廊下の手すり設置や家具の移動でケガをした…【在宅介護で家のリフォーム】やらない方がいいこと、やっておきたいこと
在宅介護をするうえで、リフォームや部屋の片づけをしなければと考える人は多い。しかし、よかれと思ってやったことが実際は危険度を高めたり、ケガを招いたりすることも。介護経験者の失敗談をもとに、在宅介護でやってはいけない注意ポイントについて、専門家に解説いただいた。
教えてくれた人
・高齢者住環境研究所社長・溝口恵二郎さん
・介護・暮らしジャーナリスト 太田差惠子さん
・南日本ヘルスリサーチラボ代表 森田洋之さん
在宅介護でやってはいけない「早めのリフォーム」
いつかやってくる在宅介護に備え、早めにリフォームを考える人も多い。しかし、高齢者住環境研究所社長の溝口恵二郎さんはこう注意を促す。
「むやみやたらにリフォームするのは無意味だし、何よりもったいない。例えば廊下の手すりは、元気なうちは必要ありません。将来、脳梗塞でまひが残ったとしても、左右どちらの手がまひするのかなんて、そのときになってみないとわからない。下手をすると手すりをつけ直すことになります」
宮城県在住の秋元奈緒さん(仮名・63才)も、手すりで失敗したひとりだ。
「足腰が弱くなってきた70才の夫のために廊下に手すりをつけたところ、夫が手すりにつかまろうとして手を滑らせて転倒。手すりに顔面を打ちつけて血まみれになりました。私自身も手すりのせいで廊下が狭くなり、洗濯物などを持って移動するときに腕をぶつけることが多く、ストレスを感じるようになりました」
その後、秋元さんは業者に相談してコンパクトなものに付け替えたが、その分出費がかさんでしまった。
部屋を片づけると余計に危ない「大きな家具の移動は禁物」
「危ないから」と大きな家具を移動させるのも禁物だ。
「高齢者はたんすなどにつかまって移動していることが多く、慣れた場所にたんすがあればとっさに手を伸ばせるというメリットもある。
また狭い部屋でものが多ければ、転倒しても家具や調度品に肩がぶつかって頭を打たないですみますが、逆にものが減らされた広いリビングではつかまるところがなく、転倒すると頭をぶつけてしまう。下手に片づけたり買い替えたりすると余計に危ないんです」(南日本ヘルスリサーチラボ代表 森田洋之さん)
家具の買い替えで失敗したと話すのは、東京都在住の武田美奈さん(仮名・46才)だ。
「腰が痛くて体を動かすのがしんどいと言っていた父のために、ダイニングにある父用の椅子を回転式のものにしたのに“固定されていないから使いにくい”と言って、結局一度しか座ってくれませんでした。ソファも背面が高い方がもたれやすいだろうと思って買い替えたら、“クッションが柔らかすぎて立ち上がりにくい”と結局、置物です」
家具は移動させたり買い替えるよりも「地震対策を兼ねて固定しておく方が、むしろ安全」だと介護・暮らしジャーナリスト 太田差惠子さんは話す。
一方、最低限やっておきたいリフォームもある。