柴田理恵さんが遠距離介護を選んだ理由「無責任ではない。離れていてもできることはたくさんあります」
女優の柴田理恵さんは、富山に暮らす94才になる母の遠距離介護をしている。仕事を続けながら、片道3時間かけて母の元へ通う介護をすると決めた背景とは。母の介護について綴った新著も話題の柴田さんが、母の遠距離介護で心がけていること、母への想いを明かしてくれた。
教えてくれた人/柴田理恵さん
劇団「ワハハ本舗」の看板女優として、舞台やバラエティ、ドラマと幅広く活躍。近著『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』(祥伝社刊)が話題。
「富山で暮らしたい」という母の願いを叶えたい
女優の柴田理恵さん(64才)は、富山県でひとり暮らしをしていた母親の須美子さん(94才)が介護を要する状態になって以来、現在に至るまで6年間「遠距離介護」を続けている。
遠距離介護とは、離れた場所に暮らしたまま、高齢になった親の日常生活をサポートする介護のことだ。なぜ、柴田さんは遠距離介護を選択したのか。
母親が要介護4に認定された際、柴田さんの頭の中には「仕事を辞めて母の介護に専念しようか」「東京で一緒に住もうか」といった考えが浮かんだそうだ。しかし、すぐに思い直したという。
「私の母は、『子どもと親は別物』という考えだったので、私が仕事を辞めて介護をすることには最初から反対でした。また、母はずっと富山で生活してきましたから、家も、人間関係も、彼女の大切にしているものはすべてあちらにあるんです。それを無理やり奪うことはできないし、やってはいけないことだと思いました」(柴田さん、以下同)
柴田さんは「富山で暮らし続けたい」という母の願いを叶えるため、生活拠点は東京のまま、仕事を続けながら、片道3時間余りかけて遠距離介護を行うことを決めた。特に気をつけたのは、ケアマネジャーなど、介護に携わる人達との密なコミュニケーションだという。
「離れていても私しかできないことがある」
「ケアマネジャーさんやヘルパーさんなどに任せきりにするのではなく、こまめに連絡を取るようにしています。遠く離れていても、できることはいくらでもあります。
プロの介護士のかたですら、『自分の親の介護はしないほうがいい』と断言するくらいです。何も、親を見捨てたわけじゃありません。技術的な部分はプロに任せて、私は私にしかできないことをする。そうすることで、私も母も心も体も健全な関係を築くことができていると思います」
周囲に力を借りながら無理のない関わり方を見つける
日本では、親の介護に専念するために「介護離職」をする人も少なからずいる。
「私の知り合いに、介護離職をして故郷に帰り、親御さんが亡くなられたのを機に東京に戻ってきたかたがいます。前は元気なかたでしたが、介護を終えてからは、どことなく放心状態であるように感じられて。たらればになってしまいますが、介護離職をしていなければ…」
「介護は撤退戦」とも言われ、諦めの連続。長引くことを想定し、疲弊しない距離感を見定め、プロのかたなどとチームを組み、周囲と協力しながら無理のない関わり方を見つけたほうがいいと柴田さんは言う。
「子の幸せを願わない親はいないわけです。子供が全てを投げ打って介護をしてくれるのはもちろんありがたいことでしょうが、それを本当の意味で望む親は、どれだけいるのか。
適度な距離感で、周囲の力を借りながら介護をしていくことで、親も子も穏やかでいられるのではないでしょうか。遠距離介護は、決して無責任な選択ではないんです」
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