デジタル時代の新しい終活 無料で使える「生前整理アプリ」
パソコンやスマートホン、デジタルカメラが普及した現代では、それらに取り込まれたデータや、ブログ、SNSに投稿した文章なども財産のようなもの。これらを自分の死後、どう扱うか?
このほど、元気なうちにデータを「生前整理」するアプリが開発され、無料配信が始まった。どのような機能を持つものなのか見てみよう。
見られたくないデータはどうする?
家族に残しておきたい言葉を書き留めたり、人生の最後の歩みを記録したり、遺産や葬儀の希望を書いておくことでトラブルを回避したりと、さまざまな理由で「終活」を行う人が増えてきた。「エンディングノート」と呼ばれる専用のノートまで登場している。文具店や書店でも売られているものの他、東京都狛江市や神奈川県厚木市など、市民にノートを配布する自治体も出てきた。終活は今や、高齢者にとって常識化しつつあると言ってもいいほどだ。
エンディングノートが「紙」というアナログ媒体の場合、家族が本人の死後に閲覧することは簡単だ。しかし、最近はデジタル機器を使いこなす高齢者が増えてきた。もしエンディングノートがデータになっていた場合、パスワードがかかっていて内容を見られない可能性がある。
遺品整理の専門企業である株式会社ネオプライスは、こうした問題を解決するために「デジタル遺品整理」と名付け、残された電子機器やデータへの対応を行ってきた。同社によると、パソコンでネットバンキングをしたり、株式投資を行ったりする高齢者が増えたことで、死後にデータの確認ができず、家族が困るというケースが増加してきたからという。
このほどサービス提供が開始されたのは、「デジタル遺品整理」を一歩進めた「デジタル生前整理」に対応したアプリ、『編みノート』だ。同社へは家族に迷惑をかけたくないという動機から、生前整理の件数は年々増加。主に不動産や貴金属など、物質として存在するものをどう処分するかという依頼。しかし最近では、デジタルデータも生きているうちに、すべて自分で何とかしたいというニーズも増えてきた。特に心配する人が多いのが、人に見られたくないプライベートなデータの扱いだ。
『編みノート』の特長は、「残したいデータ」と「削除したいデータ」に分けることができること。見られたくないデータは自分の死後、自動で削除されるという。
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パソコン内部で自動消去を開始
『編みノート』には、「預貯金」「不動産と有価証券」「遺品」「葬儀とお墓」「ペット」などを記入できる欄がある。このあたりは紙のエンディングノートと変わりはない。他に類を見ないのは、「自分以外の人が電源を入れたときに、削除したいファイルをいくつでも指定することができる」点だ。
見られたくない文書やメールや画像などのファイルは、「削除したいもの」として、前もって選んでおく。『編みノート』を閲覧するにはパスワードが必要となるが、3回間違えると家族に残したエンディングノートが開かれる一方、パソコンの中では誰にも知られずに、見られたくないデータの自動消去が行われる仕組みとなっている。
このシステムが役に立つのは、自分が死亡したときに限らないだろう。脳卒中などで動けなくなったり重度の認知症になったりしたときのように、パソコン操作ができなくなった場合にも有効だ。
現在使えるOSはウインドウズのみだが、将来的にはMacへの対応も考えているという。最近は、高齢者のスマートホンユーザーも増えてきたが、セキュリティが非常に高いため、同様の機能を搭載することは現状では不可能とのこと。スマートホンには、重要なデータや見られたくないデータは入れておかないほうがよさそうだ。
残された家族が、混乱したり困惑したりするような秘密をパソコンに入れている場合、こうしたアプリは役に立つかもしれない。
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