介護施設で「災害時情報共有システム」強化へ 震災に備え厚労省が改修方針
介護施設や福祉施設からの被災情報を集約し、必要な支援を適切に届ける仕組みである「災害時情報共有システム」。厚生労働省は2021年9月から運用されているこのシステムを見直し、改修を進める方針を打ち出した。
「災害時情報共有システム」とは?
「災害時情報共有システム」は、災害発生時に施設ごとの被災状況や支援ニーズを収集し、行政や関係機関と共有するもの。この情報をもとに、ライフラインの復旧や物資供給、避難計画の実行など、被災者の安全確保や適切な支援に繋げる狙いがある。
介護施設や福祉施設は日常的に支援を必要とする高齢者や障がいを持つ人が利用しているため、避難誘導が必要なケースでは的確な情報が生命線となる。また、停電や断水が発生すれば、非常用発電機の燃料供給や飲料水の確保が急務。同システムは、そうした災害時の課題を克服する目的がある。
しかし現状では、災害の発生後にシステムが稼働するようになっているため、現場の施設職員は避難誘導や緊急対応に追われる中、運用が滞るケースも少なくない。実際に、2024年1月の能登半島地震でも入力されたケースは少なかった。被災状況の把握が遅れて必要な支援が後手に回る事態を生まないためにも、2023年度から災害を想定して国(厚生労働省)、自治体、介護施設などが同システムを用いた訓練を実施しているが、今回の見直しと改修でさらなる活用を促す方針だ。
いざというときに備える取り組みを
具体的な改善ポイントとして、「平時からの活用」が想定されている。災害時に被災状況などを把握するには、日頃から関係者間の連携体制を構築・強化することが重要。その観点から、「被災状況等の情報収集に係る取りまとめ部局の明確化」「館内関係者間のネットワークの構築や役割分担の整理」「施設情報の登録と更新」「災害時情報共有システムによる被災状況等の入力の周知徹底」を推進する。
「平時」から施設情報を登録し、定期的な更新を行うことで、災害時の入力負担を大幅に軽減。そして施設職員がシステム操作に慣れておくことで、いざという時の運用効率を高め、二次災害・三次災害を防ぐ手立てを整えていく展望だ。今後、現場の負担を最小化しながら正確な被災状況を把握できる仕組みの構築に期待したい。
構成・文/介護ポストセブン編集部