《親の死後に問題になりがちなお金問題》親が元気なうちにやるべきこと…通帳やクレジットカードの明細で見落としてはいけないポイント
親の病気や介護など、いざというときはいつか来てしまうものだが、そのためにやっておきたいのが、親の収入と支出を把握しておくこと。節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんは、面倒だと思っても、収入や支出を把握しておくことには大きなメリットがあるという。具体的にやるべきことやメリットについて教えてもらった。
教えてくれた人
丸山晴美さん/節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー
22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。https://www.maruyama-harumi.com/
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いざというときのために把握しておきたい収入と支出
いくら今元気に見えていても、大抵の場合、親は自分より早く亡くなってしまうでしょう。いざそのときが来ると、動揺して適切な行動が取れないということも多いため、事前に準備できることはきちんと対応しておくことが大切です。
特に、親の死後に問題となりやすいのがお金の問題です。所有している資産や口座情報、介護や死後の希望などをまとめたエンディングノートなどを親が記入しているか確認し、そうでないなら一緒に日々の収支や資産を、いざというときのためにチェックしておきましょう。
給与、年金、それ以外の収入をしっかりチェック
まず、働いている場合は給与、受給している年金、不動産収入など給与・年金以外の収入を確認しておきましょう。給与は給与明細を確認すれば事足りますが、年金については意外と多いのが「もらい忘れ」。
例えば老齢年金は受給開始年齢に達する3か月前に年金請求書が手元に届きますが、請求していなければもらうことができません。年金を受けられるようになったときから5年を過ぎると、5年を過ぎた分の年金については時効で受け取れなくなる場合があります。
年金に関する情報は、ねんきんネット(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)に登録すればいつでも確認できます。自分や親の分もきちんと登録し、いつからどのくらいもらえるのか、もらえているのかを把握しておきましょう。
不動産収入や保険のお祝い金など見落としがちな収入に要注意
給与と年金以外の収入は気づいていないことも多いため、他に収入がないかどうかは、銀行口座の入金記録などを見て確認しておきましょう。実は不動産を所有していて、その収入があるというケースもありますし反対に活用されず固定資産税を支払っている状態かもしれません。また、親が長く加入していた生命保険で、実は申請すれば長寿のお祝い金や生存給付金がもらえる状態になっているということも考えられます。
親の収入が給与と年金だけとは限りません。親に了承を得てから、加入している保険や口座のお金の流れを親本人と確認して、一緒に整理しておくと良いでしょう。
通帳とクレジットカードの明細をチェック
支出面では、通帳とクレジットカードの明細を確認し、毎月どのくらいのお金が出ていっているのか、いざというときに何を止めなければならないかを把握しておきましょう。
とくに意識したいのが、毎月定額で支払っているようなもの。動画などのサブスク系サービスを始め、サプリメントや化粧品などの定期購入品、無料期間が過ぎても解約せず、月額費用を払っていることに気が付いていない出前系のサービスなどが考えられます。クレジットカードの明細の確認に加え、口座引き落としに設定していることもあるため、銀行口座も記帳やアプリで併せてチェックしましょう。
また、クレジットカードの明細を見る際には、支払いが分割払いになっていないか、またリボ払いに設定されていないかなども確認することをおすすめします。
親の収入や支出をまとめておくことのメリット
親の収入や支出をまとめるのは一定の労力がかかるため、できればやりたくない、と思う人も多いでしょう。しかし、その労力をかけてでも、早いうちに収入と支出の整理をすることで、もしもの時にも慌てずに済みます。また、親が収入や資産を知られたくないと拒否するかもしれません。
その場合は、銀行口座や証券口座、契約しているクレジットカード、保険会社といった企業名だけでもノートなどに記入して保管しておいてもらいましょう。
お金の流れを知っておかないと困るケースがある
収入と支出の整理をしておくべき理由の1つが、お金の流れを知っておかないと困るケースがあることです。例えば、親が元気なうちは問題がなくても、病気や介護が必要になった場合に今の収入やこれまでの蓄え、支出状況で問題なく暮らせるでしょうか。
いざお金が必要なときにお金がないと困りますし、あらかじめ整理をしておけば、保険など、いざというときに使えるお金が出てくるかもしれません。転ばぬ先の杖として対応しておくことで、心配事も減りますし、いざというときに焦らずにすみます。
いつか自分が代理になってやらなければならない可能性がある
もう1つの理由が、親が亡くなった後、相続人としてまた、もう一人の親の代理として手続きをしなければならないケースがあります。親の名義のものは名義変更などをしなければなりませんが、自分のことでないと、なかなか情報が集まらず、どう対応すればいいかわからないということが多くあります。親が元気なうちにまとめておくことで、かかる労力を大きく減らすことができるでしょう。
また、不動産を相続した際は、3年以内に「相続登記」をしておかないと、10万円以下の過料が科される場合があります。そのような不要な出費がないように、やるべきことがどれだけあるか、なるべく親に確認し、把握しておくことが大切です。ただあまり強引に聞き出そうとすると、かえって頑なになる場合がありますので、タイミングなどに気を付ける必要もあるでしょう。