「デイサービスのプールで水着を1人で脱げない」「着替えを手伝ってもらう罪悪感も」着脱しやすい高齢者のための水着開発秘話
足腰に負担をかけずに効率良く運動ができると高齢者に人気のスイミング。プールでの運動をリハビリに取り入れているデイサービスもある。しかし、水着の着脱にストレスを感じている高齢者が多いという。そんな悩みに着目して開発された水着の開発背景を紹介する。
水着の脱ぎ着に苦労する高齢者は多い
水着は洋服と違い、ある程度の密着性が必要なため、脱ぎ着がしにくい構造になっている。しかし、水着は「パンツを持ち上げ片足ずつ穿く」といった衣類と同様の着脱方法がこれまでの主流だった。
「水着の脱ぎ着に苦労する高齢者の声をたくさん聞いていました」と、学校向けの水泳や体育用品、介護用品を製造・販売するフットマークの開発担当者は語る。同社では、フィットネス水着の購入者の約半数以上は高齢者だという。
中でも『起立した状態で、パンツのウェストを足首まで引き下げ片足ずつ抜き脱ぐ』という行動が難しいという声が多く、「起立したまま」という状態や、「起立したままかがむ」ことが障壁となっていることがわかった。
介護現場のヒアリング時に印象的だったのは、とあるデイサービス利用者の「施設に来るときはゆっくり家で着てくるのだけど、脱ぐ時は時間が掛かってしまって申し訳ない…」という声だ。
誰かを待たせていることへの罪悪感やスタッフに着脱を手伝ってもらうケースもあり、迷惑をかけていることへのストレスを感じていることもわかった。
そこで、自分で着脱できる水着を企画することにより、自信を持って自分一人で脱ぎ着ができ、余計なストレスを少しでも軽減することができればという思いから開発が始まった。
商品開発をする中で実際に着用してもらったところ、『これなら一人でも脱ぐことができる』という声が多く、2021年に女性用の『座ったままでも脱げる水着』を発売した。
実は男性も悩んでいた水着の着脱
女性用の『座ったままでも脱げる水着』は、「こんなものが欲しかった」という声がたくさん届いたという。
それと同時に、「男性用はありますか?」「女性用のセパレーツ水着のパンツは、男性でも着ることはできますか?」という問い合わせが数多く寄せられた。
こうした背景から、新たに男性用の開発に着手。座ったまま脱ぐことを可能にするために、既存の介護服を参考に両足前にファスナーをつけ、座ったまま脱げる仕様に変更した。
<座ったままでも脱げる水着の特徴>
1.視認性の高い白のファスナーを使用
視認性が高いことでファスナーの場所がすぐに分かり、着脱をスムーズに行うことができる。
2. ストレッチ性のあるファスナーを使用
着用した際にファスナー部分が波打ってしまうのを解消し、一般的なスパッツタイプの水着のデザインと差が出ない仕様になっている。
3. ファスナーが肌に当たらない裏地
ファスナーの裏面が直接肌に当たり、ファスナーによって肌が擦れることを防ぎます。
4. 腰ひもの通し方を工夫
一般的な男性用水着は、腰ひもでウエストサイズを調節していますが、この水着は両足前にファスナーを付けたことで、腰回りをひもで1周通すことができないという課題がありました。そこで、背面側半分だけにひもを通した状態で水着を穿いた後に、腹部に取り付けられた2つのループにひもを通し結ぶことで、水着がずれ落ちない仕様を考案。
簡単に脱着ができる水着の登場で、プールへの不安を解消し、水泳や水中ウォーキングのハードルも下がるかもしれない。高齢者のニーズを満たすアイテムを上手く活用して、運動不足を解消し、QOL(生活の質)を高めたいものだ。
【データ】
『座ったままでも脱げる水着・下 男性用』
https://www.ukiuki.jp/SHOP/250092.html
価格:5,720円
サイズ:M、L、LL、3L
カラー:ブラック
素材:<表地>ポリエステル90%、ポリウレタン10%、<裏地>ポリエステル100%
生産国:日本
『座ったままでも脱げる水着 女性用』
https://www.ukiuki.jp/SHOP/256601.html
※フットマークの発表したプレスリリース(2025年1月8日)を元に記事を作成
写真・イラスト/フットマーク提供 構成・文/松藤浩一
●血圧を下げる習慣はどっち?「スクワットVS腹筋」「毎日8000歩VS週2回プール」【専門家監修】