「お茶」はスゴイ!選び方、いれ方、健康知識…最新情報を徹底紹介
日本茶や紅茶、烏龍茶、プーアル茶などの黒茶は、同じツバキ科の”チャの木”の葉から作られる。含まれる栄養素はほぼ同じだが、品種や製法の違いで風味や栄養価に差が出る。さて、健康に生かす方法は?
さあ、お茶をいれてホッとひと息つきませんか?
生活習慣病を防ぐ3つの成分を含む
チャの木から作るお茶は、特定保健用食品に指定されるものが多くあり、その健康効果に注目が集まっている。中でも、“カテキン”“カフェイン”“テアニン”は、お茶の三大栄養素といわれ、注目を集めていると、農学博士の大森正司さんは言う。
●お茶の三大栄養素
カテキン…風邪、生活習慣病、虫歯などを予防、抗アレルギー作用
テアニン…ストレスの軽減、血圧上昇の抑制
カフェイン…眠気防止、利尿作用、脂肪燃焼効果
「カテキンには、老化を引き起こす活性酸素を除去する抗酸化性があります。抗酸化力によって、悪玉コレステロールや血圧の上昇が抑えられ、高血圧や動脈硬化から派生する心臓病や脳卒中などの病を防ぎます。
また、発がんを抑制する作用もあります。さらに、吸着性もあり、ウイルスやアレルギー物質、口臭などのもとになる菌に密着し、体外への排出をスムーズにするほか、糖質分解酵素にも吸着し、血糖値を上昇させる働きを阻害するので、糖尿病の予防にも期待されています」(大森さん・以下同)
抹茶や煎茶などの緑茶には、カフェインも豊富だ。
「覚醒作用で知られる成分ですが、利尿作用を高めるのでむくみや二日酔いなどにも有効。さらに、カフェインには中性脂肪を分解し、エネルギーとして消費させる作用があることが解明されてきました。血中のカフェイン濃度は、お茶を飲んだ30分後くらいが最も高く、運動する20~30分前に飲めば、効率よく脂肪を燃やせます」
これらのカテキン、カフェインはお茶の苦み、渋みとして感じるもの。80度以上の高温の湯でいれることで、より多く抽出される。温度一つで効果は大きく違うのだ。
癒し効果は、旨み成分のテアニンのおかげ
お茶を飲むとホッとするのは、脳にα波を出させるテアニンというアミノ酸の旨み成分のため。テアニンは前出の2つの成分と異なり、水出しでも充分に抽出できるが、高温でカフェインが多くなると覚醒効果で癒しを感じにくくなる。
「リラックス効果でストレスを和らげるほか、血圧の上昇も抑えます。がん治療の場では、抗がん剤を投与する際にテアニンを併用すると抗腫瘍作用が働くことも報告されています。中でも光を遮って育てる高級茶葉の玉露は、茶葉自体にテアニンが豊富です」
●ビタミン、ミネラル、食物繊維も豊富
チャの木のお茶には、ビタミンA、B群、C、E、P(ルチン)、Uのほか、虫歯予防で知られるフッ素、免疫を高める亜鉛などのミネラル、食物繊維が豊富だ。
「抗酸化作用に優れ、美肌や疲労回復をサポートするビタミンCが豊富なのは”緑茶”。その中でも、光合成が活発な“一番茶”で作る“煎茶”に、最も豊富です。抹茶は、茶葉を粉末状にするため、ビタミンをはじめ成分を丸ごと摂れるお茶。一方、茶の生葉を物理的に変化させた紅茶や烏龍茶、収穫前に太陽光を遮る玉露は、カテキンとビタミンCの含有量は少なめです」
●お茶の世界にも広まる醗酵ブーム
近年、健康茶として人気が高いプーアル茶も、チャの木のお茶。これは、茶葉に微生物をつけ、発酵させたものだ。紅茶や烏龍茶も発酵茶といわれるが、これらは水分を飛ばし、圧力を加えて茶葉中のカテキンを酸化させ、褐色の茶葉にしたもの。微生物は使わないので、厳密には発酵ではない。
「微生物で発酵させたプーアル茶は、納豆などの発酵食と同じで、腸内環境を整え、血糖値や高血圧の改善、脂肪の吸収抑制があるといわれています」
まだ科学的に解明されていないことの多いお茶の世界。だが、体調に合わせて、健康によい飲み方を取り入れよう。
もっと健康効果を引き出すための最新知識
●一度に飲むお茶は多量or少量がよい?
