誤嚥性肺炎による入院日数が約4分の1に減！注目の口腔ケアプロジェクト、デイサービスにも拡大へ
総務省統計局によると、65才以上の高齢者人口は2022年に3627万人となり過去最多となった。2025年には3670万人を超え、総人口の30%が高齢者になる見込みだ。高齢者が生きがいや充実感のある日々を過ごすには、生活の質（QOL）を高めるために食べる・話す・笑うために大切な歯と口の機能（口腔機能）の維持が重要になる。そこで、クロスケアデンタルが発表した「口腔ケアで高齢者の誤嚥性肺炎ゼロを目指す」取り組みについてご紹介する。
要介護者にとって重要な口腔ケア
年齢を重ねると、飲み込む力など嚥下機能が衰えるため、口腔内の唾液や細菌、食べかすなどが誤って気管に入ってしまう誤嚥起こしやすい。この誤嚥による肺炎は誤嚥性肺炎といわれ、命に関わることも…。まずは、誤嚥を引き起こさない工夫が必要だ。
→命の危険にもつながる誤嚥性肺炎を防ぐ｜予防法やトレーニング法【まとめ】
介護施設における口腔ケアサービスを提供しているクロスケアデンタルでは、介護現場に正しい口腔ケアを届け、高齢者の肺炎の原因となっている“誤嚥性肺炎”をゼロにすることを目指す「誤嚥性肺炎ゼロプロジェクト」（以下、「ゼロプロ」）に取り組んでおり、創業から5年で全国100以上の事業所が参加している。
ゼロプロ式口腔ケアとは？
口腔ケアはさまざま種類や工程があるにもかかわらず定義が曖昧で、対象や目的ごとに方法が体系化・確立されていないなど課題があった。そこでクロスケアデンタルは、介護業界における誤嚥性肺炎を防ぐ口腔ケアの定義・手法の確立し、歯科衛生士等による介護者への技術指導などを行う「ゼロプロ式口腔ケア」を提供している。
「ゼロプロ式口腔ケア」を導入した介護施設では職員が週2回、口内を綺麗にする「ブラッシング」と飲み込む力と唾液分泌量を向上させる「リハビリ」の口腔ケアを行い、1年間で誤嚥性肺炎による入院日数を約4分の1に減らすことができたという。
特養に加えてデイサービスにもゼロプロを導入開始
デイサービスなどの通所系介護事業所の利用者は、特別養護老人ホームや介護老人福祉施設と比べて自立度が高い人が多く、本人が毎日の歯磨きを行うケースがほとんどだ。
しかし、看護・介護スタッフが障害者や要介護者の口腔問題を評価するための口腔アセスメントツールで、口の健康状態を調べてみたところ、デイサービスを利用している要介護度が低い人も口の健康状態が悪いことが判明したという。
これまで特別養護老人ホームを中心として展開していたが、新たにデイサービスでも「ゼロプロ」の取り組みを開始。
7月から「ゼロプロ」に参画した福岡市のデイサービス「スターフィールドデイサービスセンター」管理者の山下さんは、
「口腔ケアに注力するには知識をつけたり手技を学んだりする手立てがないと時間がかかってしまいます。私たちにとってお口の中は未知の世界であるため、連携することでゼロプロ式口腔ケアの手技を学べたり、口腔内の評価をしたりすることができる点が導入の決め手になりました」と話す。
「自分ではなかなか取れなかった口の中の汚れも取れ、スッキリして気持ち良い」と利用者の反応も上々とのことだ。
介護施設だけでなく、デイサービスでもこうした正しい口腔ケアを実施してもらえるのは安心だ。誤嚥性肺炎を防ぎ、健康で長生きするためにもプロの手を借りて口の中の健康維持と早めの予防から始めたい。
【データ】
クロスケアデンタル
誤嚥性肺炎ゼロプロジェクト
https://crosscare-dental.jp/goen-zero-project
※クロスケアデンタル「誰もができる口腔ケアで誤嚥性肺炎ゼロを目指している会社、新たにデイサービスにて取り組みを開始」プレスリリース記事より（2023年8月4日発表）。
写真・図／クロスケアデンタル提供 取材・文／松藤浩一
●「口腔ケア」の重要性 「食事」「排泄」「体の清潔」と同じくらい大切 ＜第１回＞
