猫が母になつきません 第413話「しょくじ」
「婆アの飯作りたい。」古い友人がお母様を亡くして数日後にLINEで送ってきた言葉です。彼はお母様と二人暮らしで、ご存命の時は文句ばかり言っていたくせに…。そのあとに「それだけが生きている意味だったのだね(笑)」という言葉が続いていました。(笑)って何よ。でもその気持ちはほんとうによくわかります。食事というのは1年365日、食べない日はないのだから、食べさせる人がいなくなってもその行為は体に染み付いています。そしてそれはいつの間にか大切な生きがいになっているのです。
夢の中の私はどこか知らないところでごはんを食べていて、ふと何日も母にを食事させていないことに気がつきます。「何日食べさせてない?なんで忘れた?」私はめまいがするくらい動揺して、どうしてそんなことになったのか理解しようとするのですが、周りにいるのは知らない人たちばかりで助けを求めることもできないし声も出ません。長い間食事をさせていないのだからきっともう死んでしまった…そう絶望しながらも母のところへ行こうと覚悟したところで目が覚めます。
前述の友人は天ぷらうどんがお母様に最期に作ってあげた食事だったそうで「最期とわかっていたら玉ねぎじゃなくて海老の天ぷらにしたのに」と。うちの母は脳出血で入院してから食事は一度もできず、食いしん坊なのに最期まで何も食べさせてやれなかった。その心残りが私にあんな夢を見させるのかもしれません。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。