夏の猛暑が「誤嚥性肺炎」の引き金に?医師が勧める「パタカラ体操&あいうべ体操」でのどを鍛えよう
日常生活で「のどを鍛える」方法もある。三島医師が推奨するのが「パタカラ体操」と「あいうべ体操」だ(本文下部のイラスト参照)。
「『パタカラ体操』は口の周りや舌、のどなど『食べる、飲み込む』うえで重要な筋肉を鍛えることができます。『パ』は唇を閉じる力を強化し、食べこぼし防止にもつながる。『タ』は舌先の力を鍛えて食べ物を運ぶ力を強化。『カ』はのどの嚥下反射を高めます。『ラ』の発音は舌全体の柔軟性を高め、滑舌の向上にもつながります」(三島医師)
この「パ、タ、カ、ラ」の4音をひと呼吸でゆっくり発音するのが基本で、毎食前に5~10回程度、30秒ほどかけて行なうと効果的だという。
「応用編は『パタカラ、パタカラ、パタカラ』と早口言葉のように連続して発音すること。最初はゆっくり、慣れてきたらテンポを上げてチャレンジしてみましょう。はっきりとした発音、口を大きく意識的に動かすことを心がけるとより効果的です」(同前)
「パタカラ体操」のやり方
<パ>上下の唇を鍛える(吸う・飲む力)
唇をしっかり閉めて発音する。
【ポイント】くちびるを破裂させるように
<タ>舌の先を鍛える(食べ物を押しつぶす力)
舌を上あごにしっかりとくっつけて発音する。
【ポイント】舌の先を上あごにくっつけて
<カ>舌の奥を鍛える(飲み込む力)
舌の付け根をのどにつけるように発音する。
【ポイント】舌の奥をのどに押しつけるように
<ラ>舌の裏を鍛える(食べ物を運ぶ力)
舌をまるめ、舌先を上の前歯の裏につけて発音する。
【ポイント】舌をまるめて
ドライマウス対策や顔のたるみ予防も期待できる「あいうべ体操」
「あいうべ体操」は、嚥下機能の向上のほか、唾液の分泌促進による口臭予防やドライマウス対策、表情筋の活性化による顔のたるみ予防、発声機能の維持なども期待できるという。
「『あ』は喉の奥まで見えるくらい大きく口を開け、『い』は頬の筋肉を意識しながら口を横に開く。『う』は唇をしっかり前に突き出して口の周りの筋肉を使い、『べ』は舌先を思い切り下に伸ばすことで舌を鍛えます」(同前)
どちらの体操も無理は禁物。「顎や舌に痛みがある場合は中止してください」と三島医師は言う。
のどに関わる筋肉が衰え始めるのは40~50代。さらに定年を迎えた60代以降の男性は「人と話す機会が減る」ことで、嚥下機能が急激に衰えやすい傾向がある。
「配偶者でも子供でもいいので、なるべく人と話す機会を増やすとともに、『パタカラ体操』と『あいうべ体操』で夏の誤嚥性肺炎を予防してください」(同前)
「あいうべ体操」のやり方
<あ>
口を大きく開く
<い>
歯を見せて横に開く
<う>
口を尖らせて前に突き出す
<べ>
舌を突き出し下に伸ばす
イラスト/タナカデザイン
※週刊ポスト2025年8月1日号
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