健康

【花粉症対策】花粉症に悩む医師らが実践する“ひと味ちがう”「予防法&対処法」

 暖冬の影響で、今年は例年より早く花粉の飛散が始まるという。そろそろ鼻がムズムズし始めている人もいるのでは? そんな花粉症の対策といえばマスクの着用やうがいなどが定番だが、花粉症に悩む専門家たちはひと味違う対策をしていた! いますぐマネしたい食事や生活習慣など、専門家が実際にやっている予防法・対処法をご紹介します。

教えてくれた人

「ハンドクリームを塗ったり手袋で手を守っています」

内科医・下村暁さん/東京・あきる野市にある草花クリニックで内科、消化器内科を担当。市民のかかりつけ医として、親子二代にわたり地域医療にかかわる。

「鼻がつまったらペットボトルをわきに挟みます」

耳鼻咽喉科医・長友孝文さん/池袋ながとも耳鼻咽喉科院長。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医。耳、鼻、のどの疾患はもちろん、アレルギー性疾患などの診療も行う。

「毎日緑茶を飲んでいます。べにふうき緑茶もおすすめ」

内科医・岡宮裕さん/代官山パークサイドクリニック院長。生活習慣病、アレルギー疾患など、内科全般に従事。予防医学にも尽力し、西洋医学・漢方医学を融合した診療を行う。

「ヨーグルトは浮気しまくり。いろいろな種類を食べています」

管理栄養士・飯野雅美さん/栄養監修、レシピ開発のほか、特定保健指導、パーソナル食事指導なども行う。カモガヤの花粉症に悩まされており、食事療法などを取り入れている。

手袋にペットボトルってどういうこと?

 上記の専門家は全員アレルギー症状のある“花粉症仲間”。彼らに対策を聞いたところ意外な回答が──。たとえば、「手袋をする」という内科医の下村暁さんはその理由をこう解説する。

「花粉は皮膚にも影響を及ぼします。クリームや手袋などで露出している手を覆えば、皮膚のバリア機能を保持でき、花粉皮膚炎を予防できるからです」

 花粉の影響は鼻や目だけではない。手などの皮膚につけば腫れが生じるため、それを防ぐというわけだ。

 一方、耳鼻咽喉科医の長友孝文さんは「鼻がつまったらわきにペットボトルを挟む」という策を提案する。

「わきの下には鼻の中の神経につながる交感神経が通っているため、硬めのペットボトルを挟んで約30秒キープすると鼻の通りがスッキリします」

 内科医の岡宮裕さんや管理栄養士の飯野雅美さんは、緑茶やヨーグルトをすすめてくれたが、その理由や、そのほかの意外な対策とは?

専門家が口をそろえる「まずは食生活」

 4人の専門家が口をそろえるのは「花粉症対策はまず食事から」。そこで、免疫力を上げる食事を中心に16の実践的な対処法を紹介。

●緑茶の常飲で花粉症が楽に

 改めて、岡宮さんが実践している「緑茶を飲む」理由を説明しよう。

「緑茶に含まれるポリフェノールの一種・カテキンには抗酸化作用、抗菌作用などがあり、実際、静岡で勤務していた際、毎日のように飲んでいたところ、アレルギー症状が軽くなりました」(岡宮さん)

 特に、「べにふうき緑茶」をスギ花粉が飛散する1か月以上前から飲用すると、症状が悪化しないという研究結果もある。手に入りづらい場合は緑茶でもいいので続けてみよう。

●腸内環境が花粉症を抑制

 一方、飯野さんが実践する「ヨーグルトの浮気」とはどういうことだろうか。

「花粉症に対抗するには免疫力を上げるのが有効です。免疫細胞の7割は腸に存在するため、腸内環境の改善こそ免疫力向上につながります。そこで私は、毎日ヨーグルトを食べ、乳酸菌を摂取して腸内環境の改善に努めています。腸内細菌の多様性を高めることでアレルギーを発症しにくくなるともいわれているので、1種類に限定しないというわけです」(飯野さん・以下同)

