優れた健康食【みそ汁】ニッチェ江上ら著名人6名「わが家」のレシピ

 大豆から作る発酵食品の代表で、腸内環境を整える作用がある“みそ”。みそ汁は好みの具を煮てみそを溶き入れるだけで簡単に作れるからこそ、家々で味が違えば、その栄養価も大きく変わる。どうせなら食の達人になって、いいとこ取りのみそ汁、作ってみませんか?

 食卓の定番であるみそ汁は、発酵食品である“みそ”の効能に、具の栄養が加わり、優れた健康食として注目を集めている。

 朝食にみそ汁は欠かせないと話す管理栄養士の岸村康代さんは、その健康パワーを次のように考えている。

「朝、空腹が長く続いた胃はデリケートな状態。加熱した野菜を汁ごと食べることで、胃腸にやさしく栄養補給ができるほか、体を温め、代謝も高まります。

 生の野菜は、細胞壁が硬いため、そのままでは栄養が吸収しにくいケースも。加熱することで細胞壁が壊れて吸収されやすくなります。加熱で汁に流れ出やすい水溶性の栄養素もありますが、みそ汁は汁ごと摂ることができるので、栄養的にも理にかなった料理なのです」

【みそ汁の健康効果】
●体温を上げて体を目覚めさせ、代謝を上げる
●大豆ペプチドがコレステロールを低下させ、血管をきれいに
●グリコシルセラミドの働きで肌が潤い、美肌効果も期待できる
●ミネラルと水分が補給できるので、熱中症予防になる
●野菜や海藻、大豆製品などの栄養を一度に摂ることができる

 材料のみそには抗酸化作用があり、美肌効果を高め、活性酸素を抑制する。

 また、みそ汁をよく飲む人は、胃がんや乳がんなどになりにくいという研究結果も発表されており、それ以外にも右表のような健康効果が期待できる。

「塩分を気にする人もいますが、みそ汁の塩分は血圧に影響せず、むしろ高血圧の抑制効果があったという調査結果もあります」(岸村さん)

 美肌自慢の芸能人や医師など、いつも元気な食の達人たちも、いいことずくめのみそ汁をほぼ毎日飲んでいることがわかった。彼らのレシピを細かく分析してみると、有効成分がいっぱいでした!

ジュディ・オングさん

●大根・油揚げ・海藻が必須薬膳効果を考えた「陽」のみそ汁

 年齢を重ねても艶やかなジュディ・オング(68才)は、煮干しでだしをとり、合わせみそを使用している。

「基本的に、具だくさんのおみそ汁が好きですね。体を温める“陽”の食材・大根と、油揚げ、わかめなどの海藻は必須。3種類以上は入れるようにしています。器に盛って食べる直前に、スプーン1杯のプレーンヨーグルトを入れると、コクが加わりおいしいですよ」(ジュディ・オング)

【栄養チェック】

「このみそ汁で海藻の食物繊維は摂れますが、ビタミンCやB群、鉄などの栄養が不足気味。鉄やビタミンCを摂るために大根は葉まで入れて、かぼすやゆずなど柑橘類を絞って入れるといいですね」(岸村さん)

●黒とろろトッピングバージョン

【栄養チェック】

 大根と油揚げのシンプルなみそ汁に、黒とろろ昆布をたっぷりのせる。「とろろ昆布は薄く削られているため、水溶性食物繊維が溶け出しやすく、血糖値や脂質の上昇を抑えるためにもおすすめです。ぬめり成分のアルギン酸には、腸内の余分な栄養や有害物質を排出する働きも」(岸村さん)

ニッチェ 江上恵子さん

●毎朝飲んでパワーをつける愛情たっぷりの夫婦みそ汁

 2015年に結婚し、夫をやせさせたノウハウを料理本として発表しているニッチェの江上敬子は、週に3~4回は朝ご飯にみそ汁を作っている。

「顆粒だしやパックのあごだしに、無添加の田舎みそを使っています。具は日によって違いますが、今の季節のおすすめは、にら玉。具なしのみそ汁を作り、溶き卵を入れてかき玉にして火を止めてから、ざく切りにしたにらを入れれば完成。パワーがつきますよ。夫のヒロさんが作ってくれるじゃがいもと玉ねぎのみそ汁も絶品です!」(江上)

 

