《仕事と介護の両立に関する実態調査》介護未経験者の8割が「両立できるか不安」だが、介護経験者の約7割は「仕事で役立つスキルは介護でも役立つ」と回答
高齢化が進み、要支援・要介護認定者数が増加し続ける現代日本。介護の担い手はとりわけ働き盛りの世代となり、介護と仕事の両立が大きな課題となっている。そこでダスキンのヘルスレント事業は20代~50代の有識者1,000人を対象に介護と仕事の両立に関する実態調査を実施。その結果をレポートする。
介護と仕事の両立に関する調査「介護白書2025」
団塊の世代が75才以上になる2025年。介護の需要は増え続け、働き盛りの世代が介護の担い手となり、介護離職が深刻な問題になっている。そこでダスキンが展開するヘルスレント事業(介護用品・福祉用具のレンタルと販売)は、20代~50代の有職者1,000人を対象に介護と仕事の両立に関する実態調査を行った。
本調査は、同社が2022年から継続実施し、今年で4回目となる生活者調査であり、今回はヘルスレント事業が行う「あしたのケア」プロジェクト(※1)の一環として、仕事と介護の両立に焦点を当てている。
併せて、これまでの介護に対するイメージや備えの状況を定点的に把握するため、60代~80代の親世代1,000人、および20代~50代の子世代1,000人を対象とした調査も実施した。
(※1)介護に対する「備えの文化」を育むことを目指し、「あしたのケア」をテーマに進める啓発活動の取り組み。
働く介護未経験者の約7割が「将来介護をすることになる」と予想
働く男女1,000人を対象に仕事と介護の両立に関する調査を行った。まず、対象者のうち「介護を経験したことがない」と回答した840人に、将来、自分が介護をすることになると思うかと尋ねたところ、介護をすることになると予想している人は66.4%で558人という結果となった。性・年代別に見ると、30代女性が72.2%、40代女性が72.8%と特に多くなっている。
また、上記の介護未経験者840人のうち、将来自分は介護をすることになると予想した558人に、将来の介護に対する不安度を0~100%の数値で示してもらったところ、平均で72.7%と7割を超えた。性・年代別では、こちらも30代女性が79.8%、40代女性が78.4%と高くなっており、将来介護をすることになると思う年代ほど、将来の介護に対する不安も大きくなっていることが窺える。
続いて、介護経験がない840人に、将来の介護に向けた準備について尋ねたところ、72.9%が「特に何も準備していない」と回答した。中でも、将来介護を担う可能性を高く見込み、不安も強い30代女性では、81.5%が準備をしていないことが判明した。
また、将来の介護に備えて準備している内容について具体的に尋ねたところ、「介護に備えて貯蓄・保険など金銭的な準備をしている」12.3%、「親と介護について話し合っている」10.0%などが挙げられたが、実践率は1割程度に留まっているようだ。
介護経験者のおよそ4人に3人が何の準備もないまま介護生活へ
続いて、家族の介護経験がある153人を対象に、家族の介護が始まった時点で介護に関する準備がどの程度できていたかと尋ねたところ、41.2%は「あまり準備できていなかった」、32.0%は「まったく準備できていなかった」と回答し、家族の介護経験者の73.2%、およそ4人に3人は準備ができていないまま介護生活が始まっていることが判明した。
また、当時を振り返り準備しておけば良かったと思うことを尋ねると、介護の負担・期間・感情の起伏などへの「心構え」51.6%、ケアマネジャーや地域包括支援センターなど「相談先の把握」49.7%、介護保険制度や地域の支援制度についての「情報収集」45.1%が上位に挙げられた。
次に、家族の介護経験者に、これから介護を始める人へのアドバイスや心構えを尋ねたところ、
「自分で出来ない事を決断するのも勇気」(男性20代)、「(介護を)自分の義務だとか責任と思うのはやめてほしい」(女性30代)、「人の手に頼ることを悪いことだと考えない」(女性50代)などの精神面でのアドバイスや、「プロの手を借りた方がいい。家族だけで抱え込まない方がお互いのため」(女性30代)、「元気なうちに先の事を話し合っていたほうが良い」(男性40代)、「振込先が分かる通帳や不要なものの解約など早めにしておいたほうが良い」(女性40代)、「相談できる人を作っておく」(男性50代)などの現実的なアドバイスまで、介護経験者ならではの実感のこもったアドバイスが多く届いた。
ここまでの調査結果を受け、NPO法人となりのかいご代表理事の川内潤さんは、以下の通り語る。
「まずは『全てを自分ひとりで抱えるのは無理だ』と、認識することがとても大切です。頑張れば何とかなる、という問題ではないのです。ではどうすればいいか。まずは、各地の地域包括支援センターなどに連絡し、状況を説明してプロに相談してみてください。それだけでも充分です。その後の支援は、介護の専門職に任せていいのです」
介護をする側もされる側も無理なく過ごしていくために、介護とは適切な距離を保つことが大切だ。