 飯野さんは腸内環境改善のため、みそや納豆などの発酵食品や善玉菌のえさになる食物繊維、オリゴ糖も取り入れている。

「ほかにもおすすめなのが青魚。これらに含まれるEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸は、アレルギーによる炎症を抑える効果が期待されています。料理が面倒なら、さば缶などの缶詰を活用しましょう」

 大切なのは同じものばかり食べず、さまざまな食材をバランスよく摂ることだという。肝に銘じよう。

●人工的な油を減らす

 揚げ物などの“油もの”はアレルギー症状が出ているときは控えた方がいいという。「特に、マーガリンやショートニング、加工油脂などに含まれるトランス脂肪酸はアレルギー症状を悪化させるといわれています。私もこれらが多く使われるジャンクフードなどは、なるべく食べないようにしています」(長友さん)。市販のドレッシングを、体にいい不飽和脂肪酸を含む以下の油に替えるのもおすすめだ。

花粉症対策におすすめの油のリスト

《おすすめの油》
オメガ3 脂肪酸 エゴマ油、アマニ油
オメガ6 脂肪酸 ごま油、グレープシードオイル
オメガ9 脂肪酸 なたね油(キャノーラ油)、オリーブオイル

●マスクは素材とシチュエーションで使い分ける

 花粉の時期にマスクは欠かせない。花粉の侵入を防ぐには不織布が最適だが、状況ごとに使い分けると快適に過ごせる。「呼吸しやすく話しやすいウレタンは職場で。保湿性の高い布製マスクは就寝時がおすすめ」(長友さん)。さらにこんな工夫も。「私は鼻の中に綿棒でワセリンを塗ってからマスクをします。そうすると粘膜が保護されている気がして安心です」(飯野さん)

花粉症対策のマスクの素材とその有効度一覧

●トマトなどを控える

悪い表情をした擬人化トマト、バナナ、キウイ、メロン、アボカド

 野菜や果物には、スギ花粉のアレルゲンと似た構造のたんぱく質を含むものがある。その一例がトマトだ。そのほか、バナナ、メロン、キウイ、アボカドなども該当する。「私の場合、普段は平気なのに、花粉の時期に食べると口の中がかゆくなります。症状がひどいときは食べるのを控えます」(下村さん)

●鼻がつまったら「ツボ押し」

鼻のツボを押す女性のイラスト

「鼻づまりがつらいとき、私は小鼻の端とほお骨の間にあるツボ『迎香(けいこう)』を押します。鼻通りが改善しますよ」(長友さん)。迎香とは、小鼻の横にある少しくぼんだ部分。ここを指の腹で鼻の方向に押す。左右2本の指で鼻を挟むイメージだ。3秒程度押したら指を離し、これを数回繰り返す。1日に何度でも、気になったときに試してみよう。

●飲酒は控える

生ビールジョッキを手にした女性のイラスト

 アルコールは鼻の粘膜の毛細血管を刺激して炎症を悪化させるといわれている。さらに…「アルコールが分解されるときに発生するアセトアルデヒドはヒスタミンを増やす作用があります」(長友さん)。鼻水などの症状が悪化するというわけだ。専門家たちもお酒は控えているという。

●サラダや刺し身など生ものは控える

刺身の盛り合わせと食べるのを我慢する女性とネコのイラスト

 新鮮な生野菜や刺し身などの生ものは、花粉のシーズンは控えた方がよいと、岡宮さんは言う。「刺し身など生のたんぱく質は、アレルギー症状を悪化させる傾向にあります。また生野菜は体を冷やして抵抗力を低下させるため、東洋医学の考え方ではおすすめしていません。どうしても食べたいときは、体調がよい日を選ぶようにしましょう」(岡宮さん)。

●運動をするならプールで

マスクをして走る女性のイラスト

 ウオーキングやランニングを運動習慣としている人は、花粉のせいで外出をためらってつい運動不足になりがち。「この時期はプールでの有酸素運動がおすすめ。髪や服に花粉がつく心配もなく快適ですよ」(下村さん)

