物価高騰による家計を支援する給付金「80代で年金暮らしの母親は受給できる?」実例相談にFP回答
年金生活者を直撃する物価高騰。食料品や光熱費は上がる一方でも収入は増えない…。そんな現状から物価高騰による支援給付金が実施されている。どんな人が、いくらもらえるのか? 実例相談をもとに、ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、内外資系の生命保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
※記事中では、相談実例をもとに一部設定を変更しています。
物価高騰への対策「物価高騰重点支援給付金」
令和5年11月2日に「デフレ完全脱却のための総合経済対策」が閣議決定されました。対策のひとつとして、物価高騰により家計への影響が大きい低所得者世帯に経済的な負担の軽減を図る目的で「物価高騰重点支援給付金」が実施されています。
自治体によって名称が微妙に異なり、「物価高騰対応重点支援給付金」「物価高騰対策支援給付金」「重点支援地方交付金」などと表記する場合もあります。
これは、「住民税非課税世帯」に、は1世帯当たり7万円(1回限り)、「住民税均等割のみ課税世帯」に1世帯当たり10万円(1回限り)の現金が給付される制度。
すでに、住民税非課税世帯には、令和5年の夏以降に3万円が支給されているので、合計すると10万円が支給されることになっています。
実例相談「80代の母は給付金をもらえる?」
この給付金等について、年金暮らしのお母さまを持つAさんから相談がありました。
相談者のAさんのお母さまは80代で要介護1、ひとり暮らしをされています。年金は、老齢基礎年金収入のみで年額60万円。家計にゆとりがあるわけではないため、近くに暮らしているAさんの妹(次女)が、生活全般の面倒をみており税法上の扶養に入れています。
お母さまは、すでに給付金の3万円をすでに受給されています。その後、給付金の7万円も受給できると思っていたところ、お知らせも振り込みもないため、Aさんが疑問を感じて相談にいらっしゃいました。
この給付金は、いったいどんな受給条件があるのでしょうか。「物価高騰重点支援給付金」について詳しく解説していきましょう。
「物価高騰重点支援給付金」対象者と給付金額
物価高騰重点支援給付金は、「住民税非課税世帯」と「住民税均等割のみ課税世帯」に給付されます。令和4年1月1日から令和4年12月31日までの期間の所得にかかる住民税が対象となり、支給金額は以下の通りです。
■住民税非課税世帯…1世帯当たり7万円(1回限り)
■住民税均等割のみ課税世帯…1世帯当たり10万円(1回限り)
低所得世帯への給付金として、すでに令和5年の夏以降に3万円が支給されています。新たな閣議決定により追加給付として合計10万円が支給されることになりました。給付金の基準日は令和5年12月1日となっています。
母親は住民税非課税世帯に該当する?
「住民税非課税世帯」と「住民税均等割のみ課税世帯」には、どんな要件があるのでしょうか。
まず、住民税は、定額で課税される「均等割」と、前年の所得に応じて課税される「所得割」の2種類から成り立っています。
生活保護受給者や一定の要件を満たす障害もつかたや、ひとり親世帯、合計所得金額が一定以下のかたなどは住民税非課税となります。
また、総所得金額が一定以下で「均等割」では課税されるが、「所得割」は該当しないケースは、「住民税均等割のみ課税世帯」となります。
ただし、所得金額などの要件は、お住いの地域によって異なります。例えば、東京都23区の場合、65才以上で年金収入のみの人の場合、年金収入が155万円(合計所得金額が45万円)以下であれば住民税非課税になります。
Aさんのお母さまは、都内在住のひとり暮らしで、80代。老齢基礎年金収入のみで年額60万円なので住民税非課税世帯にあたります。
※表参考/厚生労働省「生活保護 お住いの地域の級地を確認」 https://www.mhlw.go.jp/content/kyuchi.3010.pdf
自治体によって要件が異なるので注意
Aさんのお母さんは、住民税非課税世帯ですが、なぜ今回の給付金の対象にならなかったのでしょうか。
給付金の要件は、自治体によって要件が異なる場合があり注意が必要です。
Aさんのお母様は、次女の娘さんの税法上の扶養に入っています。お母様がお住まいの自治体では、最初の給付金(3万円)は、扶養に関する要件はありませんでしたが、今回の給付金(7万円)は、住民税非課税世帯であっても、課税されている別世帯の子の税法上の扶養に入っている場合は支給対象外となっていました。
まとめ
物価高騰により家計への影響の大きい「住民税非課税世帯」や「住民税均等割のみ課税世帯」へそれぞれ1回限り7万円、10万円の給付金が支給されます。
なお、令和6年度も同様の給付金が予定されています。新たに住民税非課税世帯や住民税均等割のみ課税世帯になった場合は、給付が受けられます。1回限りの給付なので過去に給付された世帯は対象外になります。
各自治体によって要件や申請期限が異なりますので、詳しくはお住いの自治体に確認してみましょう。
※参考
内閣府「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金の追加」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bukka/dai8/siryou.pdf
内閣府「デフレ完全脱却のための総合経済対策~日本経済の新たなステージにむけて~」
https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2023/20231102_taisaku_gaiyo.pdf
内閣府地方創生推進室「『重点支援地方交付金』の追加について』
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001165348.pdf
内閣官房「定額減税・各種給付の詳細」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/benefit2023/shosai/index.html
●「80代父親の年金や貯金を介護費用に使いたい」娘にちょっとややこしい【法定後見制度】とデメリットをFPが解説