介護が始まりそう…そんな時に頼りにしたい【地域包括支援センター】相談前に確認すべき5つのこと「委託運営の場合は経営母体はどこかチェックする」
介護にまつわる地域の相談窓口として、まず最初に足を運んだほうがいいのが「地域包括支援センター」だ。「介護が始まりそう、始まったばかりの頃には、地域包括支援センターを活用しますが、相談をする前にいくつかチェックしておいたほうがいいことがある」と、社会福祉士の渋澤和世さん。ご自身の介護経験をふまえ、賢い活用法について教えてもらった。
この記事を執筆した専門家
渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)がある。
地域包括支援センターとは何をするところなの?
筆者は40代前半の頃、実母がアルツハイマー型認知症と診断されたことをきっかけに“介護”を意識し始めました。
今でこそ福祉に関する国家資格を取得しコラムを書くようになりましたが、約20年前は介護の素人で右も左もわからない状況でした。
そんな私ですが、地域包括支援センターには過去に2度、相談したことがあります。1回目は遠距離介護が始まる静岡市、2回目は在宅介護が始まる川崎市です。
地域包括支援センターは、介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者を支える総合相談窓口ですが、何をしているのかわからないというかたもいらっしゃるかもしれません。
今回は、地域包括支援センターの役割と、自身の経験から相談前に確認しておいたほうが良いと思った情報について解説していきます。
厚生労働省の「地域包括支援センターについて」※によると、「市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、地域の住民を包括的に支援することを目的とする施設」とされています。
自治体によって、おとしより相談センター、高齢者相談センター、あんしんすこやかセンターと、さまざまな呼び方がありますので、詳しくは各自治体にお問い合わせいただくか、ホームページでご確認ください。
※厚生労働省「地域包括支援センターについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001203027.pdf
地域包括支援センターの役割とは?
地域包括支援センターには4つの役割があります。
【1】総合相談支援業務…住民の各種相談を幅広く受け付けて、制度横断的な支援を実施など
【2】権利擁護業務…成年後見制度の活用促進、高齢者虐待への対応など
【3】介護予防ケアマネジメント業務…要介護リスクのある方々への介護予防ケアプランの作成など
【4】包括的・継続的ケアマネジメント支援業務…地域ケア会議の開催、ケアマネジャーへの指導や相談など
令和5年4月末現在、全国で5,431か所(ブランチ※を含めると7,397か所)あり、日常生活圏域(30分でかけつけられる圏域、概ね中学校区)ごとに設置するものとされています。
※ブランチ/住民の利便を考慮し、地域の住民から相談を受け付け、集約した上で、地域包括支援センターにつなぐための「窓口」機能を持つ場で、地域在宅サービスステーションという事業所名も多く使われている。
地域包括支援センターの利用対象者は、対象地域に住んでいる65才以上の高齢者や高齢者支援の活動に関わっているかたたちですが、高齢者本人の判断力が低下している場合は、家族が代理で利用できます。
遠距離で実家の親について相談したい場合は、支援を必要とするが住んでいる地域の地域包括支援センターに連絡しなくてはなりません。
地域包括支援センターの賢い活用法
介護が始まりそう、始まったばかりの頃に利用することが多い地域包括支援センターですが、以下で気になる点を確認していきましょう。
訪問前に電話をして予約を
まず、相談料金は無料です。利用する際は、直接訪問または電話をしてみましょう。外回りをしていて不在にしている時間もあるため、訪問前には一度電話をして予約をした方が賢明です。
その日の担当職員が相談内容を聞き取り、どんなサポートが必要なのか、アドバイスをしてくれます。その後は必要に応じて自宅訪問や本人との面談を経て必要なサービスの調整に入ります。
相談内容の事例
地域包括支援センターでは、日常の困りごとから、介護保険・財産管理などの複雑な内容まで幅広く相談を受け付けてくれます。
・生活面の相談
「家族の介護だけでは入浴できない 家事や高齢者の介護を手伝って欲しい」
・施設の利用(宿泊・通い)
「高齢の親を短期間施設に預けたい」「認知症の親を昼間だけ施設にお願いしたい」
・住宅の問題
「住宅改修費の助成を受けるには?」「家に手すりを付けて段差をなくしたい」「ベッドや車イスを利用したい」
