日本人は「痛みを我慢しがち」なのはナゼ?「女性は痛みに強い」はホント?【医師解説】
慢性的な頭痛や肩こり、腰痛を「年齢のせい」「これくらいなら仕方ない」と諦めて我慢していないだろうか。痛みは適切に対処しないと、どんどんひどくなることも。ではどうすればいいのか?痛みの適切な対処法を麻酔科専門医・柏木邦友さんに聞いた。
7割以上の人が「痛みを我慢すべき」と考えている
「ほとんどの痛みは、きちんと対処すればとることができます」と言うのは、麻酔科専門医の柏木邦友さん。
「欧米人は痛いと思ったら、すぐに鎮痛剤をのんで痛みを和らげます。彼らには『痛みは悪いもので、すぐに取り除かないといけない』という概念があるんです。でも、日本人は頭痛や生理痛など日頃から悩まされている痛みをつい我慢してしまいますよね。それは、日本人の美徳として『我慢すること』が挙げられるからだと思います」(柏木さん・以下同)
下の意識・実態調査を見てもわかる通り「痛みを我慢する」と考える日本人は7割にも及ぶ。
慢性疼痛を抱えても7割の人が「痛みを我慢」する
Q:痛みがあってもある程度、我慢すべきだと思いますか?(全国平均)
●そう思う…74.3%
●そう思わない…25.7%
日本人は痛みに弱い人種
「ところが、日本人は痛みに弱い人種なんです。痛みを感じる境界となる数値を閾値といい、この値が高ければ痛みを感じにくく、低いと痛みを感じやすくなります。その閾値(いきち)が欧米人に比べて、日本人は低いという研究結果があります。そもそも日本人は感受性が鋭く、痛みにも敏感であるという学説もあるほどです」
欧米では一般的な無痛分娩も、日本では選ぶ人は少ない。
「日本では『痛みに耐えてこそ母性が生まれる』と信じている人が少なくありません。無痛分娩の知識を持っている人も少なく、無痛分娩時に起きた事故ばかりが取り沙汰されて、危険と認識してしまう人も多いため広がらないのが現状です」
しかし、その安全性については国も提言を行っており、厚生労働省の研究班も「無痛分娩とそれ以外の分娩のリスクに大きな違いはない」と発表している。
「医学が進歩し、出産の痛みもとれるのであれば、やらないのはもったいないですよね。これ以外にも医療用麻薬は終末期だけに使うもの、依存性が気になるからと不安がる人がいますが、そんなことはありません。医師が正しく使用すれば、効果は出ますし、依存することもありません。ひどい痛みが続く慢性的な腰痛には、保険適用で医療用麻薬の貼り薬やのみ薬が処方されることもあります」