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健康

高血圧予防に知っておきたい!研究調査でわかった【血圧を「上げる」「下げる」行動習慣10選】「自転車通勤は心筋梗塞リスクが↓」

 日本人に多い高血圧は運動不足や不規則な食生活などが引き金となって起きる生活習慣病の1つであり、自覚症状がない場合がほとんどだ。高血圧は放っておくと心筋梗塞、脳梗塞や脳出血などの深刻な合併症につながりかねない。血圧が気になり始めたら、研究結果で効果が見込めると判明した生活習慣や運動法で血圧をうまくコントロールしてみよう!

軽めの有酸素運動が血圧を下げるのに効果的

 日々の運動習慣でも血圧の数値は上下する。大前提として、肥満は高血圧になりやすいことがわかっており、運動の習慣をつけて太りにくい体を作るのは血圧を上げないために重要だ。

「体を動かして汗をかけば、塩分が排出されるので、血圧が下がります。ただし、短い時間で激しく体を動かすことはかえって血圧を上げることになる。130分程度、ウオーキングのような軽めの有酸素運動でしっかり汗をかくのが血圧を下げるには理想です」(群星沖縄臨床研修センター総合診療医の徳田安春さん)

 実際に北陸先端科学技術大学院大学と早稲田大学の研究グループは、歩きやすい環境に身を置くことで血圧が下がったり肥満になりにくくなるという調査を発表している。また、米アラバマ大学の研究でも、70才以上は1500歩多く歩けば健康になると報告された。

 効果をより高めるなら、どこを歩くかも血圧を左右する重要なポイントだ。千葉大学環境健康フィールド科学センターの宮崎良文名誉教授らの調査によると、森の中で歩いたり、寝転がったりするなどアクティビティを行うと、高血圧の人も低血圧の人も血圧が「適正値」に近づくことがわかっている。

「血圧は自律神経と大きく関係していて、緊張状態のときは交感神経が優位になり、血管が収縮して血圧が上がります。反対にリラックスして副交感神経が優位になっているときは、血管が拡張して血圧が下がる。森林浴で感じる心地よい香りの源である『フィトンチッド』は、植物が外の刺激や外敵から守るための防御成分。人間にとってはリラックス効果があるので、血圧を下げるのに有効です」(日本歯科大学内科客員教授の渡辺尚彦さん・以下同)

風呂上がりにエアコンで急に体を冷やすのは危険

 一日の中で、血圧の数値が動くのは食事や運動だけでなく入浴もしかり。お風呂も入り方ひとつで数値を左右する。

「熱いお風呂は交感神経を刺激し血圧を上げ、少しぬるめの3940℃くらいのお湯は副交感神経を優位にし血圧を下げます。冬の入浴時にヒートショックを起こすことが危険視されていますが、原因は温度差です。夏でも、脱衣所で服を脱いだ状態から熱い浴槽に入る、お風呂上がりに扇風機やエアコンで体を急に冷やすことなどで血圧は乱高下します。脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めることにもつながるため充分注意しましょう」

 温度差が血圧を左右するという事実は多くの研究が示しており、慶應義塾大学の調査によれば気温差の激しい地域で高断熱住宅に住んでいない人は心筋梗塞のリスクが25%上がるとされている。

「冬場は冷たい水に手が触れるだけで2030mmHgほど血圧が上がります」

温泉は血圧を下げる効果が期待できる

どこでお湯につかるべきかに関しては、九州大学病院別府病院のこんな調査結果もある。65才以上の別府市民1万人以上にアンケートを取ったところ、高血圧患者の少なさと夜間の温泉利用が関連していることがわかったのだ。

 ナビタスクリニック川崎の内科医の谷本哲也さんが解説する。

「温泉の成分による効果もあるかもしれませんが、非日常でストレス発散できることや、リラックス効果が得られることも理由のひとつだと考えられます。その意味では、温泉に限らず、いつもと違う環境で気分転換したり、友達と出かけたりしてリラックス効果が出ることで、降圧効果も期待できます」

