異変を見逃しやすい女性は要注意!脳梗塞を経験した麻木久仁子さんが感じた予兆とは
おおつか医院院長で循環器専門医の大塚亮さんが言う。
「脳梗塞は症状が出た後、すぐに回復することがあります。これは『一過性脳虚血発作』といって、小さい血栓が詰まるなどが原因で軽い脳梗塞になっている状態です。血栓が流れると症状は治まりますが、放置しているといずれは大きな脳梗塞が発症します。小渕元首相も一過性脳虚血発作だった可能性が高い。“話そうと思ったのに話せない”“持っていた物を急に落としてしまう”“歩いていたら急につまずいて転んでしまう”というのは典型的な予兆です」
一時的な症状でも、疲れているからだと安易に考えてはいけない。麻木さんが経験した手足のしびれも、1分くらいで治まったという。
「1日に3、4回くらいしびれが起こっていましたが、仕事をキャンセルしてまで病院に行く必要はないと判断しました。最初に手足のしびれを感じた数日後、さすがに放置するのはよくないなと思い、やっと受診に至りました。大きな血栓ではなかったので、治療でしびれもとれて後遺症もありませんでしたが、医師からは大きな脳梗塞のリスクもあるためすぐに病院に来るべきだと注意を受けました」(麻木さん)
症状が軽いからといって放置すれば大事になる。「低血圧のときも脳梗塞を警戒すべき」と話すのは、室井さんだ。
「高血圧は脳卒中のリスクを上げますが、すでに動脈硬化が進んで血管がボロボロになった人は脳の血流が滞るので低血圧こそ要注意です。つまり、めまいや動悸は脳梗塞の予兆の場合があるのです」(室井さん)
一方、脳卒中は予兆を感じたら一刻を争う事態になる。具体的な症状として平野さんがあげるのは、下の表でまとめた「BE‐FAST」だ。
「このような症状が1つでも思い当たれば、7割が脳卒中だと思ってすぐに救急車を呼んでほしい。『F(顔)』は、口を“い”の形にすると、片側だけ下がるような状態です。『E(目)』に関しては、普段は両目で見ているので、視野が欠けたり見えなくなったりしても気づきにくい。片目を隠してチェックするといいでしょう」
ガンガンする激しい頭痛はくも膜下出血の予兆。
「動脈瘤が破裂しかかっていたり、一部の血管が裂けたりしている可能性があります。頭痛を軽視してはいけません」(大塚さん)
この症状が出たら危険!脳卒中の予兆「BE-FAST」とは?
下記の症状が1つでも出たら、発症時刻を確認してすぐに救急車を呼ぶ。
【B】「Balance」
うまく歩けないなど歩行障害がある。
【E】「Eye」
片目が見えない、視界が欠けるなどの異常が出る。
【F】「Face」
口の形を「い」にしたとき、片側だけ下がる。
【A】「Arm」
両手を「前にならえ」の状態にしたときに、片腕だけ力が入らない。
【S】「Speech」
ろれつが回らない、言葉が出ない、人の話を理解できない。
【T】「Time」
上記の症状が1つでも出たら、発症時刻を確認してすぐに救急車を呼ぶ。
脳梗塞の疑いがあるならすぐに救急車を呼ぶべき
では、実際に異変を感じたらどう対処するのが正解か。麻木さんは運がよかったものの、脳卒中や心筋梗塞の治療は時間との闘いだ。平野さんが言う。
「血栓が詰まった場合、『t-PA療法』という薬で血栓を溶かす治療法があります。しかしこの薬の使用はタイムリミットがあり、脳梗塞なら発症から4時間半以内と決まっている。専門的な治療なので、最初に個人病院にかかれば間に合わなくなってしまう。
BE-FASTの『T』は時間の重要さを表しています。t-PA療法に限らず、早ければ早いほど治療の選択肢があるので、BE-FASTの症状が現れたら迷わず救急車を呼んでください」
とはいえ、救急車を呼んでいいのか迷うときもある。
「胸の痛みが10分ほど続いたら間違いなく呼ぶべき。それでも悩んで判断がつかない場合は『救急安心センター(♯7119)』に電話して、症状を伝えてみてください。適切な指示をもらえます」(渡辺さん)
自身の脳梗塞の経験から救急安心センターの存在を知った麻木さんは、母親が脳梗塞になったときに活用した。
「判断に迷ったので電話して母の症状を説明したところ、脳梗塞の疑いがあるからとすぐに救急車を手配してくれました。いざというときの判断次第で、家族が後悔することもあると思います。素人判断せずにぜひ窓口を頼ってほしい。母も最初はしゃべれなくて、言語にまひが残るかもしれないと不安になりましたが、早く対処できたおかげで後遺症は残りませんでした」(麻木さん)
写真/PIXTA
※女性セブン2024年5月2日号
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