倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.44「夫の死後、初めて泣かなかった日」
漫画家の倉田真由美さんの夫で映画プロデューサーの叶井俊太郎さんは、2024年2月16日、すい臓がんにより帰らぬ人となった。お別れの日から半年以上経つが、泣かない日はないという。しかし、そんなある日――。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。
夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。
毎日どこかで泣いてしまう
先日、夫がいなくなって初めて一度も泣かなくてすんだ日がありました。
半年以上経つけど、毎日どこかで夫を思い出して必ず一度は泣いてしまうんですよね。夫の思い出に浸っていると、どうしても涙が出てきます。泣くのはつらいし嫌だけど思い出したくないわけじゃないから、敢えて考えないようにすることはできません。
でも、その日は一日涙を流しませんでした。泣かないまま一日が過ぎていました。
娘が修学旅行でいない日、どうしても羽目を外したくて人数集めて夕方早い時間から女子会を企画しました。会場は近場の日帰り温泉、宴会場も付いていて風呂上がりにそこで乾杯です。
女友だちと一緒に風呂に入り、ハッピーアワーの時間帯に半額になったお酒を飲み、なんてことない会話で盛り上がり、2軒目、3軒目と梯子してあっという間に時間が過ぎて終電を逃していました。
最後は女同士、その内の一人の家でぎゅうぎゅうに雑魚寝です。20代くらいまでならともかく、まさか50代でこんなことをするとは誰も思っていなくて、おかしくて皆でお腹の底から笑いました。
修学旅行みたいで楽しかったけど、そこは年の功、ひとしきり盛り上がると初めての場所でも全員すんなり眠りにつきました。
朝起きて、寝そべったまま昼頃までまたなんてことない話をして、泊めてくれた友だちに礼を言って帰途につきました。
「泣かない日」が実現
「あ、昨日泣いてないな」
と、気がついたのは帰宅してからです。
毎日毎日思い出しては泣いていて、「いつになったら泣かない日が来るのかな」と呆然としたりもしましたが、「朝まで友だちと一緒にいる」という力技で泣く暇を作らず「泣かない日」が実現しました。
夫の話をしてしまったら泣いていたでしょうが、皆気を遣ってかその話題に触れなかったので、しんみりする隙もありませんでした。
ただ、だからといってその日以降泣かなくなるわけでもなく、帰宅後はまたとあるきっかけで大泣きしてしまったし、やっぱり毎日どこかで涙しています。
でも、いつかまた「泣かない日」があって、そんな日が徐々に増えていくのかもしれません。そうなることを望んでいるような、望んでいないような、今はまだ自分でもどちらなのか判然としないままでいます。
倉田真由美さん、夫のすい臓がんが発覚するまでの経緯
夫が黄色くなり始めた――。異変に気がついた倉田さんと夫の叶井さんが、まさかの「すい臓がん」と診断されるまでには、さまざまな経緯をたどることになる。最初は黄疸、そして胃炎と診断されて…。現在、本サイトで連載中の「余命宣告後の日常」以前の話がコミック版で無料公開中だ。
『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』
『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』