体調不良や衰えが急に進行したと感じたら要注意!老化と一線を画す「倍速老化」の要因とは?「免疫がキーワード」と専門家
さらに近年は、老化対策としての「テロメア」や「サーチュイン遺伝子」も広く知られるようになりました。どちらも不老長寿の研究で明らかになった事実です。
まずテロメアは、細胞分裂が安全に行われるよう染色体を保護する役割を持つもので、細胞内の染色体の端にあります。テロメアは細胞分裂のたびに短くなり、限界に達すると、その細胞は分裂できなくなるという、いわば時限装置のような役割が。テロメアから計算すると理論上、人間は120歳くらいまで生きられるとも言われており、この時限装置の発動を防ぐためにテロメアを延長する研究も進められています。
ただし、テロメアは異常を起こす細胞を排除するために設定された人体のしくみですから、これを延ばすとリスクがあるのでは、と私自身は考えています。
サーチュイン遺伝子は、食事から摂るエネルギー量を抑えることで発動し、老化スピードを抑えてくれると言われるものです。アカゲザルで、エネルギー摂取量100%の個体と70%に抑えた個体を比較した実験では、明らかに後者の見た目は若々しいという結果に至り、これは人体でも同様のことが起きると考えられます。
テロメアもサーチュイン遺伝子も「食事や運動といった生活習慣を見直し体内の環境を整えれば老化は遅らせられる」というのが、そのおもな主張です。こうした老化の研究は世界中でさかんに行われており、提出される研究論文の数は増加の一途をたどっています。この十数年、GoogleやAmazonなどが老化制御というカテゴリに数兆円規模の投資を行ってきたことも大きいでしょう。
こうした確度の高い老化対策があることが知られるようになっても生物の老化は自然の摂理ですし、生まれながらの個体差はコントロールできません。また、いくら老化対策が周知されたとしても、その危機を自ら実感し、どうなってしまうかが明瞭にイメージできないかぎり、あるいはイメージできても対策を実践しないかぎり、肥満から始まる糖尿病などの生活習慣病が世界から減ることはないでしょう。
老化を進行させる要因とは
自然な老化でも、疲れやすさ、体の痛みやコリなどを抱えますし、シミやシワといった老化に伴う現象は少しずつ積み重なります。さらに血圧や血糖値の異常などから糖尿病やがん、心疾患などに至るケースもある。ただ、40代に入ったあたりから、こうした症状が崖を転がり落ちるかの勢いで進行してしまうケースが近年、増加しているのです。
その最大の要因が「免疫」です。
免疫については、この30年ほどで体温や腸の機能との関係が幾度となくクローズアップされ、新型コロナウイルス感染症の拡大で大いに認知度を高めました。「ヨーグルトで免疫力アップ」という宣伝を目にしない日はないですし、免疫のサプリメントも多種多様なものが開発されています。
その過程で、免疫が外敵を攻撃し「体を守るもの」というのは誰もが知るところになりましたが、これは免疫のはたらきの一側面でしかありません。これだけでは免疫が担う、すばらしい役割の半分も言い表せていない、と私は考えています。