ホウレンソウは尿路結石、山菜はすい臓がんを引き起こすリスクも!「野菜は調理法に注意が必要」【医師解説】
豊かな食を楽しむ季節がやってきた。新鮮な葉物野菜から山菜まで旬の食材が目白押し。野菜や山菜は栄養豊富で健康的なイメージがあるが、食べすぎは寿命を縮める可能性があるという。最新の研究で判明した食事の新常識を医師が解説する。
教えてくれた人
谷本哲也さん/医師・ナビタスクリニック川崎院長
ホウレンソウは尿路結石を発症するリスクが指摘されている
健康長寿に欠かせない野菜。だが、「食べれば食べるほどいい」というわけではないという。なかには病気のリスクを高める可能性が指摘されたものもある。
そのひとつがホウレンソウだ。米ハーバード大の関連病院であるブリガム・アンド・ウィメンズ病院が約24万人の医療従事者を対象に行なった調査では、ホウレンソウを「月に8回以上」食べる男性は、「月に1回未満」の男性に比べて、尿路結石を発症するリスクが1.3倍高いことが明らかになった。
ナビタスクリニック川崎院長の谷本哲也医師が語る。
「ホウレンソウに含まれているシュウ酸が尿の中に溶け出し、尿路でカルシウムと結合することで、尿路結石ができてしまう。シュウ酸は野菜など植物に広く含まれている成分ですが、とくにホウレンソウは含有量が多いので注意が必要です」
ただし、調理法によってリスクを下げることは可能だという。
「シュウ酸は水に溶けるので、茹でてから茹で汁を捨て、おひたしにすれば摂取量を減らすことができます。炒めるだけではあまり抜けないので、炒め物に使う時も、下茹でしてアク抜きをしておくことが必要です。
それでもシュウ酸がすべて抜けるわけではないので、毎日のように大量に食べるのは避けるほうがいい」(谷本医師)
山菜も注意が必要 大量に摂取するとすい臓がんのリスクが上がり中毒死する危険性も!
ワラビやゼンマイなどヘルシーなイメージが強い山菜にも注意が必要だ。
「日本人の生活習慣とがんの関連」を明らかにすることを目的に行なわれたコホート研究「JACC Study」で判明したのは、山菜の発がんリスク。男女11万人を2年間追跡調査した結果、山菜をほぼ毎日食べる男性は、月0~2回しか食べない男性と比べて、すい臓がんの罹患リスクが約3倍になった。
「とくにワラビの『プタキロサイド』という成分には発がん性があることがわかっていて、大量に摂取すると中毒死する危険性もあります。もともと植物は動物に食べられないように、進化の過程で毒を持っています。
そのなかで毒性がないものや毒性が極めて低いものが食用として選ばれてきましたが、山菜には微量の天然の毒が含まれているものもある。アク抜きをし、加熱して食べれば大丈夫ですが、きちんと調理しなければ危険です」(谷本医師)
ベジファーストよりタンパク質が優先
野菜の食べ方にも落とし穴がある。近年、血糖値の急激な上昇を抑える効果があるとして、野菜を最初にまとめて食べる「ベジファースト」が注目されているが、谷本医師は警鐘を鳴らす。
「年齢を重ねると、野菜を先に食べすぎてタンパク質がしっかり摂れなくなるケースがあります。まず肉をはじめとする主菜を先に食べ、その後に野菜や炭水化物を摂るほうがいい」
食べる順番にも十分に気を配りたい。
※週刊ポスト2025年10月3日号
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