 年を重ねると、睡眠に悩みを持つ人も増えるが、やはりしっかり睡眠時間を確保することが大切。

8時間睡眠の人と45時間睡眠の人を比べると後者の方が明らかに血圧が高くなる。加齢とともに睡眠時間が短くなってくるので、多少短くても日常生活に影響がないなら問題ありません。6時間を目指すくらいがちょうどいいでしょう」(渡辺さん)

<行動・生活編>血圧を「下げる」行動5選

※対象や行動など/リスク/研究・調査内容、原因・理由など

【1】自転車通勤をしている人/心筋梗塞リスクが46%ダウン

 車や公共機関で通勤する人と比較して自転車通勤をする人は心筋梗塞などのリスクが46%低下することが英グラスゴー大学の調査(2017年)によって明らかになった。

【2】115分のウオーキングをする人/心臓病などによる死亡リスクが14%ダウン

 台湾の国家衛生研究院が41万人を対象に行った調査(2011年)による。毎日15分、ウオーキングなど中程度の運動をする人はまったく運動をしない人と比較して心臓病などの死亡リスクが14%低くなった。

【3】1500歩多く歩く/心血管リスクが14%ダウン

 米アラバマ大学の研究(2023年)では、70才以上は13000歩からさらに500歩多く歩くようにした人は心血管リスクが14%下がるという結果に。

【4】夜に温泉に入る人/高血圧の既往が少ない

 65才以上の大分県別府市民1万人以上を対象に温泉の利用状況と既往症に関するアンケートを実施(2023年)した結果。

【5】森林の中を歩く/血圧が「適正値」に近づく

 千葉大学が主催した、森の中を歩いたり寝転がったりする「森林セラピー」の結果(2023年)による。適正値になった血圧は日常生活に戻った後、5日間安定した。

<行動・生活編>血圧を「上げる」行動5選

【1】冬に冷たい水で手を洗う/血圧が2030Hgアップ

 渡辺さんの実験より。急に体を冷やすと血管が収縮する。

【2】BMI30以上の女性/脳卒中リスクが2.16倍アップ 

 国立がん研究センターの調査(2011年)によれば、BMIと脳卒中発症との関連を調べたところ女性はBMI27からリスクが上昇し、30以上になると2324.9のグループと比較して2.16倍まで上昇した。

【3】喫煙者の女性/脳卒中リスクが2倍アップ

 香川大学が2万人以上を11年間追跡調査(2017年)した結果、喫煙者の女性は非喫煙者と比較して2倍脳卒中になりやすいことが明らかになった。

【4】16時間以上座りっぱなしの人循環器系疾患のリスクが1.2倍アップ

 米がん協会の調査(1992年)による。座ったままの時間が3時間未満の人たち、35時間の人たち、6時間の人たちに分けてリサーチしたところ3時間未満の人たちと比較して、6時間以上の集団の脳卒中など循環器系疾患のリスクが1.2倍になった。

【5】寒暖差の激しい地域で高断熱住宅に住んでいない人/心筋梗塞リスクが25%アップ  

 慶應義塾大学理工学部の研究(2018年)によれば、朝晩の冷え込みが激しいにもかかわらず高断熱住宅の普及率が低い地域の住民は心筋梗塞のリスクが25%上昇することが明らかになった。

教えてくれた人

徳田安春さん/群星(むりぶし)沖縄臨床研修センター総合診療医、渡辺尚彦さん/日本歯科大学内科客員教授。『ズボラでもみるみる下がる 測るだけ血圧手帳』著者、谷本哲也さん/ナビタスクリニック川崎内科医

取材・文/戸田梨恵 取材/奥窪優木、小山内麗香、田村菜津季、三好洋輝 写真/PIXTA

女性セブン2023720日号
https://josei7.com/

●血圧を上げる・下げる食事「カレーライスとぶり照り焼き定食、塩分が高いのはどっち?」【専門家監修】

●高血圧でも薬に頼らない生活を送るために!手軽にできる8つの運動習慣「おすすめは肺まわりのストレッチ」

●「血圧が高い」の基準は?医者が教えない本当の正常値「同じ数値でも人によってリスクは違う」(専門家解説)

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