女優・秋川リサさん(72才)が語る最良の老人ホーム探し「実際に働いてわかった見学や宿泊体験の重要性」
おひとりさまの老後が珍しくなくなったいま、人生の最終盤をどこで過ごすかは多様化している。いくつもの選択肢から幸せな最期を送れる場所を選びたい。女優の秋川リサさんは、母親のために最良の施設を探しのために大変な思いをしたという。最良の老人ホームに出会うまでの道のりと、施設選びのためのアドバイスを教えてもらった。
教えてくれた人
秋川リサさん/女優・ビーズ作家
1952年東京都出身。15才でデビュー後、CMや映画などで幅広く活躍。2009年に母が認知症と診断されて以降、7年間の在宅介護を経験。現在は介護をテーマにした講演活動を全国で行う。
いい施設かどうかは入ってみないとわからない
その人に合った、いい「最期の場所」はどうしたら見つかるのか。女優でビーズ作家の秋川リサさん(72才)は、この命題と真っ向から向き合ってきた。
「2009年に認知症と診断された母の介護を在宅で2年、施設で5年続けましたが、ここ10~15年で介護や施設を取り巻く状況は格段によくなっていると感じます。介護していた当時は、役所に相談に行っても『大変ですね。頑張ってください』と言われるばかり。
介護保険で入れる特別養護老人ホームもまったく空きがないから仕方なく在宅介護を始めましたが、母は徘徊や失禁、万引きなどを繰り返し、介護する家族は壊れる寸前でした」(秋川さん・以下同)
限界を感じた秋川さんは、役所のパンフレットに掲載された民間の施設への入居を検討するために見学するも、あまりのひどさに愕然とした。
「館内は尿のにおいが蔓延し、ベッドに横たわる入居者はみんな覇気がなく、お風呂は漂白剤のにおいがしました。まさに“姥(うば)捨て山”のような施設で、帰りの電車では涙が出ました」
最良の施設探しのために「実際に働いた」
「いくつか見学するうちに同じ老人ホームでも大きな差があることに驚き、知識をつけるために実際に自分でも施設で働いたこともあります。結局、実家からは少し離れているものの新しくて清潔な施設が見つかり、在宅時は険悪だった親子関係も改善しました」
その後、待機中だった特別養護老人ホームに空きが出た矢先に秋川さんの母は旅立った。
「去年、私自身も脳梗塞で倒れたことによって要支援認定を受け、“せっかくだから”と思って介護保険を使って週に2度、運動中心でジムに通うような内容のデイサービスを利用しています。介護サービスも母を世話していた頃とは様変わりしたことを実感しています。
だからこれから施設に入居しようという人は意識がしっかりしているうちに見学や体験お泊まりをするといいと思います。
利用料が高いところがいいとは限らないし、自分が働いてみてわかりましたが、施設がいくらきれいでも介護士との相性が悪ければ日々の生活はつらいものになる。
究極的には入ってみないとわからない面も少なからずありますが、実際に施設に足を運んで相性を確かめる努力をすることは“終の住処”を探すうえで重要だといえるでしょう」
文/池田道大 取材/小山内麗香、平田淳、伏見友里
※女性セブン2024年8月22日・29日号
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