目の奥に激しい痛みが!「群発頭痛」軽減する在宅酸素療法が保険適用承認
群発頭痛は脳内の太い血管が拡張し、三叉(さんさ)神経を刺激して片側の目の奥に激しい痛みを生じる。
痛み発作の原因治療として血管の拡張を抑えるトリプタン系薬の注射があるが、頻度が増すと薬物乱用頭痛を引き起こす可能性もある。昨年、100%の酸素の吸入で痛みが大幅に軽減する在宅酸素療法が保険承認された。90%以上の効果があり、患者には朗報だ。
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群発頭痛は40年程前までは男性患者が圧倒的に多かったが、近年では女性患者も増えている。その理由として女性の社会進出増加や喫煙、飲酒習慣などライフスタイルの変化が関係しているのでは、と考えられているが、まだ解明されていない。
群発頭痛は1年のうち、1〜2回、1〜2か月毎日のように頭痛が起こる。その痛みはとても激しく、壁に頭をぶつけて紛らわせたくなる、といわれている。診断基準にも『発作中に興奮した様子』という項目があるほどだ。
今回も埼玉精神神経センター内埼玉国際頭痛センターの坂井文彦センター長に聞いた。
「群発頭痛の発症原因については様々な仮説が立てられましたが、今のところ結論が出ていません。ただ脳内に入った太い血管が何らかの原因で拡張し、近くを通る三叉神経を刺激することで痛みが発生することはわかっています。三叉神経痛と似ていますが、痛む場所が違い、三叉神経痛は片側の頬から顎が痛むのに対し、群発頭痛は片方の目の奥が棒で突かれたような痛み、涙や鼻水、汗を伴います」
痛みのメカニズムを治療する方法としては血管の拡張を抑えるトリプタン系薬が保険承認されている。この薬剤は血管を作動させる物質の放出を抑えることで拡張した血管を収縮させ、炎症を和らげる。
在宅で注射投与をした場合、75%程度の鎮痛効果が確認されている。しかし、何度も投与すると、“薬剤乱用頭痛“”を引き起こすリスクもある。
昨年、痛み抑制効果が90%以上の在宅酸素療法が保険承認された。日本で行なわれた治験では吸入開始から3.5分で効き始め、13分ほどで痛みがなくなるとの結果が出ている。ちなみに市販されている酸素吸入ボンベでは酸素濃度が30%と低く効果はない。
群発頭痛に対する急性期治療としての酸素吸入は、1956年にアメリカのホートン教授が提唱した。その後研究が続き、1980年代には酸素濃度95〜100%の酸素を1分間に7リットル、15分間吸入するガイドラインが策定され、世界に広がっている。
「なぜ酸素吸入が痛みに効果があるのか、わかっていません。群発頭痛は脳内の酸素が不足しているわけではありません。脳への酸素は血液中のヘモグロビンが運びますが、100%酸素を吸入しても、ヘモグロビンの量は増えません。吸入で血液中の酸素の分圧が高まり、直接血管に作用しているのではないか、と考えられています」(坂井センター長)
在宅用高濃度酸素発生装置には酸素濃縮方式と液体酸素方式があり、以前に比べてタンクが小さい。また職場などに置ける携帯用もある。火気に注意は必要だが、常に身近にあって、発作に備えることができることから、患者に精神的安定をもたらせている。
【データ】
高濃度酸素発生装置:『HOT(Home Oxgen Therapy)ハイサンソ(R)7R』
サイズ:高さ71.9センチ、幅39.5センチ、奥行き39.6センチ
1分間に最高7リットルの高濃度酸素を吸入することができる。
※週刊ポスト2019年4月12日号