《脳が萎縮?》「お酒の飲みすぎ」は認知症リスクに 認知症専門医が指南するお酒との上手な付き合い方「1週間にワイングラス4杯」まで
認知症の最大のリスク因子は「年をとること」とされるが、それは年齢を重ねて認知症の状態になっていくのではなく、老化が進むことで認知症の状態になっていくということ。
そして、体の老化を進めてしまう「生活習慣病」になると認知症のリスクが高まってしまう。注意したいことの一つがお酒の飲みすぎだ。
「恐れる」認知症から、「備える」認知症へと変わる「新しい認知症観」について現場を知り尽くす専門医が解説した『早合点認知症』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。
教えてくれた人:内田直樹さん
認知症専門医。医療法人すずらん会たろうクリニック院長、精神科医、医学博士。1978年長崎県南島原市生まれ。2003年琉球大学医学部医学科卒業。2010年より福岡大学医学部精神医学教室講師。福岡大学病院で医局長、外来医長を務めたのち、2015年より現職。福岡市を認知症フレンドリーなまちとする取り組みも行っている。日本老年精神医学会専門医・指導医。日本在宅医療連合学会専門医・指導医。編著に『認知症プライマリケアまるごとガイド』(中央法規)がある。
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「お酒の飲みすぎ」も認知症と大いに関係する
生活習慣病を予防するために、お酒の飲みすぎはNGだと理解している人が多いと思います。そこで、ぜひ認知症の予防のためにもお酒の飲みすぎはNGと、知識をアップデートしていただき、お酒と上手に付き合う生活をしていきましょう。
過度な飲酒の習慣は脳を萎縮させることがわかっていて、アルコール性健忘症候群や認知症につながります。
治療(断酒)できることもあるので「治せる認知症」とも言えるのですが、現実的に治療はとても大変なので、予防を心がけるのが賢明です。
週あたりごく少量の飲酒(アルコール56g未満)なら、認知症の発症を遅らせるという報告もありますが、週にアルコール56g未満というのは、週あたりグラスワイン4杯までということ。1日ではなく1週間にグラス4杯ですから、本当にごく少量が限度です。
それ以上は脳を萎縮させ、健康被害を及ぼすリスクがあると覚えておきましょう。内臓の病気を予防するうえでも、アルコールは女性ならびに高齢男性は20g/日以下、男性は40 g/日以下の摂取にとどめることがのぞましいとされ、週に2日、連続して飲酒しない日をもつことが推奨されています。
ところが、お酒を飲むと眠くなるので、よく寝るために飲酒しているという人がいます。「飲まないと寝られないから、晩酌は欠かせない」として休肝日をもたない人もいます。
しかし、アルコールの睡眠に対する効果は「眠くなること」と、「睡眠の質を悪くすること」なので、アルコールを飲むと眠くはなるものの、睡眠の質が悪化してしまうため、よく寝るために飲酒するというのは本末転倒です。
そして睡眠の質の低下は、疲労やストレスの蓄積をまねき、生活習慣病になるリスクを上げてしまうなど、負の連鎖を起こすこともよくあります。
とくに高齢になるとアルコールの影響は大きくなり、アルコールを代謝する能力は低下するので、飲酒量が増えなくても(減っていても)、アルコールによる健康被害は大きくなることがあります。