お茶に含まれるカテキンは、人体を構成する成分ではなく、体内で異物として処理される。体内では3~4時間かけて腎臓に達するが、ほとんどが尿として排出されてしまう。
「一気に飲むより、少しずつ飲んで体内にカテキンがとどまる時間を長くした方が、腸管に吸収される量が増え、力を発揮しやすくなります」(大森さん・以下同)
●夜に飲むカフェインのせいで眠れない?
カフェインの摂りすぎは安眠を妨げ、子供の場合は成長を阻害するなどといわれるが、お茶として飲む量は、健康を害するほど多くないので安心してOKだ。
「お茶はリラックス効果のある“テアニン”も含むので、覚醒作用は穏やかです。低カフェインのお茶と、通常のお茶で実験しましたが、睡眠に明確な差は出ませんでした。夜、お茶を飲むと眠れないという人は、暗示にかかっているか、カフェインの利尿作用でトイレの回数が増えて眠りが浅くなっているのかもしれません」
●ペットボトルといれたお茶の違いは?
一般的に飲まれている緑茶は、いれて時間が経つとカテキンの酸化反応で褐色に変色し、おりが発生する。
「そのため、なかなかペットボトル化できなかったのですが、風味が変わらない程度にビタミンCを添加し、抽出液をていねいにろ過することで、ペットボトル化も可能になりました。
また、特定保健用食品のお茶として有名な『ヘルシア緑茶』は、カテキンをさらに添加して高濃度のカテキンを実現しています。一般的にペットボトルのお茶は、お茶自体の濃度が低いのですが、近年は急須でいれたお茶に近い濃さのものも発売されるなど、進化しています」
●今、健康効果で注目のお茶は?
カテキンには花粉症などのアレルギー症状を起こす”ヒスタミン“の分泌を抑え、鼻水など粘膜の炎症反応を落ち着かせる作用がある。緑茶の品種である“べにふうき”は、それらの成分を他の緑茶より多く含み、花粉症対策のお茶としても近年人気が高い。
「“べにふうき”は、飲むだけではなく皮膚に塗ったり、目を洗ったりすると症状が緩和するといわれています。また、窒素ガスの中で緑茶用の茶葉を保存してできた“ギャバロン茶”は、血圧上昇を抑え、リラックス効果の高い”GABA(ギャバ)”が、通常のお茶の20~30倍も含まれ、こちらも注目度大。ネズミを使った実験では、認知機能の衰えを抑えました。人の認知症予防にも期待されています」
●貧血でもカテキンを摂取してOK?
カテキンは鉄分と結びつくと鉄が不溶性になり、血液に吸収されにくくなる。そのため、貧血の人はさらに鉄分を吸収しにくくなると心配する声もあるが――
「ほうれん草やレバーは結合型と呼ばれる鉄分なので、鉄分への影響はありません。ただ、貧血の治療薬はイオン型の鉄分を含むので吸収を妨げてしまいます。もともと鉄分を吸収しにくい体質なので、カテキンが豊富なお茶は避けましょう」
お茶は「飲んで終わり」じゃなかった!
チャの木のお茶をいれると3煎目までは成分も抽出され、おいしさも楽しめる。旨みが凝縮した最後の1滴までつぐことで、2~3煎目も余計な渋みが出ないというが、残った茶殻や出がらしのお茶は用なしに? 答えはNO! 無駄なく使う方法がありました!
