「医療費」より高額な「介護費」はケアマネジャーへの相談がカギ
人生が100年あるとしたら、50代、60代は折り返し地点。夫の定年を間近に控え、本格的に老後の心配をし始めた人も多いのではないだろうか。今しっかりと対策できるかどうかで老後の暮らしの豊かさは大きく変わる。
「高額医療費制度」と「介護保険制度」を徹底活用
節約は努力できても、いざという時にいくらかかるかわからない医療費や介護費には不安がつきまとう。とはいえ、医療費は公的制度をしっかり活用すれば、そこまで深刻になる必要はない。
医療費は、診察にはじまり治療や検査など多岐にわたるため、数百万円かかるという話も聞くが、これは「医療費総額」の話。実際は、ここから健康保険が適用され、自己負担額は3割になる。さらに、手術などで治療が高額になったとしても、「高額療養費制度」を利用すれば、自己負担額を超えた部分については払い戻される。
自己負担の限度額は年齢や収入で異なるが、70才未満で年収が約370万~約770万円の標準的な人の場合、月8万100~8万7430円で済み、これを超えた分は全額戻ってくる。ただし、保険が適用される治療のみに適用されることは留意しておきたい。
実は、医療費よりも心配なのは介護費用だ。医療費については比較的情報も多く、調べればわかることも多いが、介護費は介護保険制度やサービスが複雑で、状況も人によりケースバイケースで費用も大きく異なる。そのため、実際にかかるお金の実態が掴みにくく、漠然と不安を抱く人が多い。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが話す。
「介護保険制度とは、介護が必要になった高齢者を社会全体で支える仕組みのこと。現金給付ではなく、『公的介護サービス』という現物給付の形で提供するもの。その公的介護サービスは、『在宅介護サービス』、『施設介護サービス』、『地域密着型サービス』の3つがあります。介護費用は、この在宅か施設かで大きく違ってくるのです」(黒田さん・以下同)
在宅介護サービスには、訪問系や通所系などがあり、本人や家族の状況や必要性に応じてサービスを選ぶ。
また、介護される人の要介護度によっても、受けられるサービスや介護費用の支給限度額が変わり、所得によって自己負担の割合も変わる。たとえば、要介護度1の場合、1か月あたりの介護費用の支給限度額は、16万6920円。これに対する自己負担額は、1割負担の1万6692円。
65才以上で年金収入が280万円以上の単身世帯は、2割負担となるため3万3384円、年金収入が340万円以上の単身世帯は3割負担で、5万76円となる。
「この限度額内で利用できるサービスの目安は、週3回の訪問介護、週1回の訪問看護、週2回の通所系サービス、3か月に1週間程度の短期入所などです。これを充分と感じるか足りないと感じるかは個々の状況により変わりますが、介護費を抑えたいなら、本当に必要なサービスを絞り込む意識が大切です」
一方、施設介護サービスは、「特別養護老人ホーム」、「介護老人保健施設」などがあり、介護サービス費以外に生活費などがかかり、原則として、居住費と食費は全額自己負担。所得によって自己負担の軽減措置がある特別養護老人ホームは人気が高い。