「あぁ、ひとりでよかった」と楽しく生きるために必要な「お金」「住まい」「メンタル」を整える方法
介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんも「老後はやっぱりお金が大切です」と言い添える。年金や貯金を精査し、そして新たに仕事を始めることが生活の基盤を作る。
「いまのシニアやその予備軍は専業主婦が多い世代で、年金の受給額が男性よりも少ない。夫に先立たれたおひとりさまの場合は遺族年金がもらえますが、それまでの半分以下になるケースが多く、年金だけに頼って暮らそうとすると生活が厳しくなります。だから夫の死後、いくら年金をもらえるかを把握して、どうやりくりすればいいか想定しておくことがとても大切です。その上でできるだけ早い段階でパートやアルバイトを始めて、少しでも老後資金を増やすことが求められる。シルバーセンターに登録して仕事を探すのも手です」
太田さんの知人の女性は75才で介護主任者に必要な資格を取り、週2回、介護施設で働いているという。
「超高齢社会で、介護施設の仕事は年齢を問わずに求人がある。配膳や事務など肉体的な負担が少ない業務もあり、高齢のスタッフの方が話が合うからと入居者に喜ばれる傾向があります。年をとっても働くことを見越して、介護関係の資格を取ることもおすすめです」(太田さん)
ただし、「保険」には注意したい。
「おひとりさまになっても生命保険や認知症保険の保険料を払い続ける人がいますが、実際に入院したり認知症を発症したときのことを想像してみてほしい。多くの場合、重病や認知症になると本人が申請や受け取りができない状態になってしまう。誰が申請し、誰が使い、誰が管理するかまで考えて、場合によっては保険を解約し、その分のお金を貯金に回した方がいいです」(太田垣さん)
大切なお金の大部分を費やすことになる住居についても一考の余地がある。終の住処コンサルタントの田中聡さんは、特に女性のひとり暮らしの場合はどんな場所に住むかによって生活の質が大きく左右されると話す。
「最期まで暮らしやすいようにお風呂場に手すりをつけたり、詐欺や強盗などあらゆる犯罪が増えているいま、防犯カメラをしっかりつけるなどハード面を充実させることは大前提です。
それと同じくらい重視したいのは、どこにどうやって住むかで自分らしさを演出すること。あらゆる情報やモノが手に入る時代ですから、例えば家具やインテリアを自分好みにすれば、老後をストレスなく過ごせます。映画が趣味ならば寝室に大きなプロジェクターを設置してもいい。そうした“自分らしさの演出”においてお手本となるのが瀬戸内寂聴さん。彼女は大正から昭和初期の家具や建材を集めて、幼少期の思い出をそのまま実現したような小さな終の住処づくりをしていました。単に“老いた体にとって住みやすい場所”を作るのではなく、“自分らしく生きられる場所”を生み出し、そこで最期を迎えられるのは極めて理想的です」
ひとり暮らしの「終の住処」リフォームの注意点
ひとり暮らしの「終の住処」リフォームの注意点
注意点/理由
1階で生活を完結させる/階段を使うと転倒のもと。寝室やリビング、キッチンを1階に固めることで足腰が弱ったときも楽に生活できる。
トイレは引き戸に/介助が必要になったとき、手助けをしてもらいやすい。
ガスコンロをIHに/高齢者が出す火災の原因のほとんどはガスコンロ。早いうちから出火の心配がないIHに。
浴槽に手すりを/転倒防止のためには必須。風呂場の床をすべりづらい素材のものにするなどのリフォーム法もあるが高額なため、転倒防止マットを敷くことで代用を。