スーパー、スポーツクラブ、警備会社、身近な企業が展開する健康&介護サービスに記者が迫る!
90代の母を通いで介護しているR60記者。母のケアもそうだが、自分の老後の不安もあり、何か役立つサービスがないか、リサーチしていたところ、スーパーやスポーツクラブなど身近な企業がシニア向けの健康・介護サービスを展開しているのが気になった。記者が注目した3社の介護サービス内容や特徴をレポートする。
イオン/「イオンスマイル」自立して買い物に行ける体づくりを
大手スーパーチェーン・イオングループが、介護予防・リハビリのデイサービス「イオンスマイル」を提供している。こちらは、街中のAEON内などで受けられる“機能訓練に特化した”デイサービス。地域にある慣れ親しんだ場所で受けられる身近さが特徴だ。
「住み慣れた地域で元気に生活したいというご要望から、1日を過ごす場をご提供する選択肢のひとつとして、『機能訓練特化型デイサービス』をスタートしました」(イオンリテール・イオンスマイル事業部担当)
「イオンスマイル」は、日常生活を自立的に行うためには体力の維持が重要であるという考えに基づき、運営されている。
いくつになっても自分の足で買い物に行き、料理を作るなど元気に過ごせるようにという、接客サービス業の観点から始まったものだった。現在、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県に16店舗に拡がっている。
●サービス内容
「機能訓練特化型デイサービス」という短時間のデイサービス。食事や入浴等のサービスを提供せず、約3時間と短時間で完結。
1日の流れは以下のようになっている。
1. 迎え(手すり、ステップ付きの送迎車)
2. 体温・血圧などの体調確認や準備体操(15分)
3. 体操・有酸素運動・マシントレーニング・個別機能訓練
4. 整理体操・体調確認
5. 送り
●特徴
・通いやすい利便性がある
イオンスマイルの店舗の約半数がイオン店内にあり、利便性があり、利用者やその家族にとってアクセスがしやすいのが特徴。
・食事や入浴などがないため短時間で、気軽に利用できる。
・専門的なスタッフの配置
経験豊富な介護スタッフや看護スタッフ、リハビリ専門職(理学療法士や作業療法士)が常駐。
「イオングループとしての安定した運営基盤により、施設のメンテナンスやサービスの質の向上、スタッフの最良の環境を整えることに努めています。
単にデイサービスや介護サービスを提供するだけでなく、イオングループとの連携により、薬剤師による口腔ケアイベント、靴の専門家による靴の測定会、補聴器相談員による聴こえレベルチェックや補聴器の試しができる“聴こえ相談会”など、健康管理に役立つ商品紹介やライフサポートも行っています」
杖なしで歩けるようになった事例も
利用者からは「杖なしで歩けるようになった」「知り合いができて楽しく会話もできて嬉しい」「定期的に運動できる機会を持てた」などの、感想が寄せられているという。
なお、今後は認知機能の維持・向上を目的としたトレーニングを、より積極的に提供していきたいとのこと。また、今年から一部の店舗で買い物支援サービスの導入を開始。これからも展開をさらに広めていく方針だ。
介護を受ける人には「イオンスマイル」のデイサービスを利用してもらい、その間、家族にはイオンでお買い物などをして息抜きをしてもらう、そんなどちらにも心地良い環境を届けていきたいとのこと。
【データ】
イオンスマイル
運営施設数:16店舗(令和6年8月現在)
利用者数:約1700名(週1~3回利用)
利用者の年代:主に70代から80代
利用料金:要支援の方:約2200円(週1回利用・介護保険適応[1割負担]の場合)、要介護のかた:約2800円(週1回利用・介護保険適応[1割負担]の場合)
※ご利用回数や介護度、介護保険自己負担割合などにより金額が異なります。
公式HP:https://www.aeonretail.jp/aeonsmile/index.html
コナミスポーツクラブ/「OyZ運動スクール」OVER60のための運動プログラムを提供
コナミスポーツが全国で直営店100施設以上※を運営する「コナミスポーツクラブ」。ジムやプールの他に、キッズクラスや大人向けのバレエ・ヨガなどのクラスも多種ある。※2024年8月時点
2012年から「OyZ」(オイズ)という60才以上を対象とした運動スクールのプログラムを開設し、2024年8月現在までに全国のコナミスポーツクラブの51施設で導入されている。
「OyZ運動スクールは、60才からの運動クラスです。これまでスポーツクラブを利用したことがなかった、また、現在は通っていないというかたがたにも、健康の維持・増進をしていただく機会をご提供したいという思いからスタートしました。
OyZ(オイズ)は、O:open(切り開く)、y:youth(若さ)、Z:zip(活力)の頭文字からきています。歳を重ねても若々しく、いろいろなことに積極的にチャレンジし、楽しい人生を過ごしていただくことをテーマにしたサービスブランドです。
”老いない(老いず)”でいこうという意味も込めています」(コナミスポーツ・広報担当)
●サービス内容
「OyZ運動スクール」は、シニアの体力づくりや脳の活性化に重点を置いたプログラム。週1回か2回から選べる。
トータル60分のレッスン内で、以下の3分程度の運動を繰り返し全部で20分間、体力に合わせ無理のないトレーニングを行う。足腰が鍛えられるだけでなく、腰痛予防、脳活性、ロコモ予防、メタボ予防などにも効果が期待できるとのこと。
・転倒予防に効果的な足腰の筋力運動
・踏み台をゆっくり昇り降りするステップ運動
・ステップ運動とリズムに合わせて腕を動かす運動
●特徴
・継続的な運動習慣を作れ、体力維持に努められる
・シニアに特化したプログラムで無理なく続けられる
・定例クラスなのでコミュニティをつくりやすい
