ひとり暮らしの認知症高齢者を狙った貴金属買取・自宅改修詐欺が急増!実例から学ぶ対策方法と便利な制度とサービス15選
急速な高齢化に伴い、2025年には約700万人、65才以上の5人に1人が認知症になると予測されている。認知症になると理解力や判断力が低下し、思いもよらない「金銭トラブル」に巻き込まれることもあるので注意が必要だ。今回は、家族が認知症になったときに使える便利な制度やサービスを紹介。認知症の家族を支えるため、お金に困っている人はすぐに活用して欲しい。
教えてくれた人
奥村歩さん/おくむらメモリークリニック院長、加藤博太郎さん/弁護士、太田差惠子さん/介護・暮らしジャーナリスト、岡佳伸さん/社会保険労務士
認知症の高齢者を狙った詐欺被害が増えている
加齢とともに認知機能や判断能力が低下していくことは避けられない。万が一家族が認知症になったとしても、実例を知ることでトラブルを未然に防ぐことが可能だ。
→【参考記事】「高額のお布施を渡した」「隣の家の盆栽を割ってしまった」・・・“認知症とお金”にまつわるトラブル事例に学ぶ財産と命を守る方法を専門家が指南
認知症になった家族が犯罪行為に巻き込まれるきっかけを作ってしまう事例もある。
愛知県の鈴木宏美さん(40才・仮名)の母はひとりで自宅の留守番をしていた際、【1】「不用品を買い取ります」という業者にしてやられた。
「彼らは“ロシアとウクライナの戦争の影響で貴金属が不足しているので高く買い取ります”など言葉巧みに認知症の母をだまし、母がダイヤやプラチナの指輪、純金のネックレスなど100万円相当の貴金属を差し出すと、“これは偽物です”“ここに傷がある”などと難癖をつけ、総額3万円で買い叩きました。警察に届けると、似たような被害が何件かあるとのことでした」(鈴木さん)
たとえ家の中に高価な貴金属がなかったとしても、ひとり暮らしの高齢者宅を訪問し【2】「屋根の瓦がズレていて放置すると雨漏りします」などと指摘して、不要で高額な自宅改修の契約を結ぶ古典的な手口はいまなお減らない。横行する詐欺に対峙するため、軽度の認知症の母が屋根工事の契約を結んだ際、富山県の山口久子さん(48才・仮名)が取った対抗策は参考になる。
「知り合いの大工さんに立ち会ってもらい、“その工事はいらないだろう”と口を挟んでもらったら、相手業者も相当バツが悪かったようで、ほとんど手を付けずに退散しました。当初の工事契約は60万円だったのですが、結果的に費用は2万4000円ですみました」(山口さん)
認知症に詳しいおくむらメモリークリニック院長の奥村歩さんは最近のセールス詐欺の手口は複雑化していると警鐘を鳴らす。
「コロナ禍で高齢者の孤立化が進むなか、ひとり暮らしの認知症患者の家を何度も訪問し、親身に話を聞いて関係を築いた上で【3】水回りの修理などを60万円ほどで契約させるケースが目立ちます。グレーゾーンの詐欺師は横のつながりがあり、一度契約すると“あの家はカモだ”と情報が広まって【4】シロアリ駆除や【5】健康食品、オール電化などを次々と売りつけられる実例があります」
詐欺に詳しい弁護士の加藤博太郎さんも「話し相手を装う詐欺」に警鐘を鳴らす。
「最近多いのが、【6】仮想通貨や暗号資産などを買わせるために認知症の高齢者の話し相手になるケースです。高齢者は仮想通貨のことなどわからなくても“仲よしの話し相手”からの依頼であるがゆえに断りにくかったり、関係を維持したいと思いお金を出してしまったりします」
セミナーや電話による「うまい話」は警戒すべし!
【7】「相続」関連も詐欺の温床だと加藤さんが続ける。
「相続税対策のセミナーを開き、“これだけ税金が取られますよ”と不安をあおって、不動産などを高く買わせる手口です。一方で、夫が死亡して不動産を相続した妻に接近し、“いつまで不動産価格が持つかわかりません”とけしかけて本来2000万円のマンションを300万円くらいで売らされる手口もある。不動産に疎い女性に付け込むやり方で、家族が気づいたときには後の祭りです」
対面のセミナーに加え、電話越しでの「うまい話」にも注意が必要。国民生活センターによると、最近は【8】「老人介護施設の入居権を高値で譲ってほしい」と電話をかけてきて、承諾すると「あなたの名義で申し込むので、一度あなたがお金を振り込む必要がある」と料金を支払わせる詐欺電話が増えている。
また、「コロナ禍で収入が減ったから助けてほしい」と【9】かになど海産物の電話勧誘販売を行い、実際に高値で購入すると粗悪品を送り付けるトラブルも増加しているという。