マイナ保険証で何が便利になる?「医療費控除の申告は簡単になるが高齢者にはハードルも」注意ポイントをFPが解説
マイナンバーカードと保険証が一体化した「マイナ保険証」の導入が開始され、さまざまな手続きがオンライン上でできるようになる。確定申告や医療費控除についても便利になるという。導入方法や注意点について、行政書士でファイナンシャルプランナーの河村修一さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、内外資系の生命保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
マイナ保険証で便利になること
2024年12月からマイナンバーカードと保険証が一体化した「マイナ保険証」の導入が始まっています。マイナ保険証の活用により、高額な医療費を一時的に自己負担したり、役所で限度額適用認定証の書類申請手続きをしたりする必要がなくなります。
また、年金生活などの高齢者の中には、確定申告や医療費控除の申告を行うかたも多いと思います。マイナ保険証を活用することで、医療費の記録が参照でき、オンライン上で申告もできるようになります。メリットやデメリットについて解説していきます。
※マイナポータル/マイナンバーカードが健康保険証等として利用できます
https://myna.go.jp/html/hokenshoriyou_top.html?20241220163617
医療費控除とは
まず、医療費控除について改めて確認しておきましょう。
医療費控除とは、所得控除の一つで、病気やけがなどで医療費を支払った場合、その支払った医療費が一定額を超えたときに、税負担(所得税・住民税)が軽減できる制度です。
医療費控除額は、医療費から保険金などで補てんされる金額(入院給付金や高額療養費など)を差し引き、そこから「総所得金額等の5%」と「10万円」のどちらか少ない方を控除して計算し、上限額は200万円になります。
医療費控除を受けるためは、必ず確定申告が必要になります。
従来のやり方では、医療費などの領収書をもとに「医療費控除の明細書【内訳書】」を作成し、確定申告書に添付する必要がありました。なお、医療費の領収書は、確定申告期限等から5年間、自宅等で保管する必要があります。
これらの作業が、マイナ保険証を活用することで手続きが簡単になります。何が便利になるのか、以下で解説します。
※国税庁/医療費控除を受けられる方へ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/pdf/008.pdf
「マイナポータル連携」で医療費の通知を自動取得できる
マイナンバーカードを持っている、またはマイナンバーカードを既にマイナ保険証として活用している場合、政府が運用するオンラインサイト「マイナポータル」を通じて、行政手続きや自分の情報の確認ができるようになります。
さらに、マイナポータルと国税庁の確定申告(e-Tax)を連携させる「マイナポータル連携」を使うことで、確定申告や医療費控除に必要な情報を取得でき、申告書にも自動で情報が入力されるようになります。
マイナポータル連携よる確定申告の流れ
Step1 マイナポータルにログイン後トップページから、確定申告メニューを選択する
Step2 確定申告の事前準備をはじめる
Step3 取得したい証明書等を選択する
Step4 連携状況リストで外部サイトの連携状態を確認する
Step5 証明書等発行サイトと連携する
Step6 e-Taxで確定申告をはじめる
■やり方はこちらをチェック
マイナポータル/確定申告の事前準備
https://img.myna.go.jp/manual/03-04/0186.html
※国税庁/マイナポータルと連携した所得税確定申告手続
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/mnp_junbi/kakutei.htm
なお、医療費通知情報は、令和3年9月診療分から確認でき、毎月11日には前々月診療分が更新されています。1年間分の医療費通知情報は、原則2月9日に、申告年分の1月から12月分までの情報を一括取得できます。
今年の確定申告の期限は、2025年2月17日(月)から2025年3月17日(月)まで。過去5年分まで遡って申告することができるので、これを機に確認してみるといいでしょう。
※マイナポータル/医療費通知情報の更新日について教えてください
https://faq.myna.go.jp/faq/show/4914?category_id=18&site_domain=default
マイナ保険証による医療費控除の注意点
マイナポータル連携により、確定申告の医療費控除の手間は省けますが、留意点として次のようなものがあります。
すべての医療費を網羅していない
医療費通知情報の取得対象は、医療機関等で受診した場合であり、ドラックストアで購入した薬の費用は対象外です。また、医療費控除の対象となる通院の際の交通費や入院時の食事代なども取得対象にはなりません。取得した情報に、自分で付け加えて入力する必要があります。
※マイナポータル/マイナポータルの医療費通知情報に含まれない費用は、どのようなものがありますか。
https://faq.myna.go.jp/faq/show/4921?category_id=18&site_domain=default
家族が行う場合は代理人の設定が必要
医療費控除は、納税者が、扶養に関係なく生計を一にする親族のために医療費を支払った場合、家族分まとめて医療費控除の適用を受けることができますが、事前にマイナポータルで代理人の設定を行う必要があります。
また、家族の方もマイナンバーカードを取得している必要があります。
※国税庁/No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
領収書の保管(5年)は引き続き必要
医療費通知情報をマイナポータルのWEB画面またはPDFを印刷・ダウンロードしたものは原本ではないため、医療費の領収書は5年間保存する必要があります。
※国税庁/No.1119医療費控除に関する手続について(Q14)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1119_qa.htm#q14
マイナ保険証と医療費控除について【まとめ】
マイナポータル連携を利用することで、医療費を集計する手間が省け、確定申告の医療費控除の手間が省けます。
一方で、これらの作業は、インターネットや操作に不慣れな高齢者にとっては簡単なことではないかもしれません。マイナ保険証の運用もそうですが、介護が必要なかたや、高齢者にとっては、活用が難しいケースもあるでしょう。
しかしながら、高齢になるほど医療費もかさむため、医療費控除が必要なかたも増えているのも事実。国税庁によると、令和5年分の医療費控除の適用者数は、約785.1万人と令和4年分に比べて約28.2万人増加しています。
※国税庁/令和5年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について
https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0024005-100.pdf
また、マイナポータル連携を利用して控除証明書等を取得した人は、導入されてから毎年増加していて、令和5年分では190.9万人と令和4年分に比べて59.2万人増えています。
こうしたことから、高齢者にも徐々に活用するかたが増えてくるとも考えられます。
※国税庁/令和5年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について
https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0024005-100.pdf
マイナンバーカードの取得やマイナ保険証の利用については、任意であり義務ではありませんが、確定申告時の医療費控除が便利になりますので、一度検討してみてはいかがでしょう。詳しくは、国税庁やマイナンバー総合フリーダイヤル等の公的機関をチェックしてみてください。
■国税庁/確定申告の情報
https://www.nta.go.jp
e-Tax・作成コーナーヘルプデスク 電話番号 0570-01-5901
マイナンバー総合フリーダイヤル 電話番号 0120-95-0178
※国税庁/国税電子申告・納税システム(e-Tax)をご利用ください
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/campaign/r1/Dec/01.htm