●グルテンを控える

米粉パンの袋を手にした女性のイラスト

「麺類やパンの原料である小麦に含まれるたんぱく質・グルテンは、腸壁のバリア機能を壊してアレルギー性の肌荒れを引き起こすことがあります。ですから、私は花粉の時期は控えています」(長友さん)

●保冷剤を鼻の根元にあてる

保冷剤を鼻の根元にあてる女性のイラスト

 鼻がつまったら、布でくるんだ保冷剤を、左右の鼻の根元に交互にあてるといいという。「鼻づまりは鼻の粘膜がむくんで起こります。私はこの方法でむくみを解消。鼻の通りが改善されますよ」(長友さん)

●辛いものは控える

辛いカレーを食べる女性のイラスト

「辛い食べ物は粘膜に刺激を与えるので、症状を悪化させます。辛いものを日常的に食べている人は辛さへの感覚がマヒして、香辛料の使用量が増えがちなので要注意。私は激辛のものは食べません!」(岡宮さん)

●のどうがいだけでなく、鼻うがいも!

 鼻の粘膜に付着した花粉を洗い流すとともに、鼻の通りもよくしてくれる鼻うがい。「0.9%の生理食塩水を使えば、鼻がつんと痛くなることもありませんが、市販のキットを使うのが手軽。シーズン中は私も毎日使っています。洗いやすい形状のボトルを選ぶと便利です」(長友さん)

【おすすめの鼻うがいキット】

 鼻から入れて口から出すタイプの洗浄液。ミントの香り。鼻うがい「ハナノア」500ml1243円/小林製薬

 スライドノズルで携帯にも便利。温度計付き。「ハナクリーンS」洗浄剤10包付4345円/東京鼻科学研究所

 ボトルとキャップは電子レンジで除菌できる。「サイナス・リンス スターターキット」10包1100円/NeilMed

●加湿器は各部屋に

加湿器を近くに置いてパソコンを使う女性

 湿気があると花粉に水分が付着して落下し、空中に舞い上がらない。デスクに小さな加湿器を置くのもおすすめだという。「起床時はくしゃみや鼻水が出やすいので、私は寝室にも加湿器を置いています」(長友さん)。

●たばこは控える。副流煙にも注意

たばこの煙を吹きかけるおじさんと副流煙をよける女性のイラスト

「アレルギーに深くかかわる物質IgEの値は、喫煙者の方が高いんです。皮膚や粘膜の健康に働くビタミンCも喫煙により破壊されるので、私は禁煙を心がけています」(長友さん)。副流煙をよく吸う人も同様なので気をつけて。

●帰宅後は手洗いだけでなく洗顔も

洗顔する女性のイラスト

「花粉の刺激による皮膚炎を防ぐためにも、帰宅後はできればすぐ入浴したいところ。ただし毎回は難しいので、手洗いのときに洗顔も併せて行っています」(下村さん)。肌が不安定な状態なので、洗顔後は保湿を。

●野菜は普段捨てがちな“青い部分”を意識して食べる

大根と長ネギのイラスト

 普段は捨ててしまいがちな野菜の切れ端には意外な栄養素が。「長ねぎの青い部分や大根の葉には、体内でビタミンAに変換されるβカロテンが豊富。抗酸化作用があり、粘膜の健康を保ちます。捨てないで!」(飯野さん)

●かゆみがひどいときはシャワーのみ

涙と鼻水をたらしながら入浴する女性のイラスト

 花粉の刺激により、皮膚炎が生じることも。「入浴は花粉を洗い流すために有効ですが、肌を温めすぎると血管が拡張し、かゆみが悪化することも。症状がひどいときはシャワーですませています」(下村さん)。入浴後はしっかり保湿をし、肌を守って。

取材・文/植木淳子 イラスト/尾代ゆうこ、なとみみわ

※女性セブン2024年2月22日号
https://josei7.com/

●花粉症の重症度チェック「くしゃみの頻度は?」薬の選び方や漢方による対処法を専門家が指南

●すぐできる花粉症対策Q&A「目のかゆみ、水洗いしていい?鼻づまりの対策は?」【医師監修】

●【花粉症の対策】あるあるだけど間違っているものはどれ?正しい対策や最新治療法を専門医が解説

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