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田原総一朗さん「最愛の妻亡き後、生きる希望くれた片思いの女性がいる」シニア世代は“トキメキ”が気持ちも体も元気すると精神科医

 人肌恋しい季節が到来。若かりし頃の甘酸っぱい恋の記憶を振り返り、“遠い日の花火”と諦めてしまうのはまだ早い。人生後半戦に突入したいまこそ、日々の生活に彩りを添えてくれるトキメキが必要だ。片思いがもたらす心のトキメキが余生にどんな影響があるのか取材した。

教えてくれた人

和田秀樹さん/精神科医、田原総一朗さん/ジャーナリスト

人生後半戦を迎えた大人こそ「恋のトキメキ」を楽しもう!

「70過ぎとは思えないくらいスラッとしていてスタイルがよく、とってもダンディーなかたなんです」 2年前から社交ダンススクールに通っている神奈川県在住のパート主婦・渡辺篤子さん(仮名・62才)はいま、スクールの先生(72才・既婚)に片思い中だ。

「加齢臭やお線香のにおいしかしない私の周りの同世代の男性とは違って、先生はいつもいいにおいがする(笑い)。社交ダンスなのでレッスン中はかなり体を密着させますが、手の握り方や腰や背中への手の回し方はとってもスマートで紳士的。話をするときも、じっと私の目を見つめて名前で呼んでくれるので、もうドキドキが止まらないですよ。毛穴が引き締まる思いですね」(渡辺さん・以下同)

“彼”に会いたい一心で、渡辺さんは一念発起し、パートに出るようになった。

結婚以来40年、ずっと専業主婦でしたが、レッスン費用を捻出するために働き始めたんです。最初は緊張しましたが、社会に出ていろいろな人たちと触れ合うのが新鮮で楽しくって。何より、自力で稼いだお金で好きな人に会いに行けることがうれしい。余生にこんなに充実した日々があるなんて、思ってもいませんでした

 過去の苦い経験から、誰かを好きになることを躊躇(ちゅうちょ)してしまったり、家事に仕事、介護や子育てに追われて恋する気持ちをいつの間にか忘れてしまったり…韓国ドラマや少女漫画の世界ならいざ知らず、「いまさらリアルな恋なんて…」と思っている人も多いだろう。

 でも、長い人生このまま「恋のトキメキ」と無縁でいるのはもったいない。挨拶を交わすだけでその日一日中ハッピーに過ごせて、“少しでもよく思われたい”と思えれば自分磨きのためにジムやプールに足が向き、パートだって頑張れる。何より健康でいなければ相手に会うことができない―人生の苦楽を経験し、後半戦を迎えた大人こそ、大いに片思いを楽しむべきなのだ。

トキメキで、気持ちと同時に体も若返る

 片思いがもたらす心のトキメキは「脳の活性化を促すいい刺激となる」と語るのは、精神科医の和田秀樹さんだ。

「好きな人ができたことのワクワク感や期待感からは、“幸せホルモン”とも呼ばれる神経伝達物資のセロトニンが分泌され、精神が安定したり脳の回転がよくなったりするなどの効果が得られます。特に、片思いの場合は思いが通じ合っていないからこそ、今度はこんなふうに話しかけてみようとか、こんなふうに接してみようとか、空想が広がりやすく、夫婦やカップル間の会話よりも頭を使う。想定外の返事が返ってくると、それにどう答えるか一生懸命考えるようになります。そうした緊張感とトキメキを伴う会話のキャッチボールは脳を活性化させ、前頭葉が鍛えられるのです。 また、相手に少しでもきれいだと思われたいと化粧や服装に気を配り、身だしなみを整えるようになることも、脳への刺激となり若々しさにつながります」

 片思いによる高揚感は体にもいい影響を及ぼすと和田さんは続ける。

性的なトキメキは女性ホルモンの分泌を促すため、肌つやがよくなります。また、女性ホルモンが増加することで骨粗しょう症の予防にもなる。加えて、片思いの相手に会うために外出する機会が増えれば、運動量もおのずと増え、さらに足腰が鍛えられます。気持ちと同時に、体も若返るのです」

田原総一朗さん「最愛の妻の亡き後生きる自信をくれた」

 妻との死別を2度経験し、「ボツイチ」として生きるジャーナリストの田原総一朗さん(89才)は、いままさに、片思いから生きる元気をもらっているという。お相手の女性は、2人目の妻を亡くした後に再会した幼なじみ(夫と死別)だ。

「最愛の妻を亡くし、生きていく自信を失っていた時期に、幼なじみ同士の食事会があったんです。実は子供の頃、彼女のことが好きだったのですが、当時は恥ずかしくてしゃべることもままならなかった。だけど久しぶりに会った彼女とはものすごく話がはずんだんです。ぼくらは戦争を体験している世代ですからね。同じ時代を生きてきたからこそわかり合えることがある。彼女はぼくが話すことを理解してくれるし、彼女が言うこともぼくはよくわかるんです。“もっと話がしたい”、そう思って、デートに誘いました」(田原さん・以下同)

 以来、現在に至るまで3週間に1度のペースで一緒に食事を楽しんでいる。互いに好意を伝え合うことはないが、だからこそ関係性が続くという。

「お店は一応、ぼくが決めています。ぼくは胃腸が弱くて脂ものが苦手ですから、もっぱら和食ですが、それに彼女がつきあってくれてね。2時間、3時間かけてゆっくり食事をしながら話しても、会話がつきません。昔の思い出話はどんどん出てくるし、政治の話もします。長くいい関係が続いている秘訣は、お互いに本音で話せることと、これ以上関係を進展させようと思っていないこと。“片思い”だからこそ相手を支配しようとか、自分に合わせてほしいとか思うことはなく、お互いの考えを尊重しながら多くを求めようとは思わずにいい距離感を保つことができる。一緒に時間を過ごすだけで満たされるんです

恋のトキメキで体も元気に!片思いが持つ三大健康効果

片思いが持つ効果その1

ワクワクした気持ちや期待感により、神経伝達物質のセロトニンが分泌され、脳が活性化。幸福感も高まる。

片思いが持つ効果その2

性的トキメキが高まり女性ホルモンの分泌が促されることで、肌つやがよくなり、骨粗しょう症の予防にもなる。

片思いが持つ効果その3

片思いの相手とのコミュニケーションによって前頭葉が刺激され、判断力が鍛えられ、意欲が増す。

写真/共同イメージ、PIXTA

※女性セブン2023年11月16日号
https://josei7.com/

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