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認知症の母の排泄問題に不安を感じた息子がケアマネに相談した訪問介護のこと「新たに見直をしたケアプランの中身」

 作家でブロガーの工藤広伸さんは岩手・盛岡に暮らす認知症の母を遠距離介護している。デイサービスや訪問介護サービスを活用し、在宅介護を続けているのだが、毎週水曜は「訪問リハビリ」が訪れる日。しかし困った問題に直面し、思い切って訪問介護の中身を見直すことに――。

執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/岩手で暮らす認知症で難病の母(82才・要介護4)を東京から通いで在宅介護を続け、多くのメディア・講演会などで活躍。著書『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』など。最新著『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』が11月に発売予定。12月13日に新刊記念イベントを開催(東京・品川のフラヌール書店・オンライン配信あり)https://harukara-reading.stores.jp/items/68e1e5c840aa62e0559124ac

毎週水曜日は「訪問リハビリ」

 母は、指定難病であるシャルコー・マリー・トゥース病を患っています。手足の筋肉が萎縮しているため、つま先に力が入らずにスリッパがはけなかったり、握力が弱くペットボトルのふたが開けられなかったりします。

 未だに治療法は確立されていませんが、リハビリをすれば筋力の維持や関節可動域の保持が期待できるため、介護保険サービスで訪問リハビリを10年以上利用してきました。

 作業療法士さんや理学療法士さんが実家に来て、母の筋力トレーニングやストレッチなどを行い、さらに認知症のリハビリとして母が得意だった料理を一緒に行うなど、母にあったプログラムを組んでもらっています。

 訪問リハビリは週1回、60分の契約でしたが、あることがきっかけでリハビリの内容や時間の見直しが必要になったのです。

ケアプランの見直しをした理由

 訪問介護などの介護保険サービスを利用するためには「ケアプラン」を作成する必要があります。ケアプランとは、「訪問リハビリを週1回、60分の利用」といったように、介護保険サービスを利用する人の心身状態、本人や家族の希望などを加味しながら、様々な介護保険サービスの種類や頻度を決めた計画書のことで、要介護者の状態によって見直しも可能で、基本的にはケアマネジャーが作成しています。

 わが家のケアプランも母や介護者であるわたしの希望を踏まえ、担当ケアマネジャーと話し合いをしながら決めています。今回、ケアプランの見直しが必要になったきっかけは、母の排泄問題です。

 作業療法士さんは、あくまでリハビリの専門職です。もしも母が排泄を失敗してケアが必要になった場合、紙パンツやズボンの交換は業務外になってしまいます。

 母の失禁回数は日に日に増えているので、早めに対策をしなければ作業療法士さんに迷惑がかかってしまうかもしれません。そこでケアマネさんに連絡をして、訪問リハビリを実施する日の介護保険サービスの順番を変更することにしました。

新しいケアプランへの変更

 わたしはケアマネさんに、次の順番で介護保険サービスを提供してもらうようお願いしました。

<今までのケアプラン>
 朝:訪問介護 → 昼前:訪問薬剤師 → 夕:訪問リハビリ

<新しいケアプラン>
 朝:訪問介護 → 昼前:訪問リハビリ → 昼後:訪問薬剤師

 この順番にした理由は、朝の訪問介護では必ず紙パンツの交換をするからです。交換した直後に訪問リハビリをすれば排泄問題の心配もなく、作業療法士さんは本来の仕事に集中できます。

 これで排泄問題は解決したのですが、リハビリの一環として行っていた夕食作りができなくなる問題が出てきました。これまでは訪問リハビリを60分お願いし、その時間の中で母は身体を動かすリハビリのほか、作業療法士さんと一緒に夕食を作るリハビリもお願いしていました。

 ケアマネさんに相談したところ、訪問介護でヘルパーさんに再訪してもらって夕食の準備をお願いすればいいのではないかと提案されました。訪問介護には「2時間ルール」があって、同じ利用者が同じ日に複数回利用する場合、原則として2時間以上間隔を開けることになっています。(編集部註※)

※「概ね2時間未満の間隔で指定訪問介護が行われた場合には、それぞれの所要時間を合算する」という訪問介護の報酬制度の事業所の公平性とサービスの透明性を確保する重要な基準。

 そこで最終的に見直したプランが、こちら。

<最終的に見直した新たなケアプラン>
 朝:訪問介護 → 昼前:訪問リハビリ → 昼後:訪問薬剤師→ 夕:訪問介護

 ケアマネさんが訪問介護事業所と時間を調整してくださって、今後は1日2回、ヘルパーさんに来ていただけるようになりました。夕食の準備はヘルパーさんが行うため、訪問リハビリの時間を60分から40分に短縮し、新たに訪問介護を60分利用することになりました。

 母には認知症が進行しても料理を続けて欲しいと思っていましたが、今後は訪問リハビリでは行いません。その代わり、新しく通い始めたデイサービスで簡単な調理をする時間があるので、そちらでカバーできると考えています。

母の健康状態に合わせて柔軟にケアプランを見直す

 1日2回の訪問介護は同じ事業所に担当していただけることになったので、連携がとりやすく、わが家としてもメリットがあります。

 たとえば朝のヘルパーさんが母の衣類や寝具を洗濯し、乾燥機に入れるところまでやって時間切れになったとしても、夕方のヘルパーさんが乾燥機から洗濯物を取り込んでくれるので、1日のうちに洗濯を終わらせられるかもしれません。

 また夕方に紙パンツを交換してもらったら、母の夜間の尿漏れの頻度も減り、翌朝のヘルパーさんがシーツを交換したり洗濯をしたりする回数も減る可能性があります。

 これまで訪問リハビリで作った料理を母は認識できないのか、食べずに片づけてしまう日があったので、夕方いらっしゃるヘルパーさんに、母が夕食を食べ始めるまで見守りをお願いしました。

 2025年は訪問リハビリの時間変更に加え、10年通っていたデイサービスの突然の閉鎖で、介護保険サービスの曜日変更などケアプランを大幅に見直しました。

 ケアプラン作成するケアマネへの報酬は介護保険に含まれていますので、見直しも含め、自己負担はありません。見直しはケアマネに相談する必要がありますが、一度決めたプランをできればできれば変更せずに続けたほうが、介護職の皆さんも混乱せずに済みますし、母の生活リズムも安定すると思います。

 とはいえ、最も大切なのは母の健康状態です。ケアマネさんや介護職の皆さんにはご苦労をかけますが、母がこれからも自宅で元気に暮らせるよう、心身の状況に合わせて柔軟にケアプランを見直していきたいと思っています。

 今日もしれっと、しれっと。

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