「老後豊かな国」ランキング1位<アイスランド>に学ぶ高齢者の幸せな暮らし方・介護のヒント
アイスランドの介護事情はどうなのだろうか。
「アイスランドも日本と同様に、介護が必要になった場合には、『介護施設に入居する』『高齢者向けの住宅で暮らす』『在宅で介護サービスを受ける』という、主に3つのケースがあります。
ご本人の意思や身体の状況、介護度や家庭の事情などで選択することになります。
アイスランドは確かに税金が高いのですが、どのケースの場合でも、介護サービスなどは自己負担なしで受けられます」
日本で介護サービスを受けるには、介護度に応じて何割かの自己負担をしなくてはならないが、アイスランドでは事情が異なる。ラグナルさんのご家族の介護費用などについて教えてくれた。
「祖母は2年前に86才で他界するまで、介護施設に入居していましたが、家賃などはかかりますが、施設内で受ける介護サービス費は一切かかりませんでした。
また、祖父(88才)は、日本でいう『サービス付き高齢者向け住宅』で暮らしています。家賃や光熱費の負担はありますが、こちらも介護サービスの自己負担はありません。
サービス付き高齢者向け住宅は、おもに政府やNPOが運営しています。
一方、もうひとりの祖父(88才)は、在宅でひとり暮らしをしていますが、毎日ヘルパーさんが来てくれて、着替えや掃除、入浴など、身の回りの世話をしてくれています。ヘルパーさんは、主に各地域の自治体から派遣され、費用は発生しません」
アイスランドでは、1970年代にはリタイアメントホーム(高齢者向けの施設や住宅)での生活がフォーカスされていたが、この10~15年で「健康なうちはなるべく自宅で過ごそう」という流れになってきているという。
「ご本人が自宅にいたいという思いを尊重するという風潮になってきていますね。健康がキープできているうちはなるべく住み慣れた自宅で暮らすことで、精神的な安定にもつながっていると思います。
祖父のように、自治体から無料でヘルパーや専門スタッフが週1回ほど来て、掃除や薬の管理などしてもらえるので安心です。状況に応じて毎日来てくれるケースもあります」
医師・看護師とケアマネジャー・ヘルパーや家族と連携をとるスタイルの日本と似ているが、介護サービスへの支払いがないことが大きな違いだろう。
「祖母は介護施設に入居していましたが、家族が住む家から近い施設を選びました。いつでも会いに行ける環境を保ち、なるべく家族が離れないようにしていました。
最近では、Webやスマホのアプリを活用し、祖母の情報を家族で共有していたんですよ。介護に関するタスクの管理などもできるので、介護の負担が誰かひとりに集中しないように、家族みんなで協力できるようになりました。
ご家庭にもよると思いますが、我が家では、親・子・孫3世代で食卓を囲む習慣があります。私の祖父はサーモンやラムが好きで、タラの肝油ドリンクをよく飲んでいますよ。
日照時間が少ない時には、ビタミンDやタラの肝油、オメガ脂肪酸やDHAが豊富なオイルも摂っているようです。私はあまり好きではないですけどね(笑い)」
ラグナルさんの祖父のように健康意識が高いシニア世代も多いという。
老後の備えについて国を挙げて支援していること、介護サービスが原則無料で受けられること、高齢者が楽しく安心して暮らせる風土であること――シニアが暮らしやすい国、アイスランドの魅力を知ることができた。
写真提供/プロモートアイスランド社 取材・文・撮影/本上夕貴
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