田秀樹さん/精神科医
わだ・ひでき。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。著書に『なぜか人生がうまくいく「明るい人」の科学』(クロスメディア・パブリッシング)、『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』(同)など。
「いい手抜き」と「悪い手抜き」を見極めて働く
体力がない人は、自分の体の弱さや体調の崩しやすさに悩んでいることが多いが、さらに、その体力のなさによって「周りに迷惑をかけている」と感じてしまうことで、過剰なストレスを抱えていることも多い。多くの人にとって毎日仕事をすることは「当たり前」であり、その「当たり前」ができない人に対しては、「なぜできないのか?」と考えてしまいがちだからだ。
「体力がないというのは、目に見える病気やケガと違って、職場や周囲の人たちの理解を得られないだけでなく、日常の行動がネガティブに受け取られがちなことが、ストレスの原因になっています」(和田さん・以下同)
体力を気にするより考え方を変える
疲労を我慢したり、極度のストレスを抱えたりしたまま仕事をしていると、より心身に負担がかかり、余計に体調を崩しやすくなる。そのため、昨今では「体力が最も大事なビジネススキル」という考え方も増えてきているが、体力はそう簡単に増やせるものではない。
そこで、和田さんがすすめているのが「考え方を変える」ことだ。考え方を変えるとは、自分の思い込みや決めつけを捨て、今までと違う視点から仕事と向き合うことだ。
「もう一歩踏み込むならば、体力がない人や体が弱い人にとっては、ありとあらゆることについて、『今より楽な方法を探す』という視点を持つことが重要なのです」
結果を逆算して行動する「いい手抜き」
今より楽に過ごすためのポイントは、「いい手抜き」と「悪い手抜き」を見極め、「いい手抜き」をすることだ。「いい手抜き」と「悪い手抜き」の違いは、「結果を見据えて、そこから逆算して行動しているか?」という視点の有無にあり、体力と時間を浪費せずにしっかりと結果を出せるのが「いい手抜き」だ。
「手抜きの上手な人は、大胆に手を抜いていたとしても、『ここだけはきちんとしておいた方がいいだろう』というツボを心得ているから、大事なところだけは絶対に手抜きをしません。結果から逆算して、『このポイントさえ押さえておけば、あとはそれほど重要ではない』とわかっているため、手抜きをしていても、きっちりと成果を出しています」
体力がない人が要領よく働く4つのステップ
和田さんが指南する、「いい手抜き」をして要領よく働くための方法は、4つのステップに分かれている。
ステップ【1】自分の体力と相談しながら仕事の量を決める
要領よく働くために最初にするべきは、仕事を頼まれた際、その仕事をこなせるかどうかを冷静に見極めることだ。体力がなく迷惑をかけているからと、自分の能力や知識を大幅に超えるタスクを背負い込むと、体力が追いつかず、体調を崩すリスクが高まる。
自分の能力などを客観的に観察しようとすることを心理学では「メタ認知」と呼ぶが、このメタ認知で自分の能力やスキル、得意分野や不得意分野、強みや弱みなどを総合的に認識して、与えられた仕事を遂行できるかどうか判断することが大切だ。
「自分自身と冷静に向き合って、『おそらく大丈夫だろう』と思えたならば、そこで初めて『承知しました』と仕事を受けることになります」
ステップ【2】仕事を断る際の最低限のマナーを守る
ステップ【1】で自分の能力などをメタ認知するようになると、仕事を断らざるを得ない場面も増えてくるだろう。ステップの2つ目は、「仕事を断る際の最低限のマナーを守る」ことだ。ポイントは、「断る『理由』を明確に説明すること」、「『申し訳ない』気持ちと『感謝』の意を伝えること」、「『迅速』で『丁寧』な対応を心がけること」の3つだ。
上司などの仕事を頼んできた相手が納得できる理由を説明して理解してもらいながら、「やってみたいとは思うのですが」などの言葉を添えて、仕事の依頼自体は喜んでいる旨を伝えることで、相手との関係悪化は起こりづらくなる。また、返事が遅くなるほど無用なトラブルを招く恐れがあるため、できるだけ早く自分の考えを伝えることが大切だ。
「当然のことながら、あまりにも頻繁に仕事を断り続けると、上司の信頼を損なうことになります。あくまでも『最低限、この仕事だけは避けたい』と考える場合に限ることが大事なポイントです」
ステップ【3】ChatGPTに仕事を「楽にやる方法」を聞く
仕事を引き受けることになったら、すぐに着手するのではなく、「成果を出すためにどんなやり方をすべきか?」を考えることから始める。正攻法で進めた場合にかかる時間と労力をイメージしたうえで、もう少し楽にやる方法がないかを考えてみて、答えが見つからなければ、信頼できる先輩や同僚に相談したり、上手に仕事を進めている人の真似をしたりするのもいい。また、「ChatGPTなどの便利なツールを使うことも有効な手段です」と和田さん。
「ChatGPTに『この仕事を楽に進める方法を教えて』と尋ねれば、瞬時に数種類の選択肢を提示してくれます。どんな方法でもいいから、少しでも楽にやる方法を見つけ出すことが、体力のないビジネスパーソンにとっての『最優先課題』と考える必要があります」
ステップ【4】周囲の人の力を借りる
体力がない人は、楽なやり方を探すだけでなく「周りの人の力を借りる」ことも大切だ。体力に自信がない人ほど、責任感が強く自分ひとりで仕事を片付けようとする場合があるが、一人で抱え込むとキャパオーバーになり、むしろミスや遅延につながってしまうリスクが高まる。特に自分が不得意な分野の仕事や、体力的に難しいと思われる仕事は、周囲の力を積極的に借りるように考え方を切り替えたほうがいい。
「目的地にたどり着けるならば、自分の足で歩いても、誰かの車に乗せてもらっても結果は同じです。会社という組織で仕事をするメリットは、人に頼んだり、助けてもらったりして、チームで仕事ができることにあります。体力がないビジネスパーソンであれば、ムリして自力で歩こうと気負う必要はなく、もっと周囲の人に頼って、楽にできる方法を探すことが大事なのです」
●《83歳の保健学博士が実践するボケないための習慣》「スーパーに行くときもおしゃれに」日課としている2つの体操は「高速指体操」「舌回し」
●《感性は老いない、経験はかさばらない》ANA初の「65歳定年まで飛び続けた客室乗務員」語る“1人旅のススメ”「知らない世界を見に行くのに遅すぎることはない」
