「寝ながらスマホで目が内側に寄りやすくなる」急性内斜視とは?症状や対策を専門医が解説
暗い部屋で寝ながらスマホを見続ける、うつむいた姿勢で長時スマホを間使い続けている――。「スマホ依存」により、目や首には大きな負担がかかっている。「急性スマホ内斜視」「スマホ首」といった新たな不調を抱えている人が増えているという。スマホの使い方による体への影響や対策について、専門医に解説いただいた。
教えてくれた人
川本晃司さん/眼科医、眼科クリニック・かわもと眼科院長。MBA(経営学修士)を取得し、眼科専門医としての傍ら、医療と認知心理学とを掛け合わせた研究を行う。著書に『スマホ失明』(かんき出版)。
松井孝嘉さん/脳神経外科医、東京脳神経センター理事長。「頸性神経筋症候群」を発見し、「首こり病」と命名。研究を続けている。『「スマホ首」が自律神経を壊す』(祥伝社)など著書30冊以上。
急性スマホ内斜視やスマホ近視の大人が急増
「ここ数年、『急性スマホ内斜視』の患者さんが増えています」
と眼科医の川本晃司さんは警鐘を鳴らす。内斜視とは、左右どちらかの瞳(黒目)、もしくは両方が内側を向いた状態を指す。
「近くを見るとき、瞳は寄り目状態になります。スマホなどを瞳に近い位置で長時間眺めていると、寄り目の状態で固まってしまい、顔から近い部分以外のピントが合わなくなったり、ものが二重に見えたりするようになります。内斜視のなかでも、スマホを長時間見続けることで起こるものを私は『急性スマホ内斜視』と呼んでいます」(川本さん・以下同)
この病気は、一時的に斜視になった状態なので、スマホの利用を控え、近距離でものを見ないようにすれば、症状が軽減することも多い。しかし中には手術となるケースもあるという。
「特に寝ながらスマホを見ると、目が余計に内側に寄りやすくなります。スマホは明るい場所で、目から離し、起き上がった状態で見る癖をつけましょう」
スマホが目に及ぼす悪影響はほかにもある。従来、近視の進行は成長期の終わりで止まると考えられていたが、スマホの長時間利用によって、近視の進行が止まらない大人が増えているのだという。
「近視が進むと眼球が変形し、組織が破れたり、周りの視神経を圧迫したりして、さまざまな目の病気を発症することも。失明に至るケースもあります」
オーストラリアのブライアン・ホールデン視覚研究所は、近視人口が、2050年には約50億人になると推計。これは世界人口の半分だ。しかも、このうちの約9億3800万人が強度近視になると予測されている。つまり、約30年後には、10億人近くが視力を失うリスクにさらされるのだ。
「それを防ぐためには、【1】スマホは20分以上続けて見ない。【2】見た後は6m以上離れたところを20秒眺める。【3】ホットタオルなどを目に当てて休ませるなどのケアを心がけるといいでしょう」
これはいますぐ始めたい!
首を傾け続ける「スマホ首」首の筋肉休めることが大切
人の頭の重さは約5~6kg。ボウリングの球ほどの重さがある。この重さを支えるとなると、首の後ろの筋肉にかなりの負担がかかる。
「うつむく角度により筋肉への負担は変わり、30度で約3倍、45度で約4倍に。この状態を長く続けていると筋肉変性を起こし、最後は筋肉が骨のように硬くなります。これを私は“スマホ首”と呼んでいます」
と、脳神経外科医の松井孝嘉さん。
スマホ首になると、原因不明の疲労や頭痛などが現れるという。
「首の筋肉が硬くなると、臓器や器官などの働きを安静に保つ神経系・副交感神経の働きを悪くし、不調が起こります。慢性疲労症候群、うつ、不眠症、パニック障害などもそのひとつです」(松井さん・以下同)
予防・改善には、首の筋肉を休めることが必須。
「15分に1回、30秒のネックリラクセーションを行い、首に休憩を。緩めることを意識してください」
首を冷やさないことも大切。そしてマッサージには要注意だという。
「首は多くの神経が通るデリケートな場所。強い力でもんだりすると神経を痛めることもあります」
首の後ろの筋肉は、休めることがいちばんの処方箋なのだ。
ネックリラクゼーションの方法
【1】背もたれのあるいすに深く座る(背もたれは肩より下の高さがよい)。両手を頭の後ろにまわして指を組み、頭と首の境目に当てる。
【2】両手に頭の重さをあずけながらゆっくりと後ろに倒し、そのまま30秒キープ。両手で頭を支えながら元に戻す。
取材・文/土田由佳 イラスト/ico.
※女性セブン2023年11月9日号
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