「OyZ運動スクールは少人数制のスクールなので、同じ曜日、同じ時間にいつものお仲間と一緒に運動できます。また、社内ライセンスを保有したスタッフが指導いたしますので、それぞれのレベルに応じて無理なく取り組んでいただけます」
全国展開のスポーツクラブなので、通いやすいことも特徴のひとつ。
OyZ運動スクールだけではなく、希望すればジムやプール、お風呂などが利用でき一日中過ごせることも魅力だ。
50才以上の「健康水泳教室」や、自分の泳いでいるところを複数台のカメラで撮影し、コーチとともに確認する「デジタルノート成人水泳教室」など、スポーツクラブならではの環境を活かした大人向け水泳教室も盛んだ。
「階段を楽に昇れるようになった」「定期的に運動する習慣がついた」「新しい仲間や友人ができた」などの声が届いているとのこと。
また、地域支援事業として自治体や介護予防事業者向けの「介護予防プログラム」※を推進。介護を必要としない身体づくりのためにも、引き続きシニア層へのアプローチを続けていく。
※https://www.konami.com/sportsclub/BtoB/preventive_care/
【データ】
OyZ運動スクール(コナミスポーツクラブ)
運営施設数:51施設(令和6年8月現在)
利用者の年代:60代以上
利用料金:週1回コース6050円~、週2回コース8470円~
※初回時に登録料5500円(税込)、会員証発行手数料1100円(税込)が必要。
公式HP:https://www.konami.com/sportsclub/school/oyz/school/
綜合警備保障株式会社(ALSOK)/「ALSOK介護」施設運営やデイサービスなどワンストップで提供
最後に紹介するのは、綜合警備保障株式会社(ALSOK)が運営する「ALSOK介護」(アルソック介護)。高齢者施設やデイサービスなど介護関連事業を幅広く展開している。
警備保障会社がなぜ介護事業に参入したのだろうか? サービスの内容も含めて企業の担当者に伺った。
「お客様の家や財産をお守りするセキュリティサービスをはじめ、お子様や高齢者の見守りサービスなどを提供しています。
高齢化社会に向けて生涯にわたって多様化するお客様のニーズにお応えするべく、2012年12月より介護事業に参入いたしました」(ALSOK介護・広報担当)
●サービス内容
ALSOK介護は、埼玉県や神奈川県などで高齢者施設やデイサービスを運営するほか、グループ会社では在宅介護の助けとなる環境づくりのサポートもしている。
また、高齢者が行方不明にならないための、GPS機能付きシューズの販売なども手がけている。
<入居サービス>
介護付有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホーム、認知症対応型グループホーム。
<在宅介護サービス>
通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援、訪問介護、訪問看護、その他事業として認可保育園、福祉用具、シニアセラピー、地域包括支援センター(受託)を運営。
「地域活動を積極的に推進し、必要な人に必要なサービスの提供をという考えのもと、ワンストップの介護サービスを目指しています」
●特徴
・警備保障会社ならではの備え
綜合警備保障のグループ会社なので安定した経営基盤を持ち、安全・安心を提供できることが強み。運営する施設では防犯防災をはじめ、災害などの有事の際にはALSOKの警備員が駆け付け、利用者の生活を守る。
・オリジナルの健康増進コンテンツ
オリジナル体操などのプログラムを生み出し、デイサービスなどで提供している。利用者に限らず、社員の健康増進にも役立っているとのこと。
「なかでもリラクゼーションサービスの『シニアセラピー』は、リンパのマッサージにより血行促進・浮腫の改善につながっています。さらに、施術中のセラピストとのコミュニケーションにより、心身共にリラックスして過ごしていただけます」
・デイサービスではオリジナル体操を実施
「オリジナル体操や機器を用いた身体機能訓練に注力し、機能維持・向上に努めています。ボランティアのかたがたにも助けていただき、個性あるイベントやレクリエーションも実施しています」
オリジナル体操には、脳(のう)と脚(あし)を使う脳トレ運動プログラム「ノーアエクサイズ」と「いきいきリズム体操」「あんしんヨガ」などがある。「ノーアエクササイズ」では、声を出しながら手指を使って日付の確認などして、前頭葉を働かせ口腔機能や判断昨日の改善を計る。
利用者からは、「汗をかき達成感もあり元気をもらえた」「身体が軽くなった」という感想が寄せられている。
今後は認知症型グループホームが主催して、利用者とその家族、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所のケアマネジャー、地域住民らも参加できる「オレンジカフェ」の開催を検討。また見守りセンサーの設置などICT化を推進に取り組んでいくとのこと。
【データ】
ALSOK介護
店舗数:294
利用者数:約460名
運営施設数:294店舗(令和6年8月現在)
利用者数:約460名
利用者の年代:主に70代から80代
利用料金:高齢者施設・デイサービスなどの種類によって異なる。体操・ヨガなどは施設利用者であれば施設利用料金に含まれる。
公式HP:https://kaigo.alsok.co.jp/
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イオンなどのスーパーやスポーツクラブ、警備会社などが展開する介護サービスは、これまでの生活で馴染み深い企業なので、介護サービスも身近に活用できると感じた。
今後も介護業界にこだわらず、介護する人・受ける人が身近に利用できる介護サービスに着目していきたい。
取材・文/本上夕貴
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