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連載

兄がボケました~認知症と介護と老後と「 第14回 術後の痛み」

 長年認知症の兄のサポート・介護を続けてきたライターのツガエマナミコさんは、兄が昨年介護施設に入所した後に発症した歯痛がきっかけで、インプラントを入れることを決意、先日、その手術が行われました。少々ハプニングはあったものの無事に乗り切った術後の容態を記してくれました。

 * * *

歯科医院と美容クリニック

 毎週木曜の朝10時から始まる朝市で、お隣の大先輩が小松菜を手に「これは、ほうれん草かしら?」と独り言のようにつぶやいたので、わたくしもこっそり「いや、あっちがほうれん草で、これは小松菜だと思いますけど」とつぶやき返してみましたら、別サイドの大先輩も「何かしらこれ。ほうれん草よね」とおっしゃるので、世の中の野菜の認識はそんなものかと少々がっかりいたしました。確かに小松菜にしては全体に小ぶりで茎の部分が短めでございました。とはいえ、百戦錬磨の先輩主婦の方ならば、一瞬で区別していただきたかった。「これじゃ、若者がイワシとアジを区別できないのも当たり前か」と嘆いてしまったツガエでございます。

 さて、インプラント手術の続きをお話いたしましょう。

 90分間の手術を終え、会計で渋沢栄一さま43人分(税込)をお支払いいたしました。もちろんツガエはニコニコ現金払いでございます。朝、銀行から下ろしたばかりの札束が、あっけなく会計機に吸い込まれていくのを眺めながら、「まぁ、無事に済んだからよかったと思おう」と自分を納得させておりました。

 翌日は消毒、1週間後は抜糸とのことで予約を取って病院を後にいたしました。最後に麻酔注射をしていただいたので、ほとんど痛みなく徒歩で帰宅。

 その後パソコンのメールチェックなどをしていると遠くの方からタッタッタッタッ…と激痛の足音が近づいてくるのを察知いたしました。

 歯茎をざっくり切って、顎の骨に直径7ミリの太ネジをガリガリねじ込んだのでございますから、麻酔が切れれば激痛であることは想像に難くありません。

 そろそろ痛み止め(処方薬)を飲まなくちゃ、と思ってふと空腹であることに気づき、おもむろにお豆腐をスプーンで食べ始めました。でもゆっくりにしか食べられないので、食べている間に激痛の波動が急激に拡大していき、「これは大変」とお豆腐をそこそこに慌てて痛み止めを飲み込んだのでございます。

 ズキンズキンズキンズキンズキンズキンズキン……

 気づくと「痛い!」としか考えられないくらい、脳が痛みに支配されておりました。指で頭全体を圧しながら、ただひたすらに「痛み止め、早く効いてくれー!」と紙に書きなぐっておりました。

 祈ること30分、痛みがカクンと局所的な痛みに変化し、1時間もすると激痛がわたくしの元からスーッと走り去っていくのがわかりました。

 ありがとう!痛み止め‼いや、痛み止めさま~! やはり市販のものとは違うのでしょうか。あんな激痛を1時間で制圧するとはたいしたものでございます。

 そこからおかゆを食べ、抗生物質を飲み、夜は熟睡。5~6時間で効果が切れて痛くなるかも……と思っておりましたが、翌朝目が覚めても意外なくらいに痛くない。

 もちろん縫った部分はブヨブヨですし、違和感程度の痛みはございます。でも、あんな大工事をしても翌朝には痛み止めなしで過ごせるのかと、人体の不思議を体験いたしました。

 3日間は抗生物質を飲み、1週間後は抜糸の予定。今は更地に杭が刺さっている状態で、人工歯をかぶせるのは3か月ほど先になるそうです。その間にほかの歯の治療もあるので、しばらくは歯科通いでございます。

 そういえば「歯科医院の廃業が増加している」というテレビ番組の特集の中で、最近は、ほうれい線を消す注射ができる歯科医院があると聞き、あっけにとられました。ぷるぷる肌の強い味方、ヒアルロン酸注入によって口回りのシワを改善するというのです。

 歯科が携われるのは口の周りだけですが、その範囲内であれば美容施術を行っても法的に問題ないそうで、意外にも男性が利用しているとか。美容クリニックには入り難くても歯科医院なら…というわけでございます。

 かつて「絶対儲かる」と言われた歯科医院も、今や生き残りには斬新な発想が必要ということでございましょう。1つのことを極めるだけでは足りず、異色のミックスが進む時代。この先、歯科医院と美容クリニックが、小松菜とほうれん草ほど区別できなくなるなんてことがあるかもしれませんよね。

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性61才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現66才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。

イラスト/なとみみわ

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この記事へのみんなのコメント

  • そら

    わあ〜痛いでしょうね。親知らずを抜いた時、斜めに生えていたことにより時間がかかり、その間周りから学生さん達が見学してるという苦痛の時間を思い出しました。会社に戻るも激痛に耐えられず帰宅、ほとんど眠れず朝を迎えました泣泣。友人がインプラント2本したけど、痛くも何ともなかったわぁと。人それぞれですね。兄は先日4本抜歯しました。翌日以降も大した痛みはなかったようでちょっと安心しました。が、これから全部の歯がなくなったらどうなるのでしょう。まあなるようになりますか。お大事になさってくださいね。

  • りんりん

    激痛でしたか・・・でも1時間ほどで収まるとは薬剤効果すごいですね。お口周辺以外はツガエ様、お元気そうで何よりです。私が通っていた歯科にもヒアルロン酸やら何やら、ここはどこと思うような貼り紙(?)が。歯科には検診で3~4カ月に1回通っていましたが悩む前に物価高騰のおり、いつのまにやら足が遠のいてしまいました。値上げには勝てません・・・

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