【栄養チェック】

「にら独特の香り成分には、抗酸化作用や疲労回復効果があります。同じく抗酸化作用を持つβ-カロテンも豊富で、完全食品といわれる卵との組み合せは〇。鉄やカルシウムなどのミネラルが不足しがちなので、小松菜などの青菜を加えると◎に」(岸村さん)

●夫・ヒロさん作 ボリュームみそ汁

【栄養チェック】

 夫が作るみそ汁は、弱火で玉ねぎがトロトロになるまで煮た後、細切りじゃがいもを加えたもの。「玉ねぎのケセルチンなどの抗酸化成分やオリゴ糖などが摂れます」(岸村さん)

君島十和子さん

●みその発酵パワーと生の長いもで美肌を作る

『美食同源』を目指し、美容成分たっぷりの食事を心がけている君島さん。毎週1回は、長いものすりおろしのみそ汁を食べている。

「長いものネバネバ成分はヒアルロン酸と同じ多糖類で保湿力が高く、肌の潤いがキープでき、ハリとツヤを与える働きのある美容食材。すりおろして器に入れてから、昆布だしのみそ汁を注ぎ入れ、吸い口に練りからしを添えています」(君島さん)

 

【栄養チェック】

「長いもなどのネバネバ食材には、血糖値の上昇を抑制する働きがあります。青のりをトッピングすることで食物繊維やビタミンAがプラスできます。シンプルなため、たんぱく質やビタミンCなどが不足気味なので、他の食事で魚、肉、卵、大豆製品や、ビタミンCが摂れる果実を添えて」(岸村さん)

友利新さん

●毎朝子供がおかわりをする、野菜と豆腐入りの自然派みそ汁

 現在4才と2才の子を持つ友利さんは、だしとみそを厳選している。「伊勢の『酒徳昆布』の昆布とかつお節、みそは『アムリターラ農園 自然栽培味噌中甘口』を使用。みそ汁だけで栄養が摂れるように、野菜や豆腐など具だくさん。2才の娘も必ずおかわりするほどみそ汁好き。だしのおいしさは、子供にもわかるんですね」(友利さん)。

 

【栄養チェック】

「豆腐、しめじ、水菜、にんじんと、具が豊富で、最後にとろけるチーズを加えたみそ汁は、栄養バランスはほぼとれています。ビタミンB群と食物繊維がもっと摂れると、さらにバランスがよくなるので、他の食事で工夫するといいですね」(岸村さん)

シルクさん

●自家製ターメリックみそに粉末納豆をトッピング

「具は季節によって変えますが、旬野菜が中心。今ならおくら、なす、新玉ねぎ。認知症に効果があるターメリックを混ぜ込んだ自家製みそ(合わせみそにかつお節、オリーブオイル、ターメリックパウダー、酒を混ぜ込んだもの)を使い、夏野菜で体温を下げれば熱中症が予防できます。さらに、血液がサラサラになるように、粉末納豆をトッピングしています」(シルク)

 

【栄養チェック】

「おくらや納豆からは水溶性食物繊維が、なす、玉ねぎ、ターメリックから抗酸化成分が摂れます。熱湯でみそを溶き、別ゆでした具と合わせているそうですが、玉ねぎの抗酸化成分やオリゴ糖などはゆでると損失しやすいため、ゆで汁ごと食べて」(岸村さん)

茂出木浩司さん

●ダブル発酵&トリプル大豆の甘酒豆乳みそ汁

“日焼けしすぎるシェフ”として有名な茂出木浩司さんは、夏に負けない体作りにみそ汁を活用中。「毎晩、寝る前にみそ汁を飲んでいます。だしをとらなくても甘酒のコクがあるので充分。クレソンの代わりに水菜や小松菜を使えば和風に、コーンを入れればチャウダー風になります。豆腐、豆乳、みその大豆づくしで、アンチエイジングや美肌効果も。最近、気になる頭皮にもいいんですよ」(茂出木さん)。

 

【栄養チェック】

「発酵食品や野菜、果物、大豆製品の栄養がバランスよく摂れます。ただし、バターは動物性脂肪を多く含むため腸内環境を悪化させる要因に。代わりに、食物繊維豊富なきのこなどを入れるといいですね」(岸村さん)

