医師や薬剤師が警鐘!降圧剤に潜む「腎障害」や「肝障害」の“副作用”に注意すべき理由とは?【薬を飲んだ後に死亡した症例一覧付き】
普段、何気なく飲んでいる薬に“死に至るリスク”があるとしたらーー。どんな薬にも必ず副作用がある以上、私たちはリスク情報もきちんと知っておく必要がある。実は「薬を飲んだ後に患者が死亡した事例」を収集した大規模データベースがある。何の薬を飲んで、どんな症状が出たのか。どのような因果関係が考えられるのか。徹底調査の結果を、専門家の解説とともに紹介する。
教えてくれた人
谷本哲也さん/ナビタスクリニック川崎院長、長澤育弘さん/薬剤師
病院・薬局では教えてくれない薬の副作用とは
「80代の男性が降圧剤を飲んで急性腎障害を発症。のちに死亡」
「糖尿病治療薬を飲んだ40代の男性が劇症肝炎を発症。のちに死亡」
これらは実際に国が現場の医師などから報告を受けた「副作用が疑われる症例」の内容だ。
一般的に医薬品の副作用は、医薬品添付文書に記載される。さらに発売後の薬を服用した患者に副作用と疑われる症例が出た場合、医薬関係者が厚労省所管の医薬品などの安全性を司るPMDA独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に報告することが法的に義務付けられている。
その情報は、PMDAのホームページに公開されており、冒頭に示したものはその一部である。
PMDAの審査専門員を務めたナビタスクリニック川崎院長の谷本哲也さんが指摘する。
「報告された症例のうち患者が死亡したケースは調査の完了後、薬と死亡の因果関係を『A・否定できない』『B・認められない』『C・評価できない』の3つに分類しています。この評価は担当医師や製薬会社、薬剤師などの意見を踏まえて行ないます」
ただし、こうした症例が患者に広く周知されているとは言い難い。
「症例報告は病気の種類や年齢層、副作用の実態などを把握できる貴重な資料と言えます。内容が簡潔な添付文書よりも具体的なので、薬を飲む際の参考になります。ですが、医師は確認していたとしても、それを患者さんに丁寧に伝えられる場は少ない」(谷本さん)
本誌は谷本さんと薬剤師の長澤育弘さんの協力のもと、PMDAが公表する最新のデータから生活に身近な「薬効分類」の薬について、厚労省が発表している処方数上位の薬について調査。薬ごとに死亡例を抽出して一覧表にまとめた。
多くの人が処方される薬を飲んだ後に死亡した症例では、どのような副作用が疑われているのか。
「降圧剤」の副作用で肝臓や腎臓に影響が…
「降圧剤」のなかで最も多く処方されているのがARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)の「アジルサルタン」だ。この薬を服用した80代の男性が小林製薬の紅麹問題でも注目された急性腎障害を発症し、のちに死亡した例が報告されている。長澤さんが語る。
「急性腎障害は数時間から数日の間に急激に腎機能が低下して尿量減少やむくみ、全身倦怠感などの症状が現われる病気です。最悪の場合は体内に排出されない毒素が蓄積して死亡します。アジルサルタンは腎臓のろ過フィルターである糸球体のろ過量を減らすため、腎臓の血流が減少して急性腎障害を引き起こす可能性があります」
降圧剤の「オルメサルタン」では飲んだ後に劇症肝炎を発症、のちに死亡した症例が報告された。
「肝細胞の壊死などが急激に進み、発熱や食欲不振が生じて皮膚が黄色く変色する病気。発症すると7〜8割が命を落とすとされます」(長澤さん)
谷本さんは一覧表に「腎障害」や「肝障害」の症例報告が多いことについてこう推察する。
「薬はその成分が吸収、代謝される肝臓や腎臓に直接の影響が出やすい。特に高齢者はこの2つの臓器の機能が低下しており、副作用が出やすいので注意が必要です」
※週刊ポスト2024年12月20日号
●医薬品の元審査員が明かす「急性腎障害」の副作用リスクがある処方薬リスト【医師監修】