老人ホームからの高齢者の救急搬送が年間67万人との予測…2040年を見据え介護施設の医療対応力強化へ
厚生労働省は、2040年を目標にした地域医療構想の議論を進めている。2024年8月26日の「新たな地域医療構想等に関する検討会」では、85歳以上の高齢者が急増することを見据え、医療提供体制の基本的な方向性が示された。この構想は、入院医療だけでなく、外来・在宅医療、そして介護との連携を重視したものであり、全体的な医療提供の課題解決を目指すものだ。
地域全体での医療と介護の連携強化が鍵に
焦点となるのは、高齢化と人口減少に伴う医療資源の不足への対策だ。地域ごとに医療機関の役割を分担し、効率的な医療提供体制を整えることが急務となっている。2040年には、85歳以上の高齢者がさらに増加し、医療と介護の需要が飛躍的に高まると予測されている。このため、地域全体での医療と介護の連携強化が重要な課題となっている。
67万人の救急搬送を見据えた対応力強化
2040年には、特別養護老人ホームなどの高齢者施設からの救急搬送件数が、現在の約45万人から67万人に増加すると見込まれている。特に85歳以上の高齢者の救急搬送は、2025年から約1.5倍にも増加することが予測されており、これに対応するためには介護施設の医療対応力の強化が必要となる。介護施設と地域の医療機関が連携し、救急搬送を未然に防ぐための体制を整えることが急務とされている。また、介護施設が退院後のケアを担うことで、在宅医療の負担軽減も期待されている。こうした取り組みにより、高齢者が病状の悪化を防ぎながら、適切な医療を受け続けることが可能となる。
今後の課題と展望
今後の課題は、介護施設の医療対応力を強化し、救急搬送を減少させることだ。高齢者の病状が悪化する前に適切な対応を取れる体制づくりが、介護施設と地域医療機関の連携によって実現することが期待されている。特に、在宅医療の充実と退院後のケアが、救急医療への負担軽減に大きく寄与する。 また、医療機関の経営基盤の強化も急務とされる。
特に地方では、病院の存続自体が困難になっており、医療資源の効率的な活用が求められている。厚労省は、年内に地域医療構想の報告書をまとめ、法改正も視野に入れて、持続可能な医療・介護体制の整備を進めていく方針だ。
構成・文/介護ポストセブン編集部