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4月から介護保険料アップ!保険料が2倍に上がった70代夫婦の相談実例【FP回答】

 4月から介護保険料が改定され40~64才の保険料が過去最高の6216円(全国平均)になる見込みとなった。65才以上の介護保険料も過去20年で2倍になっている。年々上がり続ける介護保険料だが、自分はいくら払っているのだろうか?仕組みや保険料について、ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに、相談実例をもとに解説してもらった。

65才以上の介護保険料は所得により変わる

 介護保険は、公費(国や都道府県、市区町村の負担金)と40才以上の人が支払っている保険料を財源として運営されています。

 65才以上の第1号被保険者の保険料は、市区町村ごとに3年を1期として策定する介護保険事業計画に基づいて決定され、現在は第8期計画期間(令和3~5年度)になります。

 保険料の算出については、介護サービスにかかる費用や第1号被保険者の人数、所得水準等が基礎となります。そのため、各市区町村によって保険料は異なります。

 令和3年度~令和5年度における各都道府県の第1号被保険者(65才以上)の平均保険料基準額(全国)は6014円、最も高い都道府県は大阪府と沖縄県の6826円、最も低い都道府県は千葉県で5385円となっています。

 保険料は、住民税非課税者かどうか、所得等の段階によって変わります。たくさん所得等があれば保険料が上がるという仕組みです。

 国が示す標準例は9段階(下の表)ですが、市区町村によっては所得段階をより細分化して16段階等にしている自治体もあります。

※参考/厚生労働省「令和5年度 介護納付金の算定について(報告)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001063192.pdf

過去20年で介護保険料は2倍に増加

 過去の介護保険料の推移をみると、第1期(平成12~14年度)は2911円でしたが、第8期(令和3~5年度)には6014円となっています。介護保険制度が始まって以来、20年間で約2倍を超えていることがわかります。

 このように毎年上がり続けている介護保険料ですが、第2号保険料(40~64才)についても同様で、平成12年に2075円だった保険料が、令和5年度は6216円(見込額)となり過去最高となりました。現役世代が収める介護保険料はなんと20年で3倍にも膨れ上がっているわけです。

 介護保険料は所得等に応じて支払う金額が変わる点に注意が必要です。

 実際に以下のようなご相談がありました。

相談事例「介護保険料が2倍になってしまった!」

 江戸川区在住のAさんは、70代後半でまだまで元気で自営業を営んでいます。妻は体調を崩し、要介護状態になっています。

 Aさん夫婦の収入はお互いに老齢基礎年金48万円です。ただし、Aさんは、年金収入の他に事業所得があり、妻は税法上の扶養家族です。

 少しでも妻の介護費用を捻出したいという思いから、Aさんは無理して仕事量を増やし、なんとか収入を増やしました。

 ところが、収入が増えたことでAさんも妻も介護保険料が上昇しました。

「一生懸命働いたのに保険料が上がってしまい困ったものです。どうしてでしょうか?」

 そんな相談を受けました。

 まずは、江戸川区の介護保険料の区分を確認してみましょう。

 江戸川区の介護保険料は、被保険者及び世帯の当該年の住民税課税状況、前年(1月1日から12月31日)の年金収入や所得金額等をもとに、16段階の区分があります。

※参考/江戸川区の介護保険のページ

https://www.kaigo.city.edogawa.tokyo.jp/what/insurance-fee/

 以前、Aさんの事業所得は90万円前後で、住民税非課税者でした。Aさんの介護保険料は、第3段階、妻は第1段階で、夫婦あわせて介護保険料は年間7万800円でした。

 しかし、Aさんの事業所得が110万円に上がったことで、住民税課税者となりました。Aさんの介護保険料は、第6段階、妻は第4段階になります。夫婦あわせると介護保険料は、14万8680円となり、以前に比べて倍以上になっています。

 介護保険料以外にも、高額介護サービス費等の負担上限額が増えることもあります。

 なお、前年中の合計所得金額が101万円以下※であれば「住民税非課税」となります。所得によって保険料の算出方法は細かく変わるため、税理士など専門家に相談するのもひとつの方法です。

※生活保護基準の1級地(東京都23区等)の場合、住民税非課税(均等割、所得割ともにかからない人)。扶養のある者…合計所得金額≦35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)の人数+10万円+21万円(江戸川区ホームページより)。

介護保険料 まとめ

 介護保険料は、今後も高齢化の進展に伴い、介護費用は増大し、増加すると見込まれています。65才以上の介護保険料の算出については、介護サービスにかかる費用や第1号被保険者の人数、所得水準等が基礎となるため、各市区町村によって状況が異なり、保険料が違ってきます。

 ご自身の介護保険料を詳しく知りたい方は、お住まいの市区町村の介護保険課で確認してみてはいかがでしょうか。

※記事中では、相談実例をもとに一部設定を変更しています。

執筆

河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士

河村修一さん

CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、複数の保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/

●シリーズ記事「FPが教える介護で得するお金の話」

●公的介護保険制度の仕組み|介護保険はいつから加入?対象者は?【介護の基礎知識】公的制度<1>

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