介護事業者の倒産が過去最悪ペース すでに145件、訪問介護事業所が特に厳しい経営環境に
介護事業者の倒産がこれまでにないペースで増加している。9月12日に介護ポストセブンで取り上げた際には8月までに114件の倒産件数だったが、10月末までの倒産件数は145件(11月7日発表の東京商工リサーチ調査)に達し、過去最多だった2022年の記録を上回った。このペースで推移すると倒産件数は年間170件を超えるとみられている。
業種別倒産数からみる、現状の課題
倒産件数の内訳をみると、「訪問介護」が72件と最多で、全体の半数近くを占める。次いで、「通所・短期入所」が48件、「有料老人ホーム」が11件と続く。
件数が一番多い「訪問介護」事業所の倒産理由の一つは、深刻化するヘルパー不足や燃料代などの運営コスト上昇によるものとみられており、すでに2023年の倒産数67件を抜いている。続いて送迎車の燃料代や施設の光熱費といった基本的なコストが軒並み上がっていることが、「通所・短期入所」の事業者を追い詰める形に。また、「有料老人ホーム」も「通所・短期入所」と同様に施設全体の維持費が経営を圧迫していると同時に、施設数の増加による競合過多も倒産の一因と考えられる。
急速な市場拡大の一方、人材確保は困難に
介護保険法が施行されたのは、2000年。施行当初から業界で働く職員も20年以上経つと歳を重ねている一方で、他産業に比べて賃金水準が低く賃上げペースが遅いこと、体力的に厳しそうというイメージが相まってなかなか若い従事者が定着しない業界ゆえ、人員確保が難しいということも今回の結果につながっているのではないだろうか。
今年9月に厚生労働省が公表した「介護給付等実態統計」によると、2023年度の介護費用額累計は11兆5139億2100万円となり、前年度比で2.9%増加。20年間で倍増のペースだ。高齢化を追い風に介護市場は急成長し新規参入が相次いだが、その分人材確保が追いつかず、事業者の淘汰が進み始めていると考えられる。
介護業界に求められる持続可能な改革
倒産の連鎖を防ぎ、介護サービスを持続可能な形で維持するためには、現行の介護制度の改善が必要不可欠。人材不足への対応としては賃金の底上げや労働環境の改善を、物価高騰の影響を軽減するためには助成金や補助金の拡充が必要だろう。また、事業者同士の連携や再編も念頭に入れた、業界全体での改革を考えるタイミングといえるだろう。
構成・文/介護ポストセブン編集部