猫が母になつきません 第347話「まちがい」
まあ、わからなくもない。私だってスマホと間違えてリモコンをバッグに入れてしまうことがあるし。でも母の間違え方はだんだん激しくなってきて、小さな電子辞書をノートパソコンと間違えてインターネットを見ようとしたり、メールが来ているはずだから見てくれとか…タブレットはあるのにその存在は忘れているようです。使えていた家電が使えなくなるという症状は認知症によくあるらしいのですが、母は「電子レンジどこ?」とその存在を聞いてくることも何度かありました。ずっと変わらず台所のかなり目立つ位置にどんと置いてあるにもかかわらず、です。最初は「え?ない?」とびっくりしていましたが、だんだん慣れてきてすべての間違いにノーリアクションになる私。認知症の人の言動を否定したり叱ることしないようにというのが原則とされていますが、ノーリアクションとは違うような…。母の認知症が進行するにつれ、予想もしない行動に対応しなければならないことが増えて、でもその対応がすべて裏目にでているような気がしてしまう今日この頃。正解はありません。でも間違ったなということだけはしっかり感じる悩ましさ(苦)。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。