猫が母になつきません 第348話「りょこうする_その1」
もう散々でした。母の誕生日に合わせて一泊の旅行を計画していて、人気の旅館を早めに予約していました。その後、亡くなった父親を探したり、お葬式の準備を毎日したりという行動が始まったのでよい気分転換になるかもと思っていましたが、それはとんでもなく甘い考えでした。そもそも旅行に行くということが久しぶりすぎて母は何度も「何しに行くの?」と聞いていました。「旅行だよ」「誰と?」「ふたりで」「なんで?」と旅行に行く前からその意義を問われ続けていたので嫌な予感はしていたのです。私と水入らずの旅行に意義を見出せなかった母は頭の中でいろんなメンバーを旅行に参加させはじめ、その人たちが待っているからとどこへ行っても大急ぎで、やっと席を確保した人気のカフェでもお茶を飲み干すやいなや「さっき田中さんと待ち合わせしたから、外を見てくる!待たせちゃ悪いわ」と外に出ようとします。もう気分転換どころか家の外に出たことで状況はますます悪い方向へ。結局この後どうしても田中さんを探し出さなくては終われない母を納得させるために、おうちにいる田中さんに電話をしなくてはなりませんでした(泣)。悪夢はまだ始まったばかりです。
【関連の回】
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。