老人ホーム入居は「月額利用料を払う人」「入居一時金受取人」を決めることが大切
親が実家を処分して老人ホームに入ることを決めた場合、決めておきたいのは、家族のうちで誰がどう入居費用を負担するかだ。
一般的に老人ホームの支払い方法は「入居一時金+月払い」と「完全月払い」の2通りあり、一時金方式は最初にまとまった金額を支払うため、月額の費用が安くなる。
入居一時金1000万円の標準的な施設では、一時金方式では家賃や介護料、食費などを含んで月額20万円ほどだが、完全月払いだと月額40万円ほどまでアップする。
ポイントは“親の資産がどのくらい使えるか”だ。
親が元気なうちに入居先の選定を始める
親の預貯金や実家の売却益から一時金を捻出して月額は年金から出せるのか、完全月払いにして毎月の支払いを子供がサポートしなくてはならないのかで、施設選びは変わってくる。
先の標準的な例では、入居から5年後の時点での支払総額は完全月払いのほうが約200万円多くなり、以降は毎年240万円ずつ差が開いていく。
「“親の長生きリスク”を考えれば、入居一時金方式のほうにメリットがあるわけです。親の資産をどのくらい一時金として使えるか親子で話し合えると良いでしょう」(介護アドバイザー・横井孝治氏)
どの程度の金銭が負担できるかを決めた上で、入居施設を絞っていく。
「大切なのは、なるべく親が元気なうちに施設入居について話し合っておくことです。親が介護状態になってから慌てて施設を選ぶと、比較検討せずに費用が多くかかる施設を選んでしまいがちです。親の預貯金だけでは足りず、子供がかなりの額を払わざるを得ないこともある。地域包括支援センターや、通院先の病院のソーシャルワーカーに事前に相談し、選択肢を教えてもらいましょう。資産額によって身の丈に合った施設を検討すると良いと思います」(介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子氏)
→PTとOTのいる老人ホームを選べ!「理想の高齢者施設」選び方完全チャート
戻ってくる入居一時金は相続財産対象
意外な落とし穴になるのが“子供に戻ってくる、入居一時金”だ。一般的に入居一時金は預り金扱いとなり、入居期間に応じて減額されていく。1000万円支払った入居者が早く亡くなれば、残額が老人ホームとの契約時に定めた「受取人(長男など)」に返金される。
この時、戻ってくる一時金は相続財産となり、遺産分割協議の対象となる(遺言書がない場合)。だが指定された受取人が、戻ってきた一時金を勝手に使いこんでしまい、トラブルになるケースが多発している。
こうしたトラブルを避けるには入居の際、親が一時金の受取人を誰にしたのか、子供たちが全員で把握しておくことが大切だ。
※週刊ポスト2019年3月1日号