認知症当事者との共生社会に必要なことは?「調査結果から見えてきた公的支援の重要性」<調査レポート>
高齢化が進む中、増え続けている「認知症」。認知症当事者との「共生」は重要な社会課題となっている。認知症になっても自分らしく日常生活を続けていくために、そして、当事者とともに暮らすにはどんなことが必要なのか。「認知症に関する調査」から見えてきたこととは?
認知症当事者との「共生」へ向けて
超高齢化社会へ突入した現代日本では、増え続ける認知症当事者への対応が深刻な課題となっている。誰でもなりうる認知症だからこそ、当事者も周りの人も自分らしく生活できる「共生」社会を作っていくことが重要だ。
そんな中で、通信困窮者と呼ばれる携帯電話未所持が原因で日常生活を送ることが困難になった人々を救うための携帯電話サービス「誰でもスマホ」を提供するアーラリンクは、その利用者(有効回答数587人)を対象に「認知症に関する調査」を実施。認知症を取り巻く現状と、共生のために必要なことは何かを、調査結果を元にレポートしていく。
10人に1人が「一緒に暮らす家族は認知症」と回答
まず最初に、認知症との関わりについて質問を行った。すると「自身が認知症か、軽度の認知機能障害の状態」と回答した人は4.3%という結果に。ただしその年齢を見てみると30代~70代まで幅広いため、単に“物忘れが多い”といった自認も含んでいると想定される。
また、家族等と同居している人(157人)に「一緒に暮らす家族等の認知症(または軽度の認知機能障害)の有無」を尋ねたところ、「いる」と答えた人は11.5%であり、家族等と暮らす人の約10人に1人が認知症当事者と同居していることが判明した。その年代は20代~60代と幅広く、認知症が誰にとっても起こりうる身近な問題であることがうかがえる。
認知症当事者と一緒に暮らし続けるために必要なことは?
続いて、家族等と同居している人(157人)に、「一緒に暮らす家族等」または「自分自身」が認知症になった場合、「一緒に暮らし続けるために一番必要だと思うこと」は何だと思うかをそれぞれ尋ねたところ以下のような結果となった。
【質問】「一緒に暮らす家族等」が認知症(または軽度の認知機能障害)であるか、または今後そうなった場合に、一緒に暮らし続けるために一番必要だと思うことは何ですか?
「一緒に暮らす家族等」が認知症(または軽度の認知機能障害)になった際は、まずは「介護保険サービスや地域包括支援センターといった公的支援」を必要とし、そしてそれを支える立場として「お金」や「認知症の人を支えるための正しい知識、理解」の必要性を感じている人が多いことが判明した。
ただ、公的支援を必要とする人が32.5%に留まっていることは、認知症は家族の問題として相談しづらく抱え込んでいる可能性も考えられる。そのため誰もが認知症への理解を深め、支え合える世の中にしていくことが大切と言えるだろう。
【質問】「あなた自身」が認知症(または軽度の認知機能障害)であるか、または今後そうなった場合に、一緒に暮らし続けるために一番必要だと思うことは何ですか?
一方、「自分自身」が認知症(または軽度の認知機能障害)になった際は、27.3%と約5人に1人が「お金」が一番必要と回答する結果となった。家族と一緒に暮らすためには家族への負担をできるだけかけないよう、お金の準備をしておきたいと考える人が多いようだ。
また、「同居家族の理解、協力」が一番必要と回答した人は13.4%と決して高くはなく、自身の認知症の問題も一人で抱え込んでしまう傾向が見られる。
認知症の相談先は「病院・診療所」がトップ
では、認知症を一人で抱え込まないための相談先についてはどう考えているのだろうか。
自身や家族等が認知症かもしれないと考えた時、最初に相談したいと思う相手、機関を尋ねたところ、59.8%で「病院・診療所」がトップとなった。以下、「行政の窓口(地域包括支援センターなど)」35.6%、「家族・パートナー」25.6%、「ケアマネージャー・介護職員など」16.4%と続く。「友人」や「勤務先の上司・同僚など」は10%以下に留まっていることから、認知症に関する周囲の理解がまだまだ世の中の課題であると言えるだろう。
世の中に、家族に、自分に、認知症に関する様々な思い
次に、自分自身や家族等の認知症について、不安や困っていること、認知症に関連するエピソードなどを自由に回答してもらった。世の中に、家族に、自分に、認知症に関して様々な思いが見られる。
<社会や世の中について>
・知人と同居中の義母が認知症だが「介護」は「家事」のひとつとしての感覚を持つ男性が多いように感じる。家族として実子として、男性も積極的な介護に関われるような社会にしていく必要があると思う。(大阪府、50代、女性)
・世の中、認知症の人を、その家族が隠す傾向がある。これで、行政や周囲の人が社会問題として話し合っても、時間と予算の無駄遣いで終わる。(沖縄県、60代、男性)
<家族のこと>
・祖母が祖父が亡くなってから1週間何もしゃべらなくなり、1週間経った時には認知症の症状が出て、それからいつも笑顔だった祖母が一切笑わなくなり、いつも怒っていた。認知症は人間性をこんなにも変えるのかと思うほど攻撃的になり、最期まで笑顔が見れなくて本当に悲しかった。(神奈川県、40代、女性)
・自宅で約7年間母の介護をしました。認知症もあり、最初はおかしな言動や振る舞いに戸惑い、悲しい思いもしましたが、今では認知症ならではの笑えるエピソードもあり辛いことだけではなかったと思います。(岩手県、50代、男性)
<自分のこと>
・いつ認知症になるか分からないですが、家族には迷惑かけたくないという気持ちです。体力の面、お金の面が一番です。年だから保険に入りたいと思っていてもお金がなく生活が大変でそれができないので不安。(静岡県、60代、女性)
・普段の生活の中ですぐに思い出せないことがある時に認知症に少しずつ近づいて来てるのかなあ。と不安になります。さっきの答えってこれだったと思い出せた時にホッとすると共に思い出せた事に安堵します。(東京都、50代、女性)
「認知症の日」の正解率は57.2%<認知症クイズ>
最後に、認知症に関する知識や理解度を確かめる「認知症クイズ」を実施。全て「〇」が正解となる設問だったが、正解率は8割以上と比較的高めの結果となった。
ただ、2問目の「認知症の日」(9月21日)については57.2%しか正解しておらず、まだ周知が必要な状態と言えるだろう。また、9割の人が正解した5問目の認知症の「行動・心理症状」(BPSD※)は、認知症の人の在宅生活の継続を困難にする大きな要因となるが、環境を整えたり、関わり方の工夫をしたりすることなどにより、症状を軽減できることがある。
クイズの通り、認知症は正しい知識や理解が必要で、適切な対処によって予防や治療、症状軽減の可能性があるもの。認知症は、きちんと知って、向き合っていくことが大切だ。不安や疑問に思うことがあれば、一人で抱え込まず、まずは自身が相談しやすいと感じる相手や機関に打ち明けてみてはいかがだろうか。
【データ】
アーラリンク
https://www.ala-link.co.jp/
【調査概要】
調査方法:全国の「誰でもスマホ」利用者へWEBアンケートフォームを送付
調査対象:全国の「誰でもスマホ」利用者(有効回答数:587人)
調査実施日:2024年9月18日(水)~9月20日(金)
※アーラリンクの発表したプレスリリース(2024年9月30日)を元に記事を作成。
図表/株式会社アーラリンク提供 構成・文/秋山莉菜