我が家の介護力をチェックしよう プロが教える在宅介護のヒント<4>】
【本人の意思確認】
□介護を受ける人は自分が受ける介護や医療についてどのように考えているか
【介護の担い手】
□ リーダーは誰にするか
□ 兄弟、親族がいれば分担をどうするか具体的に(平日の日中・夜間、平日以外の日中・夜間など)
□ 介護を受ける人との関係も良好で、いざというとき助けてもらえるサポーターが身近にいるか
【介護の資金】
□ 介護に費やせる資金はどれくらいあるか
□ 介護を受ける人の貯蓄や年金を使えるのか
□ 家族が負担する場合は誰が出資するか
【その他】
□ 住宅改修は必要か(各所の段差、手すり、介護を受ける人の居室、トイレなど)
□ 家族の予定(予期)しているライフイベントなど
介護は家庭の外へ、どんな場合も抱え込まない
我が家の介護力を確認して、なかなか家庭での介護は難しいとなっても心配はいりません。介護は、介護を受ける人とご家族、双方のために、家庭から外に出し、いろいろな人が関わる環境を作ることが大切です。それを理解し、家族だけで介護を抱え込まない状況を整えることが、本当の意味で「介護力」を発揮することです。
そうは言ってもご家族の介護を「介護職とはいえ他人に頼むのは抵抗がある」という人は、「家族の役割は精神的に支えること」と考えてみてはどうでしょうか。
専門的な技術をもっている介護職が介護を担った方が、介護を受ける人は「体がラク」ということもあります。介護職は、リハビリテーションや自立している機能の維持を考慮して介助をしています。介護度を上げないためにも、知識と技術のあるプロのケアを受ける方がいいのです。
そして介護を受ける人の精神面を考えても、家族以外の人に介護してもらう方が「気がラク」ということもあります。家族には威厳を保ちたい、なるべく弱みを見せたくないなど、ご本人のプライドを尊重することが、心身の健康を維持する上で大切です。
また、中には家庭に介護職など他人が出入りすることを負担に感じるご家族もあるかもしれません。確かに人が家に来るとなると、それだけで日常生活に何らかの影響があります。そうした場合は、通所サービスを利用するなど工夫して、負担を軽くすることもできます。
僕ら介護の専門職は、ご家族全員が平穏に生活できる方法を探すお手伝いをしますので、どのような場合もまずは相談してみてください。
一方、ご家族は介護サービスを利用する必要を感じているものの、ご本人に自覚がなく、介護認定の申請やサービスを拒むケースも見られます。
そのような場合も、ケアマネジャーなど介護に関わる専門職はさまざまなケースに対応した経験がありますから、ご本人が前向きに介護サービスを利用することができるように配慮できるので、まずは行政の介護相談窓口や地域包括支援センターに相談をして、介護を抱え込まないようにしてください。
介護する家族の健康や生活に配慮する「レスパイトケア」
また、介護を負担に感じるときも、ケアマネジャーなど介護に関わる専門職に相談しましょう。介護をするご家族の健康や生活に配慮することを「レスパイトケア」といい、これも介護職の役割です。
具体的には、ケアプランに「日中通いで介護が受けられる施設・デイサービス」「短期間入所できる施設・ショートステイ」などの利用を加え、介護を受ける人が外出する時間を設けて、ご家族が自分の時間をもてるようにすることや、家族会や介護者カフェなど、介護をする人が集まり、同じ立場の人同士で話すことができる場を紹介することなどができます。
介護が始まり、つらいと感じたときには「レスパイトケアを求めることができる」を知ってください。介護の問題を、ご家族だけで抱え込まないでほしいのです。
次回は、介護をネガティブ体験にしないコツをお伝えします。
森岡真也
株式会社モテギ新宿ケアセンター長、モテギケアプランニング新宿管理者。主任介護支援専門員(ケアマネジャー)・社会福祉士・介護福祉士。大学では文化人類学を専攻していたが、介護のアルバイトと家族介護をきっかけに現職を志した。介護保険利用者の相談援助の傍ら、区内の介護専門職のネットワークづくり、市民を交えた「食支援」活動に奔走する。「高齢になると十分な食事がとれず、栄養障害を起こす人が多いこと、食支援が必要なことを知ってもらいたい」。
取材・文/下平貴子
【この連載のバックナンバー】
ケアマネジャー・森岡真也さん<第1回>「要介護のサインは?」
ケアマネジャー・森岡真也さん<第2回>「ケアマネジャー」って?
ケアマネジャー・森岡直也さん<第3回>「より良いサポートを得るために」
ケアマネジャー・森岡真也さん<第5回>介護をネガティブ体験にしないために