●緑茶を噛みながら眠れば虫歯&口臭予防に
お茶のカテキンには、ほかのものと吸着する性質や抗菌効果があると先に紹介したが、それは歯磨きにも活用できる。歯のエナメル質を溶けにくくし、溶け出したミネラルを沈着させ、歯の表面を修復するフッ素もお茶には含まれるからだ。
「就寝前に茶葉を口に含み、5分以上かけて300~500回ほど歯を嚙み合わせると、唾液の効果とお茶の成分で口腔内を清潔に保てます。茶葉が口全体に広がったら、そのまま飲んでも、出してもかまいません」
歯に挟まった茶葉はそのままにして眠れば、就寝中も雑菌の繁殖を防げる。口腔内に残った茶葉は翌朝、歯磨きの際に取り除けばOK。災害時など水が使えない時にもおすすめだ。
●栄養の7~8割が茶殻に残っている
粉茶にお湯を注げば、栄養素はすべて摂取できるが、通常の茶葉の場合、お湯に溶け出す栄養素はわずか2~3割ほど。特に、不溶性の食物繊維などは、そのまま茶葉に残るため、捨てるのはもったいないといえる。また、抗酸化作用を持つβカロテンは、油と合わせると吸収率が上がるので、料理の素材として活用を。
「出がらしの茶殻を食べても過剰摂取にはなりません。食感が苦手な人は、茶殻をミキサーにかけて、粉茶にして使うとよいでしょう」
●紅茶でうがいすれば、風邪知らず
近年、お茶のうがいが風邪予防に効果的といわれている。これは、カテキンが吸着効果で菌に密着し、菌が活動しにくくなるためだ。
昭和大学教授の島村忠勝さんによる臨床実験では、家庭で飲む紅茶を4分の1に希釈した抽出液にインフルエンザウイルスを加えて5秒かくはんしたところ、すぐにウイルスが消えたという報告が。カテキンの一種で特に紅茶に多く含まれる“テアフラビン”の殺菌効果がより高く、即効性があることが判明。風邪やインフルエンザの予防に期待されている。
「紅茶は殺菌効果が高いので、出がらしでも充分に作用は得られます。緑茶なら、1~2煎目をうがいに使うといいでしょう。毎日の習慣にすれば粘膜が潤い、抵抗力がついて感染しにくくなりますよ」
●古い茶殻で部屋の消臭剤に
一度封を切った茶葉は酸化が進み、栄養も風味も落ちる。夏は2週間、冬は1か月で飲み切るのが理想的だ。
「古くなってしまった茶葉は、油っ気のないフライパンで炒ってほうじ茶にすると、再びお茶として楽しめます。炒った時に煙とともに香ばしい香りが広がりますが、これが消臭に強力な効果を発揮。カーテンやソファなど、においが染みつきやすいものにこの煙を近づけると、悪臭のもとになる分子に吸着。においが消えやすくなります」
栄養キープ お茶の保存法
茶葉を保存する際は、微生物の繁殖を防ぐため25℃以下に保ち、酸化を防ぐために空気と光を遮断するのが鉄則。開封せず、しばらく使う予定がなければ冷凍庫で保存を。急激に冷やした方が茶葉の細胞が傷つかず、鮮度も品質もキープできる。開封した茶葉を保存する場合は、袋の空気を抜き、アルミ缶など光を通さないものに入れて冷蔵保存を。
注意すべきは取り出して使う時。急に暖かい部屋に出すと容器が結露し、その状態で茶葉を取り出すと湿気が茶葉に吸収されてしまう。また、冷蔵庫と室内を何度も出し入れすると、その分、劣化してしまうので、密閉袋に小分けにして保存し、使う分だけ冷蔵庫から取り出すのが◎。
お茶をいれる際、冷蔵庫から取り出したら容器に入れたまま30分ほど放置し、結露がなくなってから茶葉を取り出すといい。茶葉は缶に入れて保存するが、さらに袋に小分けにするのが望ましい。
教えてくれた人
●農学博士・大森正司さん/ 大妻女子大学名誉教授。“チャの木”から作るお茶を50年以上にわたり研究している。
イラスト/あきばさやか
※女性セブン2018年11月22日号