 暑さ長引く今年の夏。岸村さんに、残暑を乗り切るおいしいみそ汁のレシピを教えてもらった。

●夏バテのパワー不足も解消『塩麹豚のごまトン汁』

 疲労回復に働くビタミンB群が豊富な豚肉に枝豆を加えた栄養満点のみそ汁。「豚肉に塩麹をまぶしてから加熱するとやわらかくなり、腸内環境を整える働きのある発酵食品もダブルで摂れます。枝豆はビタミンB₁や鉄分のほか、大豆にはないビタミンCも含みます。さらに、ケルセチンを含む玉ねぎや、β-カロテンが豊富なにんじん、セサミンを含むごまなど、抗酸化成分もたっぷり。これにご飯と果物をプラスすれば栄養バランスが整います」。

オリジナルレシピ(2人分)
【1】豚肉120gは一口大に切り、塩麹小さじ1強をまぶして約5分おく。
【2】玉ねぎ1個はくし形に切り、にんじん¹⁄₃本はいちょう切りにする。
【3】鍋にだし汁2と1/2カップと【2】を入れて中火にかけ、火が通ったら【1】と枝豆のむき身20粒を加えて煮て、みそ大さじ1を溶き入れる。
【4】器に盛り、ごま適量を入れる。

●紫外線ダメージから肌を守る『トマトのみそ汁』

 トマトには、紫外線を浴びる季節に増えるシミ・しわの予防に働く栄養素・リコピンが豊富。加熱したり、オリーブオイルなどと一緒に摂ると吸収率が高まるので、最初に炒めておくといい。「トマトは炒めておくと水っぽさがなくなり、コクが出ます。おくらのネバネバ成分は、水溶性食物繊維や糖たんぱく質で、胃腸を保護する役割もあり、胃腸が弱っている時にもおすすめ。甘みの強いミニトマトやフルーツトマトでアレンジしても◎」。

オリジナルレシピ(2人分)
【1】トマト中1個とおくら2~4本は一口大に切る。
【2】鍋にオリーブオイル少量とトマトを入れて火にかけて水分を飛ばし、塩を軽くふる。
【3】【2】を一旦取り出し、だし汁2と1/2を加えて火にかけ、【1】とおくらを加えて煮、みそ大さじ1を溶き入れる。※好みでみょうがの小口切りを入れても◎。

 みそ汁をおいしく作るためには、大切なポイントが2つあると岸村さん。

 1つ目は、旨みを重ねて入れること。

「だし汁としては昆布のグルタミン酸、かつお節のイノシン酸、これにきのこ類に含まれるグアニル酸が加われば、旨みの相乗効果で、よりおいしくなります。顆粒だしを使う場合も、昆布とかつお節を組み合わせると味に深みが出ます。市販のだしには、あらかじめにぼしやかつお節など複数の食材が入っているので、これを利用してもいいでしょう」

 2つ目は、みそを入れるタイミング。

「みそは、溶き入れたら煮立たせないのが鉄則、というくらい風味が第一の調味料。加熱で風味が飛んでしまうため、みそを溶いたらすぐに火を止め、すぐに食べるとおいしくいただけます」

 発酵食品は傷みやすいため、みそ汁も暑い時期は、食べ切れる分だけを作って。

ちょい足しすれば健康効果アップ

 いつものみそ汁に加えるだけで健康効果がアップする食材はたくさんある。「出来上がったみそ汁のトッピングにおすすめなのは、口の中をさっぱりさせ、疲労回復に役立つ梅干しや、レモン・すだちなどの柑橘類。みそ汁にコクを与え、腸内環境を改善する働きを期待するなら酒粕を。胃腸にやさしい成分をプラスするなら、おくらがおすすめです。味が薄いなと思ったら、トマトケチャップをちょい足しすれば、トマトの旨み成分のグルタミン酸と抗酸化成分リコピンが吸収されやすい形で加わるので、味も効能もアップします」。

 管理栄養士・岸村康代さん 野菜ソムリエ上級プロで、「大人のダイエット研究所」代表理事。忙しい大人のための食の推進を行い、目的別に効率よく栄養をとる“パワーフードスタイル”を提唱している。

管理栄養士・岸村康代さん

プロフィール:野菜ソムリエ上級プロで、「大人のダイエット研究所」代表理事。忙しい大人のために食を推進を行い、目的別に効率よく栄養をとる”パワーフードスタイル”を提唱している。

撮影/菅井淳子、矢口和也

※女性セブン2018年9月13日号

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この記事へのみんなのコメント

  • 芝やん

    味噌汁ってやっぱりホッとします。にら玉の味噌汁、今日妻にリクエストしてみよう。

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