・活動面の相談
「趣味や生きがいの活動の場を知りたい」 など
地域包括支援センターのメリット・デメリット
地域包括支援センターを賢く利用するにあたり、メリット・デメリットを確認しておきましょう。
メリット
福祉の専門家による支援を無料で受けられるのは大きなメリットです。躊躇せずに最大限に利用してみてほしいと思います。
また、地域包括支援センターには、各自治体の配食サービスや理美容サービス、おむつ代の一部負担など高齢者向けのサービスを紹介したパンフレットが置いてあります。直接出向けない場合は郵送してもらえますので確認してみましょう。
デメリット
前述した厚生労働省の「地域包括支援センターについて」の内容をみると、運営形態は、市町村直営が20%、委託型が80%で委託先は社会福祉法人、医療法人、社会福祉協議会がほとんどを占めています。
市町村から運営委託を受けた社会福祉法人や医療法人の中には、利益を確保するため、同母体が運営する介護保険サービスに利用者を誘導するケースがあります。
地域包括支援センターは、あくまで公平中立な立場が基本なので、問題視されているのですが、いまだにその傾向があるようです。
相談する地域包括支援センターについて基本的なことを知ってから相談に行くことをおすすめします。
利用前に確認しておくべきチェックポイント
地域包括支援センターの利用前に、以下の5つを確認しておきましょう。
□Check1 管轄の地域包括支援センターの運営母体を確認しておく
最初にご自身の住所地を管轄している、地域包括支援センターの運営母体を確認してください。
これは、市町村が管理している地域包括支援センターの一覧から確認できます。パンフレットまたは、【市区町村名 地域包括支援センター】でも検索可能です。
□Check2 運営母体が運営している施設、事業所名を確認しておく
その母体の経営する地域の各種在宅介護のサービス、施設介護のサービスを提供している事業所をインターネットなどで確認してみてください。例えば【社会福祉法人××会】のように名称で検索すれば施設案内などで確認ができます。
□Check3 地域密着型のサービス事業所・施設名を確認しておく
介護を受けたい地域、基本的に住所地になる場合が多いのですが、そこで展開されている地域密着型のサービス事業所をインターネットなどで確認してみてください。
サービスの種類によりますが、地域密着型は月額包括報酬のサービスも多く、柔軟なサービス提供、顔なじみの職員による介護が可能です。
地域包括支援センターでは積極的に紹介をしてくれない場合があるので、自身で確認しておきましょう。
例えば筆者が住んでいる神奈川県であれば、「介護情報サービスかながわ」という自治体が運営しているサイトがあります。そのようなサイトが見つからない場合は、地域包括支援センターで直接確認してみてください。
筆者の知り合いに相談の際、「地域密着型のサービスを活用してみたい」「小規模多機能型居宅介護事業所を紹介してほしい」などと、少し知識のある様子を見せたところ、担当職員の対応が変わったという人もいます。
□Check4 生活をする上で困っていること、介護の不安などを整理しメモにしておく
相談の前に自分が困っている事柄を整理してください。前述した相談内容の一例やパンフレットの各種サービスを参考にすると何に困っているかの気づきとなる場合もあります。
□Check5気になる事業所やサービスをピックアップしておく
今まで調べた中から利用してみたい事業所、活用してみたいサービスがあればチェックしておいてください。相談の際、「このような悩みがあるのだけれど、この事業所が気になるので見学に行きたい」などと具体的な話をすることができます。
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今は元気であっても突然介護が必要になる場合もあります。介護保険認定が非該当なかたであっても“介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)”が利用できることも気に留めておいてください。
介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)とは、要介護認定を受けていなくても地域包括支援センターで、サービスを利用できる制度のこと。自治体によって異なりますが、介護予防教室、高齢者サロン、サークル活動など、さまざまなサービスを活用できます。
地域包括支援センターの情報を事前にリサーチして、上手に活用してほしいと思います。
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